世界の中心で、愛をさけぶ |
原作が250万部という日本記録を作り、現在も記録更新中の同名小説の映画化。主演に長澤まさみが名を連ねていることもあり、見に行った作品。
婚約者律子が失跡し、朔太郎は後を追い四国へ向かう。しかしそこは白血病で死んでしまった初恋の相手亜紀との思い出が眠る場所でもあり、朔太郎はしだいにその思い出に捕らわれていく。
サクと亜紀の初恋。誰もが一度は経験するであろう、淡い思い出。二人は一緒にラジオ番組に投稿したり、カセット・テープに声を吹き込んでやりとりをしたり、無人島への一泊旅行をしたり、二人の時間を謳歌していた。
ところが亜紀の病気が発覚し、二人の運命は急転する。髪が抜け落ち、ショックを受けるがサクの前では一生懸命に生きようとする亜紀。一方サクは、無人島で見つけたカメラに写っていたオーストラリアの神聖なる土地ウルル(亜紀は「ここが世界の中心だって思えるくらい」と言う)に、亜紀を連れていく計画を実行しようとする。病院を抜け出した二人は空港に向かうが、亜紀は飛行機に乗ることなくロビーで倒れてしまう・・・。
そして、現在。思い出の迷宮をさまよう朔太郎の元に、亜紀の残した最期のテープが、十数年の時間を超えて朔太郎のもとへ届くこととなる―――。
誰もが一度は経験するであろう淡い初恋。そこに物語の中でも用いられる=ロミオとジュリエット=的要素が盛り込まれ、誰もが共感できる珠玉の作品に仕上がっている。
物語の実質的な現在である亜紀と生きた時代=80年代。SONYのWalkmanや佐野元春の「SOMEDAY」という曲、二つのボタンを押して録音するラジカセ、サクの乗る原付など、時代をしのばせるアイテムがいくつも登場し、中でも写真館は時代背景を表すアイテムとして登場するだけでなく、物語の中で現在と過去の朔太郎(=サク)をつなぐ存在として登場し、重要な役割を果たしている。
勉強も運動も出来て、容姿端麗。"非の打ちどころがない"という形容詞がピタリと当てはまる存在の亜紀。そんな彼女がいて、それでも自分の前では、他人には見せない弱みを見せてくれる彼女がいる(作中では「忘れられるのが怖い」といって結婚写真を撮ってもらうシーンや「人は死んだら、愛も死んじゃうんですか?」という台詞などがこれに当たる)。おそらく、本当に心から誰かを好きになったことがあれば、こういったシーンが自分の過去の経験とダブり、作品にどんどん引き込まれていくだろう。