電 車 男 |
自分がアメリカに行っている間に2チャンネルから話題になり、小説になり、映画になり、TVドラマになり、漫画になり・・・と日本でブームになっていた作品。
電車内で暴れる酔っ払いから女性を救った、22歳のオタク。彼はメガネにリュック、髪はボサボサでどこから見てもオタク。そんな彼のもとに電車で助けた女性から、お礼としてエルメスのティー・カップが送られてくる。どうしていいかもわからない彼は、ティー・カップのお礼に彼女をデートに誘うべく、同じような境遇の仲間が集う2チャンネルに助けを求める。
ハンドル・ネーム"電車男"の彼に対して、アドバイスを与える仲間たち。彼氏にふられた看護師が女性の立場からアドバイスしたり、サラリーマンが自分の体験を語ったり、ヒマな専業主婦が渇を入れたり、オタク3人組が自分達の夢のように熱く励ましたり、引きこもりの青年がちょっと冷めた意見を言ったり・・・。
そうした仲間達の声を後押しとして、電車男は"エルメス"と名付けられた彼女へ近づいていく―――。
正直、見る前は全く期待していなかった。というのも、噂などを聞いて、ほとんどストーリー展開が読めていたから・・・。しかしいざ見始めると面白い!!
物語、前半はオタクの習性を描き、コメディーとしての要素が見事なまでに散りばめられており、館内は笑いが耐えることがなかった。
中盤はオタクから一人の男へと変貌していく"電車男"の変身振りと内面の葛藤を描いていて、物語は終盤へ。
終盤は応援していたネット仲間たちも含めて、それぞれの登場人物にそれ相応の結果が待っており、笑いあり、涙ありの結末になっている。結論から言えば、二人は見事に結ばれるのだが、結ばれる場所がオタクの聖地とも言うべき秋葉原というのが、この映画を象徴している。
主人公を演じる山田孝之のオタクから好青年への変貌振りがすごい!オープニング・シーンで見るどこからどう見てもオタッキーな、もてない22歳から、物語中盤以降の好青年への変身。
人間て、服装や髪型だけでここまで変わるものなんだというのを感じさせられる。それは映画の世界における特殊メイクなどのおかげではなく、ただ単純な服装とヘア・メイクの組み合わせだけ。
それと山田孝之の演技力のたまものか?好青年に変身した後も、中身はオタクのままというキャラクターを見事に演じていたと思う。
オタクといえば、日本のオタク文化というのはすごい!!今日本では食玩ブームになってから久しいが、アメリカ版フィギアと比べると完成度の違いがすごい!それは日本におけるフィギア・マニアのある種のレベルの高さによって、フィギア製作者も厳しい目で見られているからこその産物だろう。
映画の中でもそうした産物をいたるところに見ることができる。例えば"電車男"の部屋には複数のフィギアが飾られているし、着ていたシャツも"百式"(アニメ「機動戦士ガンダム」のキャラクター)仕様のTシャツだった。そして何といってもPDA。エルメスとのデート中もPDAを使って、2チャンネルの仲間にアドバイスをもらう。こんなビジネス・ライクなことをビジネスマンという人種以外の人間がやっているのは世界広しといえども、日本のオタクだけではないだろうか?
話がそれてしまったが、映画の内容に話を戻すと、"ラブ・コメ"というジャンルで考えれば非常に質の高い作品だったと思うが、いくつか疑問に思うことがある。例えば、"電車男"をホームで励ます仲間達のシーン。最初の仲間数人のシーンは良しとしても、その後の百人以上の人がいそうなシーンはどうだろう?ネットで不特定多数の人が応援しているというのを表現したかったのはわかるのだが、ネット仲間=顔が見えない人間ということを考えると何か違う。別にそんなことを考えて見ているわけではないのだが、ちょっとやりすぎだなと感じたシーンでした。
そして何より、エルメス。あんな時代はずれなお嬢様がいるのか?時代錯誤といってもいいかもしれない。そこがいまいちリアリティーにかけるのだが、そんな嘘のような話が実話だということに、魅力を感じるのもわかる。しかし、それをリアルに感じることができなかったのは中谷美紀の演技力のせいだろうか?