スクール・ウォーズ HERO |
現在LAにて開催中の日本映画の映画祭、Chanoma Film Festivalにて見た作品。前夜祭で会話をすることができた照英主演ということ、そして何より再放送で見た名作ドラマの映画版ということもあり、見たかった作品。
1974年、京都。伏見第一工業高校に、元ラグビー全日本のスター、山上修治が体育教師としてやってくる。しかし、学校は荒れ果てており、中でもラグビー部は悪の巣窟となっていた。山上は何度もくじけながらも、ラグビー部を変えていく。時には、生徒たちに体罰すらも加えながら・・・。
久々にスポ根らしいスポ根を見た。そして昔の自分を思い出させてくれた作品だった。学生時代に部活などを通して、一度でも真剣に集団スポーツに打ち込んだことがある人なら、おそらくこの作品には容易に入り込めるはずである。しかもその部活の顧問が体罰を加えたことがあるような場合は、過去の経験とかぶるのではないだろうか?
逆に言えば、集団スポーツを真剣にしたことがない人、あるいは現代のように体罰厳禁の時代に育った子供たちからすると、おそらくすごく馬鹿げた内容の作品に見えるかもしれない。
例えば、112-0で大敗した試合の直後にグランドで生徒たちを殴るシーンは、ドラマでは1、2を争う名場面だし、映画でもそうなのだが、体罰厳禁の現代っ子にはあり得ない話だし、集団スポーツに打ち込んだり、本人あるいはチームメートがそういう場面に遭遇したことがない人にとっても、信じられない、あるいは失笑すらしてしまうシーンだろう。
しかし一度でも実際にそういうシーンに遭遇したことがある人にとっては、その当時の思い出がよみがえってくるであろう名場面なのではないだろうか?
自分の場合は、中学時代、何でこんなにサッカーが好きなんだろう?っていう位に、朝から晩までボールを蹴っていたし、体罰もまだ当たり前の時代だったから、すごく感情移入しやすかった。
時間の都合上、ドラマほどに詳細部分まで丁寧に描けているわけではないが、2時間という尺の中ではよくまとまっている。
112-0での大敗の試合、マネージャーの病死といったドラマにおける重要なシーンは網羅しているし、生徒たちの1人1人の背景もそれなりに描けている。中でも信吾の家庭環境の描写は1970年代という時代を象徴するよう出来事としてうまく描けていると感じた。
そして何より、主演の照英がはまっている。体格的には申し分ないし、ちょっとオーバーに映る演技もドラマ版を見ていた自分としてはしっくりと来るものだったし、何よりドラマ同様、泣き虫な教師であるという設定にもピタリとはまっていた。
しかし、マネージャー役のSAYAKAの演技はちょっとひどい。シリアスなシーンでの台詞の言い出しのタイミングがひどいのだ。しかも2シーン。間が悪いとでも言えばいいのだろうか?その前の人が台詞を言い終わるのを明らかに待ってましたと言わんばかりのタイミングで自分の台詞を言い出すのだ。これはSAYAKA1人が悪いというよりは、演出が悪いというべきかもしれない。
主題歌のはずの大黒摩季の「ヒーロー -Holding Out For a Hero-」は結局一度も流れず、どうやら予告編のみでしか流れないようだ。これはちょっと残念だ。作品中で主題歌が流れても良いシーンがいくつもあったのに、なぜここで使わないのだろうか?という思いが何度も頭をよぎった。これはドラマ版を見ていた影響だろうか?
全体を通した芝居を"クサイ"過剰演出と見るか、1970年代はこんなもんだったと思うかはドラマ版を見たことがあるかないか?に大きく左右されるのかもしれないが、個人的には"クサイ"ではなく、"懐かしい"スポ根として心に残った。