きょうのできごと
a day on the planet

採点:★★★★★☆☆☆☆☆
2005年1月8日(DVD)
主演:田中 麗奈、妻夫木 聡
監督:行定 勲

田中麗奈が主演ということでずっと見たかった作品だったが、一時日本に帰国していたルームメートが持ってきたDVDの中にあったので、先日に続き、田中麗奈主演作です。

大学院に進学する正道の引越し祝いに集まった仲間たち。映画監督を目指してはいるが、口だけで実行に移さない中沢と恋人の真紀、二人を結びつけた同級生のけいと、大学の友人西山と坂本、後輩かわち。
中沢と真紀の二人の熱々ぶりを羨ましがる周り。かわちに猛アタックするけいと。真紀に髪を切られて、ショックを受ける西山。大阪に残してきた彼女を思う正道。そして恋人ちよを思うかわち。みんながみんなそれぞれに思いを抱えて飲んでいる。そして夜は更けていく。
そんな酒の席で、テレビの画面にはニュースが流れている。座礁したクジラ。それを最初に発見したサーファーと女子高生。ビルとビルの間に挟まれて動けなくなってしまった男とそれをなんとか救おうとする救助隊員。
一日の間に、自分が知らない場所で、自分の知らないことが起こっている―――。

淡々とした日常の一コマを若者の視点で描いた若者の群像劇。日本映画ならではというべき、淡々飄々とした雰囲気が全編を通して漂っています。
大学生の引越し祝いの酒。大学入って、居酒屋ではなく、誰か知人の家(寮なり、アパートなり・・・)で飲み会をしたことがある人なら、誰もが経験したことのあるような普通の夜。酒を片手にたわいもない会話をして、何人かが眠りに着き始めて、起きてる連中でコンピューター・ゲームを始める。本当に何気ない普通の一夜。
そしてそんな何気ない普通の学生を演じる役者達。何気ない演技というのは簡単に見えて、なかなか難しい。普段どおりやるから、"演じなくても良い"のではなく、"見る側に何かの共感を抱かせるけど、演じているとは感じさせない"演技力が要求される。そういう意味では、みんなすごくうまい。しかも台詞が関西弁ということで、なんか親しみやすい。関西弁ってそういう感じがしませんか?(特に田中麗奈の関西弁、めちゃくちゃ可愛い!)また自分の周りにも関西出身の知人が多く、劇中の登場人物に自分の知人を重ねて見ていたりもしました。
学生といえば、酒と恋愛(もちろん、それ以外のことも考えているけど・・・)、といういつの時代も普遍的なトピックを扱っているのも、この映画に共感できる一要素だろう。

群像劇というからにはメイン以外の話も必要ということで、座礁した鯨の話とビルの壁に挟まった男の話を織り込んだのだろう。鯨の話は、若者の日常に、なんとなく神秘的というか、不思議な雰囲気を盛り込みたかった、そしてビル男の話はその逆に笑いの要素を盛り込むために入れ込まれたのかな?という感じ。
テーマ的に「自分が知らない場所で、自分の知らないことが起こっている」というのがあるので、この2つの話は対を成しているし、群像劇なのでありといえば、ありなのだが、いらないといってしまえば、いらない話でもある。この2つの話がなくても、この映画は成り立つのだ。群像劇の映画にその文句はないだろう!って批判が聞こえてきそうですが、うまい群像劇映画というのは「この人の話はいらないだろう!」なんて感じさせない。しかし、この作品はそれを感じてしまった。それだけです。

全体を通して、感じたのは日常と非日常は紙一重だということ。それは例えば、宴会をしている学生たちにとってはビルに挟まれた男なんてのはどうでもいい話なわけで、でもその男が昔の同級生だったら、それはどうでもいい話でもなくなってきたりもするかもしれない。鯨にしても同じで、テレビの向こうで鯨が打ち上げられようが、それを必死になって海に戻そうと頑張っている人がいようが、酒を飲んでいる学生達にとってはあくまでもニュースのひとつであって、日常の一部。でもそれは鯨にとってはあまりにも非日常的なことだし、それを助けようと必死になっている地元の人たちにとっても非日常なことだし、自殺をしようとしいた(っぽく見える)女子高生にとっては、ある種人生の転機になったかもしれない。
なんて、深いことを考えたりすることもできる。

てなわけで、学生役7人の演技力のうまさに驚嘆しつつ、ある種哲学的な"日常と非日常の切れ目"を考えさせられつつ、群像劇なのはいいけど、鯨と壁男は不要な話だよな?と思わされた作品です。

一口コメント:
学生達の普通の日常(酒と恋愛)を描いた作品です。

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