名探偵コナン 時計じかけの摩天楼
採点:★★★★★★★★☆☆
2010年3月27日(DVD)
原作:青山 剛昌
監督:こだま 兼嗣

10年以上映画が続いているこの作品の記念すべきシリーズ第1弾。

ある日、黒川邸で殺人事件が起こる。それをいつも通りにコナンの麻酔銃で眠らされた毛利小五郎が無事解決する。
数日後、有名建築家の森谷から、工藤新一宛にパーティーの招待状が届く。代理人として参加した小五郎、蘭と共にパーティーに行くコナン。翌日、火薬庫から爆薬が盗まれ、爆破事件が発生する。何とかラジコン飛行機とペット入れ用のケースの爆弾を発見したコナンだったが、東都環状線に5つの爆弾を仕掛けられてしまう―――!!

2010年、今年で14年目になる映画コナン。シリーズの第1弾をいまさらってわけでもないが見てみた。
さすがに映画版第一弾ってことで、力入っているなと思うシーンがいくつもあったが、爆破事件というサスペンス映画の王道のテーマのためか、正直新鮮味はない。
例えば、電車が時速60km以下に落ちると爆発するという設定も、バスが電車に変わっただけで、「スピード」とまったく同じ設定だし、クライマックスで爆弾に残された赤と青のどちらを切るか?という設定も過去に何度も見てきた設定である。

が、1つ1つの推理がとても冴え渡っている。冒頭の事件、途中の自動車事故の事件、東都線に仕掛けられた爆弾の所在。さりげなく謎を解いているが、1つ1つの謎解きが実に面白い。
特に最初の事件は、このアニメ作品の主要キャラ関係を説明しているだけでなく、本編の犯人の動機にも絡んでいて、実に上手い。
最近の映画は謎解きが大掛かりになっているが、大掛かりになるほど現実的には無理だな、という考えが浮かび、ふと現実に帰ったりするのだが、今回の事件は現実的にどれも起こりうるトリックなだけに一種の親近感を覚えることで、常に作品の世界観に没頭できる。
ここが最近の作品とは大きく異なるところである。

さらに最近の作品に多い派手な演出も高層ビルの爆破という、TVアニメではなかなか見られない映画ならではの演出も残っており、サスペンス映画としての完成度はかなり高い。

とはいえ、犯人が誰かというのが、かなり早い段階でわかってしまったのは、残念だった。また犯人の動機もいまいち納得がいかない。芸術家が自分の過去の作品に満足しないというのはわからなくはないが、30代で作ったものすべてに満足していないが、それ以降に作ったものは全てOKというのはやや理解に苦しむ。

意外だったのは、白鳥警部がこの作品が初登場だったこと。TVシリーズで既に登場していたのか?と思っていたら、実は映画第1弾が初登場だったんですね。
逆に小五郎のボケっぷりは10年以上前のこの作品から、今にいたるまで変わっておらず、今昔も変わらず笑える。

クライマックスの爆弾解体シーン。上述したように青と赤の銅線、どちらを切るか?というのはよく見るシーンではあったが、そこに蘭と新一が見る予定だった映画や二人の好きな色が見事に絡んで、良い意味で期待を裏切られた。
そして初期のコナンによく見られる「ラーーーーン!」と、コナンが叫ぶシーンもこの作品が第1弾というわけもあってか、そこまでお約束っぽく見えず、蘭の壁越しの「誕生日おめでとう」の台詞も深く心に響く。

映画版コナンは毎回実写化したら面白いと思っていたが、トリックの現実感といい、爆破のスペクタクルシーンといい、この作品はまさに実写化に持ってこいだ。
日本版の実写ドラマを見る限りでは、日本による実写化は残念な結果に終わりそうなので、ぜひともハリウッドによる実写化を期待したい。

一口コメント:
記念すべき第1弾「劇場版名探偵コナン」として、その名に恥じない作品です。

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