HINOKIO/ヒノキオ
採点:★★★★★★★☆☆☆
2006年10月21日(映画館)
主演:多部 未華子、本郷 奏多、中村 雅俊
監督:秋山 貴彦

現在LAにて開催中の日本映画の映画祭、Chanoma Film Festivalにて見た作品。上映される11作品の予告編を見た限りではなかなか面白そうだった作品でもある。

事故で母親サユリを亡くした小学生のサトル。そのショックからリハビリを拒否し、車椅子で生活をしている。そして事故から1年後、サトルが自宅から遠隔操作するロボットによる代理登校をさせるために、父親の薫が自分が開発したロボット<H-603>をサトルに与えた。
サトルは部屋でロボットを操縦し、学校に登校。材料の一部に"ヒノキ"が使われていることから、早速その場で「ヒノキオ」というあだ名をつけられる。ヒノキオに興味を持ったガキ大将のジュンら3人はヒノキオをイジメ始める・・・。

主役と言えるのは、ガキ大将、ジュンを演じた子役なのだが、途中で女であることが発覚する。自分は"ジュン"が女だったとは、まったくもって気づかなかった。子供だから声で判断するのは難しいこともあるが、それ以上に男っぽい台詞まわしや素振りが"彼女"が"彼"であると思い込ませたのだ。見た目が男っぽいんじゃないのか?と言う人がいるかもしれないが、最後のシーンで女子中学生の格好をした"彼女"を見れば、それはすぐに違うと思うはずだ。

そんな"彼"を中心に作品は2つのテーマを扱いながら進行していく。1つは心を閉ざした不登校のロボットを使う少年とその閉ざされた心を開くガキ大将の友情&愛情。そしてもう1つが母親を殺したのは父親だと思っている少年とその父。
どちらのテーマも今の日本を象徴するような設定が面白い。不登校と家庭内分離生活。それを最新鋭のロボットを中和剤にして心を開いていくという、伝統的な日本映画の得意技と最新のCGを駆使し、良い仕上がりになっている。

そして何より、そのCGがすごい。授業後にドラムを演奏するヒノキオ、そして街中を歩くヒノキオ、不良相手に格闘を演じるヒノキオ、その流麗な動きや、背景・人物に溶け込んだ質感、そして太陽光を反射したりする陰影の描写、とてもCGとは思えない。重量すら感じさせるその出来映えは、邦画史上最高と言ってもいいし、むしろ現在のハリウッド映画と比べてもまったく遜色ないと言える。

その一方で、劇中で登場するTVゲームの映像が、ちょっと幼稚に見えるのが残念だ。だからおそらく、子供心を持っていない大人が見ると、ゲーム映像の部分で興醒めしてしまうと思われる。ゲーム映像の部分をもう少しリアリティーの高い映像にしていれば、もっと評価も高くなっただけに残念だ。
逆に言えば、子供心を持った大人が見る分には、十分に楽しめる作品だと言える。

一口コメント:
子供心をなくしてない大人が見れば、泣ける映画です。

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