The Warrior's Way |
チャン・ドン・ゴンの本格的ハリウッド進出作品。12月のアメリカ一般公開に先立ってマーケット試写で見た作品。
世界一の剣の達人を倒すものの、その娘の赤ん坊を殺すことができずに、師匠の教えを全うできないまま、その赤ん坊を連れて海を渡り、とある西部開拓の村に辿りついた。初めは戸惑っていた村人とも次第に打ち解けていき、リンとともにクリーニング屋として平和な生活を営んでいた。しかしある日、ギャングの一味が村に押し寄せる。そのギャングは昔、リンの肉親を殺した一味だった・・・。
チャン・ドン・ゴン、格好良い!
アメリカ人も惚れる格好良さじゃないか?アジア人の俳優が主演として、白人のヒロインとのロマンチックなキス・シーンが展開される映画がハリウッドで作られるとは、韓国映画界のパワーはここまですさまじいのか?
SONYやPanasonicといった日本の家電業界を尻目に、韓国家電業界の雄・Samsungがあっという間に世界一位の座を奪取したかのごとく、映画業界においても韓国の世界進出はここ数年目覚しいものがある。
チャン・ドン・ゴン、見た目に格好良いのはもちろんだが、この映画で演じるヤンという役柄が一際その魅力を際立たせている。普段はとても寡黙でほとんどしゃべらないし、剣の達人でありながら、その腕前も極力披露しない。しかしいざという時には、仲間を守るために、その凄まじいまでの剣技を披露し、躊躇なく敵を殺していく。
その殺陣がまた格好良い。最初は違和感がなくもないが、漫画のように瞬殺で5、6人の敵をなぎ倒したり、ある時はシルエットでの殺陣を見せたり、またある時は適度なアップとスローモーションで剣の太刀筋にフォーカスして見せたり、監督のこだわりが徹底的なまでに描かれている。中でもオープニングで見せた噴霧状の血飛沫の描き方は、今までに見たこともないような芸術的な描き方で歴代の侍映画や騎士映画などと比べても一つ群を抜いている。
そして監督は今作が初の長編映画でありながら、素晴らしい演出を最初から最後まで中だるみなく貫き、独自の美学をきちんと観客に見せる(魅せる)方法を知っている。この作品の結果次第では、第2のジョン・ウーとして、ハリウッド大作を手がける日が来るかもしれない。
映画の中では西部劇の舞台に東洋の剣の達人が入り込むというやや違和感のある世界観が描かれている。その違和感を薄めるために観覧車やメリーゴーランドといった西部時代にはなかった西洋の文化も入れ込むことによって、作品を西部劇ではなく西部劇ファンタジーとして、新しいジャンルを生み出している。その脚本もイ・スンム監督自身が書いており、本当に新人監督なのか?と疑いたくなると同時に、改めてこの監督の今後を期待したくなる。
チャン・ドン・ゴンを主演に据えているため、さすがにハリウッドのトップAクラスの俳優は出ていないものの、パイレーツ・カリビアンのバルボッサ役の俳優や、スーパーマン・リターンズのヒロイン役の女優が出演していたりと、アメリカでも知名度の俳優も出ているし、製作費も4500万ドルとアジア人が主演の作品としてはジャッキー・チェンに継ぐ規模の作品である。そのためハリウッドでもそれなりのヒットを見込める作品であり、中身もそれを期待させるだけの仕上がりになっている。
映像的にはアメリカでも大ヒットしたHEROと似たような雰囲気をかもし出してもいるが、ワイヤーアクションを全面に押し出しているのではなく、それはあくまでも付け合せであり、今回の主役はチャン・ドン・ゴンであり、彼が見せる殺陣である。
この作品にまったく日本が絡んでいないのが、残念ではあるが、アジア人としてはこれがアメリカにおいてどこまで受け入れられるのか、非常に楽しみである。