Split the Difference
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2010年9月16日(映画館)
主演:Mr.Children
監督:N.K.Y.

帰国前に日本滞在中に見たかった映画の1つで最初に見た作品。

いまや名実ともに日本を代表するというか、日本一のミュージシャンと言っても過言ではないMr.Children。過去に2組しか達成していないダブルミリオンのシングルを2枚持っているバンドの1組であり、デビューから20年経った今もなお、新しいファンを開拓し続ける日本のビートルズとも言うべき彼らの新しい試みがこの作品。

他のミュージシャンの映画といえば、小田和正のようにミュージシャンが監督した作品、あるいは複数のバンドが行っているライブ映像の映画化、またはミュージシャンが俳優として出演といった形が多かったが、今回ミスチルが行ったのはドキュメンタリー。しいてあげればMJの「This is it」に似た形式の作品である。
しかしドキュメンタリーと言っても、その映像を映画にするという大前提ありきのドキュメンタリーでもあり、何か別のことを成し遂げるための途中過程を追っているわけではなく、この作品こそが最終目的の映像なので、この作品にはストーリー性というものはないし、メッセージ性もそこまで強く感じられるものが入っているわけでもない。そのため、おそらくミスチルのファン以外が見ても正直楽しめない作品だと思う。しかもシングルだけでなく、アルバム曲も知っているようなファンでないと知らない曲ばかりかもしれない。

「NOT FOUND」、「Everything (It's you)」、「終わりなき旅」、「ニシエヒガシエ」の4つのシングル曲が披露されているが、ダブルミリオンとなった「Tomorrow Never Knows」、「名もなき詩」どころか、ブレイクのきっかけとなった「Cross Road」、「Innocent World」や最近のヒット曲「HANABI」なども披露されない。
他にアルバムから披露された曲もアルバム曲の中でも決して人気曲とは呼べない曲のほうが多い。
それでも、それぞれの曲の"新しい"アレンジを聴けるという部分において、コアなファンなら楽しめるし、"新"曲「Forever」は聴き応え満点なバラードで、ミスチルの"新しい"一面を見させてくれるという意味において、この作品はありだ。

しいていうなら、肩の力を抜いた軽い感じのミスチルを感じるのがこの作品の楽しみ方だと思う。
知人・友人のみを招いた数十人のライブ、パーティー会場の披露など、まさにその典型だろう。何万人も前にして歌うことが当たり前の彼らが数十人の前でライブをするなど、その場にいる人からすれば、贅沢極まりない。しかしそれを気取らない普段着のままの状態でやるという良い意味での"軽さ=身近さ"がこの作品全体を貫く一つの流れとなっている。
例えばその会場。ライブハウスではなく、レコーディング・スタジオで普段のレコーディング感覚で楽曲を披露するのだから、より彼らの楽曲を身近に感じられる。
そしてレコーディング中のメンバー間でのやり取り。普段は決して見られない、音楽はこうやって作られていくんだという過程をより身近に感じられる構成。そして映画館ということで、高音質な環境で"音"を楽しむことができる。

ただしこれを映画として見る場合はかなり辛い。
無駄な白黒とカラー映像の使い分け、手ぶれのひどい素人撮影の映像、ピンボケだらけの映像。これはあくまもでミスチルのドキュメンタリーではあるが、ドキュメンタリー映画としては正直かなりしんどい。
例えば小林と桜井が互いに音楽観について熱く議論を交わすシーンなどがあったり、メンバーの苦悩と葛藤があったりなどすると見ている側としてもより作品に入り込めるのだろうが、基本的には小林の発言を他のメンバーが聞き入れるのみで、何の反論もない。
作品としてのレベルで言えば、NHK製作のドキュメンタリー番組の方が上だろう。

結論としては映画好きな人が見るにはかなり耐え難いものがあるし、ミスチル・ファンにとっても結構しんどいが、ある一線を超えたファンにとっては垂涎ものの作品だろう。

一口コメント:
ドキュメンタリー映画ではなく、あくまでもミスチルのドキュメンタリー映像です。

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