ミッション:インポッシブル
ローグ・ネイション
採点:★★★★★★★★☆☆
2018年7月29日(テレビ)
主演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、レベッカ・ファーガソン、アレック・ボールドウィン、ヴィング・レイムス、サイモン・ペグ
監督:クリストファー・マッカリー

劇場で見逃していたが、何度か機内で鑑賞し、第6弾公開前にテレビで改めて鑑賞。

多国籍犯罪組織"シンジケート"を追っていたIMFエージェントのイーサン・ハントはロンドンで敵の罠にかかり、拘束されてしまう。拷問を受ける際中、イルサという女性によって救出されたイーサン。その頃、アメリカではIMFが解体され、CIAに吸収される事態が発生。その影響で、イーサンはCIAによって国際手配されてしまう!!
それでもイーサンは単独で"シンジゲート"の調査を続ける中、イルサと再会する。彼女はイギリスMI6の諜報員で、"シンジゲート"に潜入捜査をしていたのだった。彼女から、ボスであるソロモン・レーンの極秘情報が入力されたデータファイルが、モロッコの発電所の地下に眠っていることを知らされる。しかしその施設に潜り込むには何重にも仕掛けられたトラップを乗り越える必要があった!!

渋い、渋すぎる!!
予告編などで散々見た軍用機のドアにへばりついたまま離陸するシーンがオープニングで見られる。アクション的にはここが一番の見せ場だが、前作で見せたドバイの世界一高いビルの壁面にへばりつくほどのインパクトはない。その後もパリ・オペラ座での上下する板の上での空中格闘シーンやモロッコでのカーチェイスとバイクチェイスなど、いくつかアクション・シーンはあるものの、今作はアクションよりも心理的な駆け引きに重きを置いたような内容で、見せ方によっては派手に見えるアクションでさえも、心理的駆け引きを際立たせるために、敢えて抑えた演出をしているかのようにさえ、感じた。中でもオペラ座の格闘シーンはオペラ公演中ということもあり、音声も抑えた演出になっていて、格闘シーンでありながら、芸術作品のようでさえある。

そんな渋さを象徴しているのが、ラスト・シーン。いよいよソロモン・レーンを捕まえるのだが、その方法がオープニングとつながっていて、静かながらもイーサン流"目には目を、歯に歯を!"を感じるシーンとなっている。
オープニング直後、いつものミッション伝達のところからいきなり敵に乗っ取られているという設定も渋い。そしてオーストリア首相が暗殺され、イギリス首相まで拉致される―――というトンデモ設定も今までにないスケール感を醸しだすのに一役買っている。
更に「非常事態には非常手段を!」という台詞をイーサンとCIA長官が時を隔てて使うシーンも渋い。なんというか、子供にはわからない、大人ならではの渋さがそこかしこで光る作品に仕上がっているのだ。

そんな今作を象徴している存在がイルサという女性。祖国を追われた・・・というよりは祖国から裏切られた女スパイであるという心理的な不安を抱えながらも、イーサンとの騙しあいで勝ち続け、最後の最後はイーサンとがっつりと手を組んでいる。所属する国も組織も異なるが、見方によっては女性版イーサンという位置づけにも映る。そしてそのように演出されている。そんなもう1人の自分と関わることでイーサンの内面を描くような描写も見られる。
そういう意味で、このイルサという女性スパイの存在は、この作品にとって欠かせないスパイスになっている。

しかし、この作品の裏の見せ場とも言うべき、モロッコの水中金庫についてはやや興醒めしたのも事実。
難攻不落な場所から重要なものを盗み出すというのはこのシリーズのお約束なのだが、なぜモロッコなのか?という意味付けが薄い。というのは、ものすごく厳重な警備体制なのだが、なぜモロッコにそれが作られたのか?という説明がないので、わざわざこんな場所に作る必要があるのか?という疑念が湧いてしまったから。
また水中に潜るにあたり、金属探知機があるので、ボンベが使えない・・・という設定もどうだろう?金属以外の物質でボンベを作ることくらい、IMFのメンバーであれば大して難しいことのようには思えないし、何ならその直前にイルサがプールでハイテクな水着を着ているシーンまで描いていたのに・・・。
そして見た目は全く同じ二枚のカードを入れ替える必要があり、途中で落としてしまい、どっちがどっちか?がわからなくなるシーンまで描いておきながら、何も迷うことなく、正しいカードを挿入してしまう。正しく挿入するなら落とさずにそのまま入れて、落とすならそこにもう少しハラハラ感を煽る演出を入れるなど工夫が欲しかった。
IMFが自作自演をしている疑惑でCIAに吸収される形で解体される設定など、作品全体を通して見た時の脚本の上手さはあるのだが、こうした細かい部分は非常にもったいない。

またスパイ映画としては今回、新しいスパイグッズが登場しなかったのも寂しい。前作ではクレムリンに潜入した際にスクリーンに通路を投射するグッズがあったり、ドバイでの交渉時に使用された、瞬きで目で見たものを別室で印刷するグッズなど、スパイ映画ならではの新アイテムがあったが、今作は目新しいものがなかった。

とはいえ、欠点らしい欠点はこのモロッコの水中シーンとスパイグッズのみで、それ以外は今までのシリーズの中でも群を抜いて渋さを追求した作品になっており、アクション・シーンしかり、心理的駆け引きしかり、そして大人ならではの台詞しかり、最初の軍用機のドアにしがみつきながら離陸するシーンを除けば最後まで、いろんな"渋さ"を楽しめる大人な作品でした。

一口コメント:
シリーズ史上最高の"渋さ"を味わえる大人な作品です。

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