恋人はスナイパー |
TVドラマの特番で放映された2作がとても面白く、映画館においてあるチラシを見てから非常に楽しみにしていた作品。
「日本国民1億3千万人を誘拐した。」という電話ですべては幕を開けた。日本各地で何の共通点もない人々が無差別に殺され、犯人は内閣総理大臣に5千億円の身代金を要求してくる。それに対し、要求をはねつけ、更にその情報を秘密にしようとする総理。すると犯人はTV局に次のような情報を流す。国民一人当たりの身代金は5千円。それをある銀行口座に振り込めば代わりに黄色い平和バッジが送られ来て、それを身に付けたものは殺さない、と・・・。
この事態に政府・警察はかつて世界中で恐れられたスナイパー、王凱歌を服役中の香港から呼び出し、捜査に協力させる。その捜査に以前、王と戦った円道寺きなこも加わるが、犯人は警察が犯罪者の王を招いたことや射殺現場を放映させるなど、国民の恐怖を煽り、平和バッジの売上は着実に増していく―――。
物語の前半は西村京太郎原作「華麗なる誘拐」を元にしているだけあって、非常に面白く、平和バッジそのもののデザインは"?"だが、そのアイデア自体には素直に感心させられた。政府に対する身代金5千億円を国民1人あたり5千円として、平和はお金で買うものだという認識を植付けておき、更に無差別テロを起こし、身代金を払わせるというアイデア。それに伴った映像展開も緊迫感のある映像で前半がかなりハイレベルの展開だった。さすが、劇場版!と思える内容であった。
それだけに物語後半の展開が前半との差が開きすぎて、いまいちだった。というのもTV放映された前2作ではカンフー・アクションが豊富で日本の映像でもここまでできるんだなぁ!と驚いていたが、今作劇場版ではカンフー・アクションがあるにはあるのだが、銃撃戦の方に重きを置いているように見え、カンフー・アクションを楽しみにしていた自分としてはちょっと拍子抜けしてしまった。
TVシリーズで言えば、王ときなこの対決はかなり見応えがあったが、今作のカンフー・アクションはきなこと犯人一味のうちの2人だけで、時間的にも数分の内容だったのではないか?主演の二人はアクション映画に出るのが夢で、昔から空手などの武術を習っていたらしく、TVシリーズではワイヤーの力を借りたとは言え、かなりレベルの高いアクションを演じていた。それが今作では上記のアクションのみで、内村に関して言えば、アクションシーンは"0"。個人的にはもっと見たかった。
また、銃撃戦は銃撃戦で見応えがある内容かと問われると正直首を傾げてしまう。というのも、弁護士がかつて世界一のスナイパーといわれた王を凌駕するような腕前であったり、それだけの腕前を持ちながら、王がへばっている瞬間は撃たなかったり、かなり矛盾だらけの設定で気持ちがトーンダウンしてしまった。
総合すると、TVシリーズの方が内容的には満足度が高く、このシリーズを好きな自分としてはちょっと残念な内容であった。この作品が完結編らしいのだが、できれば、カンフー・アクション中心の構成にしてほしかった。この作品はストーリー構成のうまさも魅力の一つであることは否定できないが、やはり最大の魅力は日本の映像にはなかったカンフー・アクションなのだから・・・。