恋 空
採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2008年1月2日(DVD)
主演:新垣 結衣、三浦 春馬、小出 恵介
監督:今井 夏木

女子高生を中心に記録的ヒットしていて、AFMで見かけて面白そうだったこと、そして何よりミスチルの主題歌が素晴らしく作品にマッチしているという噂を聞いて、見てみたいと思っていた作品。

ミカは同じ高校に通うヒロと出会い、恋に落ちる。図書室で静かに愛を育む二人だったが、ミカがヒロの元カノから嫌がらせを受けたり、レイプをされたり、妊娠したり・・・。挙句の果てには流産してしまう。しかも、ヒロから一方的に別れを告げられたミカは心に大きな傷を負うが、大学生のユウと出会い、心癒されていく―――。

何とも言いがたい作品だ。この作品を何の前知識もなしに見たのであれば、かなりの高得点をつけていたに違いない。何が言いたいかというと、これがフィクションであれば、純粋に映画として楽しめたはずだ。
しかし、実話を元にした携帯小説の映画化という前知識があったために(いや、それを全面的に押し出す売り方をしていたな・・・)、物語に入り込むには入り込むのだが、時々興醒めしてしまうシーンがいくつかあった。

例えば、出会いのきっかけとなったミカの携帯。その中に登録していたデータをすべて無断で消されてしまう。その消した本人(この時点では相手が誰かわかっていない・・・)からの電話を何度も受け取ってしまうミカ。
これがフィクションであれば、ロマンチックで素敵な話・・・となるのだが、現実にそんなことあったら、まず着信拒否するんではないだろうか?

後は親が離婚危機に直面した時に、彼であるユウがきっかけとなり、離婚危機を回避するのだが、そんな簡単な問題だったのか!?というくらいあっけなく、問題解決してしまう。
解決することは全然良いのだが、もう少し、子供にはわからない大人の苦悩、そして親を説得できない子供の苦悩を対比させるなどして、問題を掘り下げて欲しかった。

現実的にもっともありえないと思ったのが、レイプされた直後に、彼氏と図書室でセックスしてしまうシーン。しかも避妊なし。これはちょっとひいた。ミカが清純な女子高生ではなく、ギャルという設定であれば、まだ納得がいったかもしれない。
展開としては、面白いので、例えば、レイプから少なくとも1年以上経っているとか、あるいはレイプされたショックをもっと深く描きこんだ後で、このシーンを持ってくるということをしていれば、より一層共感できたのではないだろうか?

それと1つだけ、どうしても意味不明なナレーションがある。
2回目のクリスマス・イブ。ユウと一緒に訪れた、とある場所で元彼となったヒロを追うか、今彼のユウの所に戻るかを選ぶシーンがあり、絵としては非常に面白い絵になっていて、全体の流れから見てもかなり良いシーンなのだが、そこでミカのナレーションが入る。
「あの時、別の道を選んでいたならば、運命を変えれたのだろうか・・・」
しかし、このナレーションにある"道の選択=ユウ"とはまったく関係なく、結局はヒロのところに戻ってしまうミカ。しかもこの選択がその後のミカ、あるいはヒロの人生を変えることはまったくない。
この余分なナレーションのせいで、せっかくの素晴らしいシーンがもったいないことになってしまった。ナレーションがなければ、この作品の中でもトップ3に入る名場面だっただけに非常に残念だ。

とはいえ、泣ける要素は確かにある。何度でも言うが、これがフィクションであれば、涙が止まらないかもしれない。
何はともあれ、まずは小出恵介演じるユウの存在の大きさ。これはフィクション・ノンフィクションに関わらず、良かった。このユウというキャラクターが存在するとしないでは感動の度合いが半減していたのではないだろうか?
そして流産したことを知らないヒロが、その知らせを聞いて、安産のお守りを落とすシーンは、グッときた。
あと、最後に入院中のヒロがミカと携帯電話の動画で話すシーン。こういう持って行き方があるのか?と感動しつつ、病院で携帯を使うのって・・・と冷静に見ている自分もいる。病院で携帯電話を使っては駄目です!というルールを知らない状態で見ていれば、このシーンも号泣していたかもしれない。

全体的には、1年という短期間で"出会い、レイプ、妊娠、中絶、別れ"というありとあらゆる不幸を詰め込んだ感が否めない。"家庭崩壊の危機"だけは少し期間を置いているのだが、どうせなら、それも1年の短期間に詰めて、もっとフィクションです!っていうのを強調するか、あるいは真面目に1年間という短期間ではなく、少なくとも高校3年間くらいの期間で描いて欲しかった。そうすれば、更なる高得点が期待できたはずだ。

一口コメント:
"実話を元に"というのは忘れて、フィクションとして見る分にはオススメの作品です。

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