H E R O
~英雄~
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2003年8月30日(映画館)
主演:ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー
監督:チャン・イーモウ

予告編やCMなどを見て、アジア映画も捨てたモンじゃないなと思いながら見に行った作品。
秦の始皇帝のもとに3人の刺客を討ち取ったという男が現れる。無名というその男は、刺客を避けるために通常100歩以内の距離には誰も近づけない始皇帝に30歩まで近づくことを許される。そして3人の刺客を討ち取った際の様子を話し始めた―――

CMでも流れている大量の矢。これでもかという位に飛来する矢をどのように交わすのかと思っていたが、曲線美を基調とした立ち回りで飛来する矢を払い落としていく。その結果、あたり一面に矢が突き刺さっているにも関わらず、当人の周りのみ払い落とされた矢が落下しているという映像が完成する。映像としては今までにない斬新な構図で非常に新鮮だった。
またワイヤー・アクションもふんだんに使用し、そこに東洋の美学を取り入れ、今までにない映像美を創り出した。

―――雨の館で琴の調べに調和するような槍と剣の戦い―――
―――黄色い銀杏の葉が舞い散る中で戦う2人の女―――
―――蒼い湖面の上で舞いを踊るようにして戦う2人の男―――


静と動を基調としたいかにも東洋的な絵がスクリーン上に展開されていく。そこに赤、青、白、緑の4つの色が入り込み、絶妙な映像美に仕上がっている。例えば、2人の女が戦うシーンでは赤い衣装を着た2人が黄色い銀杏の中で戦い、暗い宮殿の中では黄緑色の垂れ幕が垂らされている中、同じ色の衣装を着た刺客と黒い甲冑の皇帝が戦う。画面全体は1つの色で統一されている中で、動くもののみが異なる色になっており、動きがより鮮明に映る。

ワイヤー・アクションを多用して今までにない映像を創り出した一方で、ワイヤー・アクションに頼りすぎて、あまりにも現実離れした動きが多いのは気になった。そんな体勢では動けないだろうというシーンがあまりにも多く、ちょっと醒めてしまった。仮想現実の世界を舞台にした映画であればそれでもいいのだろうが、過去の歴史を舞台にした映画としてはやりすぎの感があった。
またストーリーがそこまで深いものではなく、展開が先読みできてしまい、新鮮味のないものだった。新しい展開が始まるたびにこうなるのではないかと思った読みどおりに進んでしまい、犯人のわかっている推理小説を読んでいるような感じで、すこし物足りない感が否めない。

トータルで見れば、映像の斬新さばかりが記憶に残ってしまい、やはりストーリー性は薄くなってしまう。残剣と飛雪の2人の恋愛模様は除いて、もう少し1人1人の登場人物のバックグランドを描いて、ドラマとしての要素の部分を掘り下げてくれていれば、ストーリーも心の深い部分に残ったかもしれない。長空に関しては槍の達人ということ以外、どういう人間性なのかまったく見えなかったし、主役である無名に関しては、他の刺客の話をするばかりで、無名自身についての展開がなく、最も長く映っているにも関わらず、最も印象の薄いキャラクターになってしまった。

一口コメント:
洋の東西を見事に結合した映像美は素晴らしいが、
キャラクタの設定が薄く、物足りない感が否めない。

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