名探偵コナン から紅の恋歌 |
5年連続となる劇場版コナン・シリーズの歴代興行収入塗り替え、更には2017年邦画興行収入ランキング第1位を獲得した作品。
毛利小五郎は百人一首の皐月会・会長である阿知波研介との対談を行うため、コナンと欄を連れて、大阪のテレビ局を訪ねていた。その皐月会が主催する高校生皐月杯に参加する高校生のクラスメイトである和葉と服部もテレビ局にいたが、そのテレビ局で爆破事件が起きる。爆破の影響で崩壊するビルに服部と和葉が取り残されるも、コナンが危機一髪で救い出す。
そして皐月会の主要メンバーに百人一首のかるた札が添付された予告状が届き、その中の1人矢島が殺害されていたことが分かる―――。
これってコナン版「ちはやふる」?あるいはちはやふる版「名探偵コナン」?というのが見ている最中に感じたこと。
2016年「ちはやふる」2作、2017年に今作、そして2018年「ちはやふる」完結編と3年連続で日テレが絡んだ、かるた映画が公開されているわけで、そこに何かしらの思惑があるように思えてならない。たまたまなのか、あるいは同じ日テレ系ということでタイミングを合わせたのか・・・?
でもって本題。今作の内容はミステリーとしては、それほどひねりはないが、コナンと服部が推理をする場面はきちんとある。また近年の劇場版お約束の派手なアクションシーンもある。そしてコナンと蘭ではなく、服部と和葉のラブコメ要素がある。
といった感じで抑えるところは全て抑え、3つの要素それぞれのバランスは非常に良いのだが、それぞれこれといった特筆すべき内容がない。アクションとラブコメ要素は安定の内容で可もなく不可もないのだが、やはりコナンがコナンであるためには推理やサスペンス要素が重要で、過去の劇場版シリーズにおいても歴代ワースト作品たちはここが圧倒的に弱い。
そういった意味で今作の推理要素は悪くはないが、真犯人が分かった後の「なるほど!」感が低い。ただし真犯人の動機とそれに対して犯した殺人の規模がかけ離れているという点は良くも悪くもいつも通りだった・・・。
それにしても今回はアニメだから許されるトンデモ設定がたくさんあった。もちろん、そこはアニメということで突っ込んではいけないのかもしれないが、少しだけ書きたいと思う。
個人的には服部の超絶バイク運転やテレビ局の巨大パラボナアンテナを使ったコナンのスケボー技術は毎度おなじみのことなので、突っ込む気はないのだが、この作品で一番唖然としたのが、和葉のかるた習得スピード。2日徹夜で特訓しただけで、クイーンであり、恋敵でもある紅葉に匹敵するレベルになってしまう。「ちはやふる」を見ていなければ、そこまでの違和感を覚えなかったのかもしれないが、広瀬すずが必死になって松岡茉優を追いかける努力をしたのを見た後で、和葉と紅葉の関係性を見てしまうと、アニメとはいえさすがに愕然としてしまった。
これは日テレ系のミスだと個人的には感じた(両作をどれだけの人が見るのか?というのはあるが・・・)。
そして今作の中心となっている服部と和葉の関係性をかき回す役として登場している紅葉。このキャラ設定が定まっていないのも気になった。
というのも、偶然の再会に感動していた紅葉は、小さい頃に服部が彼女にかけた言葉を信じ、一途に服部のことを思っていたのか?と思いきや、同じクイーンの先輩である服部の母親の存在を知らなかったり、近くに住んでいて、お互いに有名人という立場でありながら、何のアクションも起こさないで何年も過ごしてきての偶然の再会・・・という流れだと後でわかる。更にエンディングで服部の言葉が勘違いだとわかった後に悲しんで泣くでもなく、そそくさと逃げていく描写もある。
このあたりの描写が一途なのか?ただの気まぐれなのか?その辺りにキャラが定まっていない雰囲気を強く感じた。
一方コナン=新一と蘭の恋愛模様も少しだけ描かれる。かるたに書かれた百人一首に想いを乗せて欄に伝える新一。こういうロマンチックな演出は久しぶりに見た気がする。ラブコメをテーマにした作品だったことで成り立つ久々の楽しみ方だったかもしれない。
とラブコメ要素ばかりについて書いてきたが、アクション要素については上述のアンテナか服部のバイクが最大の見せ場であり、推理の要素については悪くもないが、良くもない、可もなく不可もない内容のため、特段書くこともないので、今作はこれで終わりとしたい。