名探偵コナン 世紀末の魔術師
採点:★★★★★★★★☆☆
2010年5月30日(DVD)
原作:青山 剛昌
監督:こだま 兼嗣

劇場版「名探偵コナン」第3弾。

怪盗キッドから警視庁に犯行予告状が届く。キッドが狙うのは、鈴木財閥の蔵から発見されたロマノフ王朝の秘宝インペリアル・イースター・エッグ。世界に50個しかないと言われるロシアの秘宝、51番目の代物だった。
鈴木会長の依頼で警視庁に協力することになった毛利小五郎について、蘭と共に大阪をたずねるコナン。その夜、予告通りキッドがエッグを盗み出すが、途中、キッドは何者かに狙撃されてしまう。キッドを狙撃したのは何者なのか、そしてキッドは何処へ消えてしまったのか?
エッグの傷を調べる為に、急遽、鈴木財閥の豪華客船で東京に向かうことに。その途中、エッグの設計図面から、52番目のエッグの存在と51番目と52番目のエッグの製作者が"世紀末の魔術師"と言われた人物であったことが明らかになる。
翌日、東京に到着した一行は、52番目のエッグを求めて、横須賀のドイツの古城を思わせる香坂家へ向かう―――。

作品のタイトルにもなっている"世紀末の魔術師"。キッドのことかと思えば、実はからくり技師のこともかけてあり、作品の中でもあるキーワードとして非常に重要な言葉となっている。しかも公開が1999年ということもあり、タイトルとしても非常にしっくりとしている。タイトルだけで言えば、間違いなく劇場版コナンの中では最高傑作である。

内容的にもシリーズ最高傑作と言えるかもしれない。劇場版コナンは推理が中心の作品とアクション中心の作品、大きく2つに分かれる。その中でこの作品は最も2つのバランスが取れた作品と言える。
殺人鬼スコーピオンが誰か?という推理に加え、イースター・エッグの持つ謎を解明していくという2つの推理が展開されるだけでも他の推理中心シリーズ2作分の面白さがある上に、怪盗キッドが誰なのか?という観客が楽しむための推理も用意されている。
そして豪華客船、ドイツ風のお城、そして地下の洞窟という映画ならではの舞台設定もさることながら、怪盗キッドならではのアクション・シーンが映画を盛り上げる。しかもそれをオープニングに持ってくることによって、観客を物語りに入り込ませることによって、その後の展開に入り込みやすくしてくれる(逆にここで入り込めないと後が辛いかも・・・)。
謎の暗号を解く楽しみ、ハングライダーで大阪の空を滑空することで映し出される大阪の景観を見る楽しみ、そして厳重な警備をかいくぐり、華麗な手口で獲物を盗み出す痛快さ、キッドならではの楽しみを最初から与えてくれる。

そして最後の最後もキッドが作品を綺麗にしめてくれる。
おみくじを使い、コナンの正体がばれてしまうことを示唆する内容をオープニングで見せておき、最後の最後にその瞬間が訪れる・・・と思いきや、それを救うのがキッドという演出。かなりキザな演出ではあるが、鳩の看病のお礼にコナンのピンチを救い、華麗に消え去る。キッドに始まり、キッドに終わる作品である。

この作品の面白さは上述のようにキッドによるところが大きいのだが、それ以外に歴史上の出来事をもとに、独自の解釈を加えてストーリーを展開させている点も非常に面白い。ロシアのロマノフ王朝という実在の歴史、イースター・エッグという実在の秘宝をベースに51個目が日本に存在し、しかもそれが歴史的にもっとも貴重な存在になっているという架空の話を加えることで、物語に真実味を加えるだけでなく、その謎解きを、様々な仕掛けが施されたドイツ風のお城の中や地下洞窟で行うというインディ・ジョーンズ風のスパイスを加えることで、アクション映画としても作品に深みを与えている。
中でも2つのイースター・エッグの持つ秘密が明かされるシーンは結構感動したりする。
さらにそのロマノフ王朝に絡むある重要な人物の子孫が、どうして片目を狙い、殺人を行うのか?という謎を持ち込むことで物語りに深みを与えるだけでなく、それを逆手にとって、犯人の裏を書くコナンの設定も非常に上手い。

怪盗キッドに始まり、怪盗キッドに終わるという一連のストーリー展開、そこに現実世界の史実を加え、謎解きに深みを持たせるだけでなく、アクションにも深みを持たせた傑作です。

一口コメント:
推理・アクションのバランスが最も上手くとれ、かつ両方の内容が充実した劇場版コナン最高傑作と言える作品です。

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