007 スカイフォール
採点:★★★★★★★★★☆
2016年3月26日(DVD)
主演:ダニエル・クレイグ
監督:サム・メンデス

アメリカ時代の友人の多くが歴代最高傑作の007だ!と絶賛していたが、なかなか見る機会がなく、ようやく見ることができた!

MI6のエージェントのジェームズ・ボンドは、諜報員のデータが記録されているハードディスクを略奪した敵を追ってイスタンブールに降り立つ。走る列車の屋根に敵を追い詰めるが、味方の銃弾がボンドを撃ち、川に落下してしまう・・・。
MI6ではボンドが死んだことになり、さらにMI6のトップであるMが引退を勧告される事態に・・・。

確かにシリーズ史上最高傑作と呼ばれるだけの作品だ!
ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じるようになってから3作目のこの作品。監督が変わったからか、いかにしてジェームズ・ボンドが生まれたのか?という若き日のボンドを描くという設定は遥か彼方へと消え去り、いつの間にかベテラン諜報員になっている・・・など、いくつか今までの2作の設定とは矛盾する部分はあるが、そこを無視して単体の作品としてみれば、確かに傑作だ。

まずは何といってもオープニング。イスタンブールの街を舞台にした屋根伝いのバイクによるチェイス、列車の上でショベルカーを使った派手なアクション、そして素手対素手のタイマン、とアクション映画の王道とも呼ぶべき展開が繰り広げられる。その最後はまさかのジェームズ・ボンドの被弾からの落下。もちろんオープニングで主人公が死ぬわけないのだが、見事な展開だった。
それ以上に秀逸だったのが上海でのアクション・シーン。青い電飾を背後にボンドと敵が格闘するシーンはボンド・ガールと呼ぶにふさわしい女性が登場しない今作において、ある意味で最もセクシーなシーンと呼べるかもしれない。もちろんその直後にマカオでそれっぽい女性が登場し、それなりのお色気シーンもあるが、シルエットでの格闘シーンというのがダンディズムの象徴ともいうべき中年諜報員ボンドにはピッタリだ!

そして今回いわゆる"ボンド・ガール"が登場しないと思われる最大の理由がM。今作品の陰の主役と言っても過言ではないであろう彼女にフォーカスするために他の女性キャストを敢えて重きを置いて描かなかったのではないだろうか?と勘ぐってしまうほどに今作はMの存在がカギとなっている。
実際、敵役シルヴァの目的もMであり、ボンドの故郷ではM自らが銃を片手に闘うシーンもある。それ以上にボンドもシルヴァもMに対して、特別な感情・・・、同じような感情を抱いている。そのあたりの伏線の張り方も非常に上手い!シルヴァがややねちっこ過ぎるきらいがないでもないが、それがあってこその敵役としての憎さも増すのだから、それはそれでありだろう。
そしてボンドとシルヴァの対比も非常に上手い。オープニングでMの命令により、ボンドが狙撃され、落下したことも後々でシルヴァとの対比に効いてくる。一言で言えば脚本が良くできている。

脚本と言えば今作はボンドの故郷や両親など、シリーズ史上触れられることのなかった一種のタブーに切り込んだ点も評価に値するのではないだろうか?
もしかすると007シリーズの熱烈なファンからするとそこは触れて欲しくなかったという人もいるかもしれないが、ダニエル・クレイグになってからの流れを考えるとそれも時間の問題だったのではないだろうか?アクションや秘密兵器一辺倒のスパイ映画からボンドの内面を描く作風はダニエル・ボンドになってからの定番となっていて、他のスパイ映画との差別化にもつながっている。
そしてこの作品の核ともいうべき、ボンドの過去、Mの過去、シルヴァの過去が綺麗につながっていく展開は本当に素晴らしい。

また大きく変わったのが、撮影手法だ。前作までは「ボーン」シリーズの真似とも言うべき手ぶれカメラが主流だったのだが、今作ではその手ぶれがなくなった。臨場感があふれるという意味では手ぶれ撮影も良いのだが、見る側からすると何が起きているのか見えにくく、わかりにくいという欠点もある。
上述の上海でのアクション・シーンも含め、これは撮影監督が変わったことが大きい。

それらすべてをまとめ上げた監督サム・メンデスの手腕はさすが!アカデミー賞受賞監督の007ってどうなんだろう?と思っていたが、想像以上に良かった。次のシリーズも非常に楽しみだ。

一口コメント:
007シリーズ史上最高傑作の名に恥じない素晴らしい作品です!

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