シティ・オブ・ゴッド
採点:★★★★★☆☆☆☆☆
2003年8月8日(映画館)
主演:アレシャンドレ・ロドリゲス、レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ、セウ・ジョルジ
監督:フェルナンド・メイレレス

生まれて初めて見たブラジル映画です。スラム街の3人の少年が成長していく姿を描いた物語で、60年代、70年代、70年代末の3つの時代に区切って描写されている。

ブスカペはカメラマンを志し、リトル・ゼは街一番のギャングになることを夢見て、その親友であるベネもギャングを目指すが実は心優しき人間。60年代の街ではブスカペの兄を中心とした3人組が強盗を繰り返しながら、悪名をとどろかせていくが、モーテル襲撃の際にリトル・ゼをその計画に加えたことで思わず方向に事件は進展してしまう。
70年代になり、ブスカペは世界一安いカメラを手にいれ、仲間の専属カメラマンになる。そして仲間の一人であるアンジェリカに恋をしていく。しかしアンジェリカはベネと結びつき、そのベネはリトル・。ゼと共に街一番のギャングになる。しかし本来争いごとを好きでないベネは街を出ることを決意し、ベネの送別会が開かれることになる。その送別会でリトル・ゼの対抗派閥であるセヌーラの手下がベネを殺害してしまい、泥沼の抗争が始まっていく。
70年代末はこの両派閥の抗争がだんだん激しさを増していく。その中でガキ軍団と呼ばれる子供達が銃を手に入れ、シティ・オブ・ゴッドの街は名前とは裏腹に最悪の街へと変化していく・・・。

日本の映画で例えて言うなら少年版「仁義なき戦い」といった感じのストーリーだが、少年版だからといってレベルが低いというわけでは決してない。むしろ高いくらいだと思う。18歳の少年が銃を握り、コカイン取引の元締めとなっている。これを日本人が演じるとなると何だか違和感が沸くと思うのだが、ブラジルの黒人が演じていることで非常にリアリティがある。
映画の中でものすごく凄惨なシーンがあったので紹介しておきたい。ライバルの使い走りをしているガキ軍団の10歳前後と思われる少年2人を路地裏に追い詰め、「撃たれたいのは手か足か?」と問い詰める。泣きながら手を差し出す少年達の足を打ち抜いたリトル・ゼは更に自分の手下の10歳くらいの少年に2人のうちどちらかを撃ち殺して度胸を見せてみろと命令する。その命令に悩む少年と殺される恐怖におののく少年達。非常にリアリティがあって、実際にこういう状況があったことを思い知らされる。

テーマが重いので、映画自体も重い雰囲気になりそうなところだが、ところどころに散りばめられたユーモラスなシーンが重くなりがちな雰囲気を和らげてくれ、ただ単純に重いだけの映画とは異なり、映画の醍醐味とも言うべき"娯楽"作品としての一面も併せ持っている。特にリトル・ゼの写真が新聞の一面に載ってしまい、殺されるのでは?と脅えるブスカペと、新聞の写真を見て大喜びするリトル・ゼの対比シーンは館内のいたるところで笑い声が聞こえ、自分も笑わせてもらった。

ブラジルには今でもこういったスラム街があるそうで、それを知ってから見ていればより一層、映画の世界に入り込めたかもしれません。やはり映画というのはその世界観に入り込めるかどうかというのが大きなポイントですから。そういうことを久々に感じさせられた作品でした。

一口コメント:
ユーモアのセンス溢れるブラジルの少年版「仁義なき戦い」です。

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