ルパン三世 VS 名探偵コナン
THE MOVIE

採点:★★★★★★☆☆☆☆
2015年1月30日(TV)
原作:モンキー・パンチ、青山 剛昌
監督:亀 垣一

2009年に放送されたテレビスペシャルが好評だったことを受けて、ついに映画化までこぎつけた日本テレビの二大アニメ・シリーズのコラボ企画。劇場公開時に見たいと思っていたが、時間が合わず見れなかったのだが、TVで放映されていたので、ようやく見ることができた!

怪盗キッドが宝石点からある宝石を盗み出した。コナンが追跡するものの、とある人物の邪魔が入り追跡に失敗する。しかしコナンはその人物から、ルパン三世がキッドに変装していたことに気づく。
翌日、テレビを見ていたコナンはイタリアの人気歌手エミリオが来日したというニュースの中に次元の姿を見つける。そんな中、東都銀行の金庫で厳重に保管されている宝石"チェリー・サファイア"を頂くという、ルパンからの予告状が届く。
一方、園子のコネを利用してエミリオに会いに来たコナンと蘭だったが、部屋に入ると小五郎がそこにいて、エミリオに脅迫状が届いたので捜査に当たっているという―――。

前回のTV版がルパンの世界観にコナンが入り込んだのに対して、今回は米花町が舞台ということでコナンの世界観にルパンが入り込んだ形。その設定上、仕方がないのかもしれないが、何かイマイチしっくりと来ない。
劇場版コナンでは毎度おなじみの博士の駄洒落クイズもあるし、銃の射撃に関して「ハワイの射撃場でみっちり仕込まれてるよ。」と子供のコナンが言うシーンもある。またコナン・シリーズではおなじみの東都タワーで次元とコナンが組んで、伸縮サスペンダーを使って繰り出すトンでもアクションも定番。
一方のルパンにおなじみの不二子の入浴シーンもあるし、五ェ門の「つまらぬものを切ってしまった」の台詞も相変わらず・・・。それでも何か足りない・・・。
足りない要素が何なのか?を考えた結果、1つの答えにたどり着いた。コナンの世界が舞台になっているにも関わらず、謎解き要素がほぼゼロなのだ。唯一の謎解きと言えるのが、なぜルパンがいろんな手をつくして、こんなにも面倒なことを行ったのか?という最後の最後のシーンくらい。しかしその謎解きはなくても物語の進行上それほど問題はないレベルのもの。近年の劇場版コナンはその傾向が強いので、それを基準に考えれば問題ないのかもしれないが、それでも程度の差はあれど、1つの映画で複数の謎解き要素がある。それが今作は本当に謎解きが少なかった。

とはいえ、それを補うだけの魅力はたくさんある。
まずオープニングでルパンが怪盗キッドに扮して逃走する。そしてそれを追うコナンという演出、しびれる!しかもスケボーが水陸両用とレベルアップしている。そのまま引き続き、ルパンのことをコナンが、コナンのことをルパンが語るという演出もしびれた!これぞコラボならでは!の格好良いシーンだった。
コラボならでは!という意味では他にもたくさんの見せ場があった。前作のTVスペシャルからおなじみのコナン少年と次元パパの絡みも面白い。「パパー!」と甘えるコナンに対して「口癖は"トイレー!"」とメモ帳を見ながら返す次元・・・笑える。
また少年探偵団と五エ門の絡みも面白い。ルパン一味の隠れがを見つけ、世界的名泥棒に会えるということでワクワクしながら菓子折りを持ってきている子供たちに対して睡眠薬入りのお茶で対処する五エ門。そこに登場する峰不二子。
その不二子と灰原の絡みは秀逸。一緒に風呂に入りながら「女が若さにとらわれたら、終わりなんじゃない?峰不二子さん?」の捨て台詞をはく灰原とそれに素直に「はい?」とうなずく不二子。後のシーンでは大人の女らしく「裏切りは女のアクセサリーよ」と灰原を諭す不二子。しかしエンディングでその台詞を逆に灰原に使われたじろぐ不二子・・・と大人の女の冷徹な戦いを繰り広げていた。さらに不二子の愛車ともいえるハーレーに、灰原もシェリー時代に乗っていたという設定も憎い。
他にもジョディ率いるFBIも登場し、ジェイムズに至っては不二子の3サイズを知っている上に、スマホで写真も撮ってしまうほどのファンという設定になっていてこれまた笑える。しかし個人的に面白かったのは佐藤刑事の初恋の相手がルパンという設定。二人の絡みは電気ビリビリ、その後の地下鉄と非常に面白い。佐藤刑事といえば毎回登場するようなレギュラーではなく、脇役的な役割なのだが、そんな彼女が主役のルパンと張り合うシーンが用意されていることがすごい!普通に考えればルパンと絡むのはコナン、小五郎、蘭、あるいは服部平次あたりだが、そこに佐藤刑事を持ってきたのが良かった。女好きのルパンという設定がより生きる。

コナン世界が舞台ということで、良い意味でキャラが変わったのが銭形警部。ルパンの世界では唯一のお笑い担当の彼が、今回はかなり渋い。いやルパンの世界でも渋いのだが、"ルパンは人間以外にも化けられる"なんて本気ともとれる冗談で佐藤・高木コンビを失笑させたり、インターポールの車で駐禁取られたり、ルパンの世界とは違う種類の笑いを取りに来ていた"とっつぁん"。
その"とっつぁん"の影響を受けてかルパンもかなり渋い。最近のTVスペシャルではちょっとチャラさが見えるルパンが今回はかなりハードボイルド。コナン世界の絵柄が子供向けなのに対し、ルパン世界の絵柄は大人の世界観が強い。その影響もあるのかもしれないが、わざわざイタリアからやってきた殺し屋を沖野洋子の生写真と不二子の恥ずかしい写真で引き返させたり、子供のルパンが相手でも容赦なく銃を突きつける(セーフティー・ガードはしたままだが)など、格好良さがUPしていた。

日テレを代表するアニメの主人公2人のコラボ。2人以外のサブキャラにも様々な絡みが用意されていて、こうしたコラボ企画では必須の両雄を立たせた結末もあり、脚本としては見事といえば見事だし、絵柄の違う2つのアニメを違和感なく1つのアニメに登場させるという演出も見事なのだが、正直これなら前回同様TVスペシャルでよかったのでは?感が拭えない。
できることならコナンvs怪盗キッドのようにアッと驚くような仕掛けで盗みに入るルパンとそれを阻止するコナン。その一進一退の対決を見てみたかった。また同じようなコラボ作品を企画するのであれば「怪盗キッドvsルパン三世」でどちらが先に盗めるか?の対決も見てみたいものだ。

一口コメント:
サブキャラ同士の絡みが見事な脚本だが、肝心の主役の絡みの部分は物足りなさが残る作品でした。

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