ブタがいた教室
採点:★★★★★☆☆☆☆☆
2008年12月7日(DVD)
主演:妻夫木 聡
監督:前田 哲

1年間、小学校でブタを飼育してその後で食べましょう!というそのテーマにすごく興味をそそられた作品。

「卒業までの1年間、クラスでブタを飼育し、最後にみんなで食べたいと思います」
新任教師の星はある日、突然こんな提案を彼の持つ6年2組に投げかける。校長の許可も得て、校庭の片隅に小屋を作り、"Pちゃん"と名づけ、掃除、エサやリなどを通して、成長していくブタに次第に愛着を抱くようになる生徒たち。
名前をつけたことで、家畜ではなく、ペットとして親近感を持つにつれて、卒業の時は迫り、Pちゃんを「食べる」、「食べない」の意見で、教室は真っ二つに分かれてしまう―――。

なんかいまいちシックリこない。
見終わった直後の感想である。見終わって2日経った今現在も同じ感想である。

モンスター・ペアレンツと呼ばれるような保護者が生存する現在の学校教育の実態から考えると、あり得ないようなまとまり感あふれるクラスにやや興醒めで始まったこの作品。
いや、これが現代でなく、20年くらい前の学校でのお話というなら、妻夫木をキャスティングしてる時点であり得ない設定になってしまうし、それくらい前の話なら、星以外にも、もっと協力してくれる教師がいるだろうし、そもそも親から学校へのクレームという描写もないだろう。が、いかんせんテーマが面白いだけにそこは軽くスルー。

そして6年2組の生徒がPちゃんの飼育を、楽しいことばかりではなく、毎日、残飯を運んだり、臭い糞の始末もしなければならず、寝床の掃除も欠かせない、という小学生としては厳しい現実として受け止めた上で、つらい現実以上の喜びを得ることで、こちらも物語りに入り込んでいった。
例えば一緒に校庭でサッカーをしたり、音楽の授業の時にクラスの合唱に合わせて鳴いてみたり、夏の夜空に咲く花火を一緒に見たり・・・。
この辺りの物語の進め方は非常に上手い。

実家が肉屋で、親が肉をさばいているのをいつも見ている子供。晩ご飯に出されたトンカツを食べられない子供のシーンなど、子供の葛藤を描くシーンがいくつか挿入されていたが、その後のフォローがもっと欲しかった。同じ子供を何日間も映し、その生徒の日々の苦悩をもっと深く描いてもらえれば、より生徒側の視線になれたかもしれない。

そしていよいよ問題の卒業間近の議論。1年間一緒に過ごしたブタをどうするか?という議論のの中で、生徒たちの心は二つに分かれてしまう。
殺すべきか。生かすべきか。
おそらく世間一般的には、食べずに後学年に譲るなどの措置をするのが正しいということになるのでしょうか?実際、映画の中でも精肉センターに送るか、3年生に譲るか?という2つの意見に分かれるわけですし・・・。
個人的には、もし食べることが悪だとするのであれば、神様のことだから、食べられないような味にしていただろう、と考えると食べることは悪でも何でもないと思う。(ちなみに神様がいるとはまったく思っておりません)。

そして文部省推薦映画でよくある押し付けがましい教育映画のような感じがしないのは、この作品があくまでも子どもたちの本音を引き出しているからだろう。監督から渡された脚本はこの議論の部分に関しては、白紙だったらしい・・・。その点はこの議論の良い点。
また最後の落ちも、安易に生存の道をとらなかった点も評価したいが、ただしその理由付けが説得力に欠けるというか、なぜその結論になったのか?というのが曖昧なまま終わってしまったのは残念。あれだけ生徒の意思を尊重しておきながら、最終的には先生の意見でブタの運命が決定してしまう。しかもなぜその選択肢を選んだのか?という説明がない。我々観客に対する説明は必要ないかもしれないが、反対派だった子供たちへの説明はやはり、してしかるべき出だろう。でないと子供たちの意見を尊重すると言いながら、最終的には理由も言わずに、反対派の子供たちへ大人の考えを押し付けているだけに過ぎない。
考え方によっては、自分が提起した問題の答えを自らが回答することで、子ども達に残酷な答えを見せなかったと言えるのかもしれないが、そう考えるなら、最初からこんな授業をするな!って話である。
いずれにせよ先進国の日本だからこそ成り立つ話であり、食料不足に悩む国ではこんな議論は成り立たないだろう。

テーマ自体が非常に興味深く、それだけでひきつけられたのは事実だが、思い返せば逆にそれ以外何もなかったとも言える。
6年2組の生徒が小鳥や兎ではなく、ブタを飼育したというのが面白いのだが、それだけなのである。なんかいまいちシックリこないのである。

一口コメント:
面白い題材を扱っている割には、いまいちシックリこない作品です。

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