タ ッ チ
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2006年6月28日(映画館)
主演:斉藤 祥太、長澤 まさみ、斉藤 慶太
監督:犬童 一心
原作:あだち充

W杯の休憩期間ということで、ちょっとサッカーから離れて、昨年秋日本で公開されたこの作品を見ました。いわずと知れたあだち充の名作漫画の実写化作品です。

双子の兄弟、上杉達也と和也、そして隣にすむ幼馴染の浅倉南。3人は生まれた時からいつも一緒だった。やがて3人は同じ明青学園に進み、和也は南を甲子園に連れて行くという約束を果たすため、野球部のエースとして活躍していた。
そして甲子園出場をかけた西東京大会。明青は順調に勝ち進んでいき、待ちに待った決勝戦の朝、和也は交通事故に遭い、死んでしまう。
和也の遺志を引き継いだ達也は、ボクシング部をやめ、野球部に入部し、甲子園を目指す決心をする―――。

最初に断っておくが、自分は原作のファンである。しかし、この映画の良い評判はまったく聞いたことがなかったので、そこまで期待していなかった。いや、多分周りの評判どうこう以前に原作26巻におよぶ内容を2時間で描いているという時点で、希薄な内容の映画だろうと思っていた。
そして予想通り、内容は希薄とまではいかないが、やはり濃密ではなかった。いや、むしろ、26巻分の内容をよくうまくここまでまとめたと感心するできであったかもしれない。達也のボクシング部、和也の死、新田の登場、そして1年後の決勝戦と主だったストーリーは網羅している。(何気に大熊とかも名前だけは出てて、ファンとしては面白い!)

が、やはり2時間という枠では難しい。3時間ならあるいは、かなりのできに仕上がっていたかもしれない。上述したように主だったシーンは網羅しているのだが、1つ1つのシーンが薄いのだ。
例えば、最初の地区予選の決勝戦。原作では球場に現れない和也を皆が心配し、不安に思いながらも部員たちが必死に持ちこたえるという名場面のひとつであるが、映画はこのシーンをあまりにもサラリと流しすぎている。個人的には和也が死んだ後、近所迷惑になるくらいにボリュームを大きくして音楽を聞く達也のシーンが原作の中でも一番好きなのだが、そういった和也の死を悼むシーンが短すぎて(多少はあったが・・・)、"和也の死"が他の人に与えるインパクトが描ききれていない。
それと原作では新体操をする南が描かれているのだが、その代わりなのかどうかは知らないが、体育の授業で何かを踊っているシーンが描かれている。こんなものを描く時間があるなら、もっと1つ1つのシーンを丁寧に描いてほしかった。
例えば、試合のシーンでマウンドの達也、あるいは和也が汗ひとつかいていなかったりするし・・・。
それと最後の最後に「上杉達也は浅倉南を愛してます。世界中の誰よりも・・・」という原作の名台詞が画面いっぱいに青空だけが映っている上に声がかぶさってくるのだが、優勝した直後に、達也と南の描写もなく、いきなり台詞が入ってくるので、とってつけたような感じがぬぐえない。この台詞を使うなら、もっと丁寧に使ってほしい。こんな使い方なら、使う必要はない・・・。

ボクシング部マネージャー役の子と若槻千夏、この2人要らない。マネージャーの方は南と達也の恋を邪魔するかのような描き方が最初にされていたが、特にそんなこともなかった。そして若槻のほうはまったくもって、何の意味もないし・・・。

ただし、その他の役者はとてもよかった。南を演じた長澤まさみも、主人公の達也を演じた斉藤祥太、そしてその弟役の斉藤慶太も良かった。この双子、ドラマ「ホットマン」でも良い演技してたし、もっと売れてもいいのではないか?と思うのだが・・・。

それとアニメ版のカバー主題歌が一度だけかかるシーンは見ていて、ちょっとこみ上げるものがあった。主題歌をバックに南が球場に向かって走るシーンなのだが、家でラジオを聴いているくらいなら、なぜ最初から球場で応援しなかったのか?という疑問はさておき、このシーンだけは、というか、このシーンがこの映画の一番の見せ所ではないだろうか?それは主題歌の力かもしれないが・・・。

全体としては、全26巻をうまくまとめたといえるが、まとまりすぎて、重要なシーンすらまとまってしまい、心に残るはずのシーンが心に残らなくなってしまっているのが残念だ。

一口コメント:
原作漫画、全26巻を映像でダイジェストにしてみました!って感じの作品です。

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