踊る大捜査線 =THE MOVIE=
採点:★★★★★★★☆☆☆
1998年11月2日(映画館)
主演:織田 裕二、柳葉 敏郎、いかりや 長介
監督:本広 克之

邦画史上驚異の興行収入を稼ぎ出したこの作品もTVドラマとしてはそれほど高視聴率を上げたわけでもなかったが、その後のメディア・ミックス戦略により、特番3本はどれも20%を超える視聴率を記録し、満を持しての映画公開となった。

事件は会議室で起きてんじゃない!現場で起きてんだ!!」というあまりにも有名な台詞も生み出し、ドラマとしての完成度も極めて高い。脚本の力が最たるものなのだろうが、この作品に関してはなんといってもキャスティングが素晴らしい。
青島刑事役の織田裕二と捜査一課の室井役の柳葉敏郎、それに青島の先輩和久刑事役のいかりや長介。この3人は日本アカデミー賞で主演男優賞、助演男優賞にノミネートされ、見事に、いかりや長介が助演男優賞を射止めた。この3人のキャスティングを他の誰かがやっていたら・・・などとは考えられない。この3人だからこそ、ここまでうまく人物描写ができたのだろう。青島も室井もお互いに影響を与えながら、また影響を受けながら成長していく。それをそっと見守るような和久の存在。本当に素晴らしい。

今までの刑事ドラマと違い、銃を打ち合うシーンもほとんどなく(ドラマの最終回で1回あった)、カー・チェイスもほとんどない。そして刑事もサラリーマンなんだということを描いた描写シーンの数々。パトカーに乗るのに手続きが必要。張り込みするのにも手続きが必要。それにところどころに登場するアイテム達。カエル急便や、キムチラーメンなどが代表例。こういった細かい部分の描写にもこだわりが見られ、作品としての完成度をさらに高めているのではないだろうか?

ストーリーはいまさら説明する必要もないので、自分の中でこれは名台詞というのをTVドラマも含め、いくつか挙げていこう。まずは、青島と室井の約束を和久が影から見ているシーン。同じような約束を今の警視庁副総監と和久が交わしていたのを考えると、とても印象的なシーン。
次は同じように室井と青島が自販機の前で語り合っていて、青島が室井に1本おごった後で、「今度返してくださいね。」と言ったところ、室井が 「自販機ごと返してやる。」と言ったシーン。思わず格好良いと思った。
またまた室井だが、TVドラマの最終回で、犯人の来る店で客を外に出してほしいと頼んだが、断られた後で、「この店はいくらだ?」と聞き、「警視庁で買い取る。」と言ったシーン。これもただ純粋に格好良いと思えたシーン。
和久も名台詞が多いが、中でも「青島ってのはなぁ、国の決めた法律は守らねぇが、自分の中の法律は絶対に破らねぇんだ。」というのが一番心に残っている。もちろん「疲れるほど働くな。」、「好きなことしたかったら偉くなれ。」などの繰り返し使われた台詞も、もちろん印象に残っている。

そして普段は上の機嫌取りに走りまわる3人、スリー・アミーゴスも忘れられない。秋山署長が真下にパソコンの使い方を習うシーンは忘れられないシーンの1つ。ウィンドウを開いて→窓を開けて、押して→PC自体を前に押し出す・・・などのおとぼけは抜群に面白い。しかし、いざという時には部下のことを必死でかばおうとする姿には心打たれた。

それ以外にもすみれ、真下、魚住、雪乃といった脇役が固めており、これだけ多くの登場人物がいるのにもかかわらず、1人1人の個性がとてもわかりやすく、どの1人が抜けてもこの作品の完成度は落ちてしまうだろう。
脚本の良さ、キャスティングのうまさ、名台詞の多さ、脇役まで含めた人物描写のうまさ、時にシリアスに、時にコメディタッチで進む進展の仕方、どれをとっても一級品と言える。そんな一級品ばかりが集まったこの作品も当然一級品です。

一口コメント:
ドラマから映画へのつながりがスムーズで、
映画だけでも、ドラマと一緒にでも楽しめる作品。

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