就職戦線異状なし
採点:★★★★★★★★☆☆
2000年5月27日(ビデオ)
主演:織田 裕二、仙道 敦子、的場 浩司、和久井 映見
監督:金子 修介

1991年公開ということで、就職事情が現代とは大きく異なる時代の就職戦線を描いた青春ドラマ。

時代は超売手市場で、内定者拘束旅行などもあり、"氷河期"と呼ばれる現在の就職状況からは考えもできない時代においても、マスコミだけは狭き門だった。その門に挑むのが早稲田大学の4人。適当にやっていれば何とかなるの大原、マスコミ一本の立川、就職は"コネ"の北町、雑誌に連載を持ち、出版業界を目指す毬子。
大原の高校野球時代からの連れである立川は本番に弱い性格のせいで、マスコミを諦め、食品会社に行くことを決意する。
早々とコネでD通に内定を決めた北町は他社の内定者拘束(内定者を囲い込むために企業側が食事に招待したり、スーツを買ったり、旅行に連れて行ったりする)を利用して遊んでいた。自分の就職活動の時にこういうのがあったらなぁと羨ましく思った。
そして毬子は大原をモデルに就職状況の本を書くために、大原に日記をつけるように依頼する。
そんな毬子はいつも大原の頼みを断ることができず、"あんたの頼み、断ったことある?"と言いながら、大原を助けていた。大原のことが好きだから・・・。
その大原は就職活動のノウハウをまったく知らずに、いくつもの企業を落ちるが、立川や毬子に教えてもらいながら、徐々にノウハウを覚えていく。イイ男の青田買いをしようとするFテレビ人事部の葉子と知り合い、大原と葉子の仲は次第に良くなっていく。それにつれてFテレビの試験や面接もどんどん突破していき、最終面接までこぎつける。しかし・・・。

この作品の中で何度も繰り返し使われるものが2つある。まずは大原がタクシーに乗ろうと手をあげてもタクシーは止まってくれないというのが1つ。もう1つが毬子の台詞で上にも書いたが"頼み断ったことある?"という台詞。この2つが繰り返し使われることで、作品に筋を一本通している。そしてこの2つは最後のシーンでも重要な役割を担うことにもなるが、それは見てのお楽しみということで・・・。

就職をテーマにした映画など、この作品以外にあっただろうか?現在の就職戦線とは大きく事情が異なるものの、面接官の質問やそれに対する学生の受け答えなど、マニュアル本に書いてあるものが使われていて、就職活動を経験したことのある人なら共感を覚えるのではないだろうか?

就職とは自分が"なりたい職業"、"なりたいもの"を探すべきものだと思う。それに関して立川の台詞で心に残った台詞があります。

"なりたいもの"じゃなくて、"なれるもの"探し始めたら、もう大人なんです。

少しさびしい響きがするけれど、確かにそうかも・・・と妙に納得させられた台詞。そうなると"なれるもの"になってしまった自分はもう大人なのか?と思いつつ、"なりたいもの"があって、それに向かって努力しているのだから、まだ子供だよな?と矛盾する2つの考えが見終わった後、心に残った。

就職を控えた学生だけでなく、仕事に疲れた社会人にも見てもらいたい。就職の意義を見つめなおすいい機会を与えてくれる作品です。

一口コメント:
学生だけでなく、仕事に疲れた社会人にも見てもらいたい作品。

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