ミラクルバナナ |
現在LAにて開催中の日本映画の映画祭、Chanoma Film Festivalにて見た作品。上映される11作品の予告編を見た限りでは一番面白そうだった作品でもある。
タヒチに行くつもりが、勘違いからハイチに赴任した大使館員の幸子。ハイチは西半球の最貧国であり、インフラも整わず、政治情勢は不安定でクーデターが起こるような国でもあり、学校にいけない子供も多く、ノートすら買うこともできない。日本に生まれ育った幸子にとっては、全てがカルチャーショックだった。
ある日、幸子は日本から送られてきたビデオを見て、バナナの木から紙ができることを知り、日本で紙の研究をしている大学院生の中田を呼び寄せて、バナナから紙をつくるプロジェクトを立ち上げる!!
"タヒチ"と"ハイチ"を勘違いしてしまい"ハイチ"にやってきてしまったという、良い意味で馬鹿馬鹿しい設定に魅かれ、さらに地元が"アイチ(愛知)"であるという設定も同県出身の自分には共感を覚える設定だし、実際に名古屋の町並みがスクリーンに映った際はわけもなく嬉しくなった。しかもそのスクリーンが日本ではなく、ロサンゼルスで見ているのだから・・・。
そして実際に"ハイチ"の現状を随所で見せる描写もうまい。子供が財布を盗もうとしたり(これだけはちょっとわざとらしいが・・・)、電気が通っておらず、自家発電したり、戦後の闇市のような町並み、車を転倒させて破壊する若者たち、そしてクーデター。
決して、それを大げさではなく、あくまでも日常的な軽い出来事のように描いているところにリアリティーを感じた。
そしてなにより、主役の幸子を演じた小山田サユリが良い!!飛び切りの美女というわけではないが、すごく透明感のある女優さんで、喜怒哀楽をとても上手に表情に現わすことができる女優でもある。主人公幸子の役どころの設定は"ハイチ"と"タヒチ"を間違えるようなとぼけたところもあるが、何事に対しても1人で決断し、そしてかつ行動に移せるだけの行動力も持っている。
だから、一見とぼけたキャラに見えないといけないのだが、その点においては彼女は間違いなく適役だし、そして行動力も備えているという点もこの作品を見れば、納得できるだけの演技を見せてくれている。この女優を選んだキャスティング・ディレクターに賛辞を送りたい。
大物女優になれるか?と聞かれると、この作品だけで判断するのは難しいが、おそらく一般的には大ブレイクするとは思えない。ただし、個人的には好きな女優の1人に加わったとだけ言っておきたい。
また脇役で緒方拳が出演して、渋い演技を見せているのにも驚いた。役どころは和紙作りの名人という役で、最初は地球の反対側まで行って紙を作るなんて無理だよ!とかたくなに断り続けていたのだが、最終的に承諾し、現地に赴くことになるのだ。ただし、ストーリー的にはいなくても問題ないキャラクターであったとも言える。
内容的には文部省推薦になってもおかしくないような内容だし、日本の対外政策が具体的にどんなことをしているのか?そして後進国の情勢とはどんなものなのか?を知るという意味でも、単純にちょっと一息ついて、楽しい映画を見てみたいという人にもお勧めの作品です。
日本でも現在公開中のはずなので、良ければ見てみてください。