グッド・ウィル・ハンティング |
この映画を始めて観たのは1998年、ちょうどアカデミー賞の頃だった。この年のアカデミー賞はすごかった。良作揃いだった。作品賞にノミネートされたのはこの作品と「恋愛小説家」、「フルモンティ」、「L.A.コンフィデンシャル」、そしてあの「タイタニック」。どの作品も他の年だったら、オスカー像を獲得できるものばかりだった。しかし、この年は「タイタニック」に持っていかれてしまう。しかし自分の場合、毎年アカデミー賞で最も期待しているのは作品賞ではない。期待はしているが、一番ではない。かといって主演男優賞でもない。それは脚本賞である。そしてこの秀作揃いの中で脚本賞を獲得したのが、この作品だった。
警察にお世話になる主人公ウィルがMIT(マサチューセッツ工科大学)の清掃員として働いていた。そこでウィルのある才能を大学の教授が見抜き、精神的に難しいウィルを精神分析医ショーンに紹介する。天才的な頭脳を持ったウィルと心に傷を負ったショーン、その2人を「ソウル・メイト(心の友)」というキーワードを通して物語は進んでいく。
この物語の中では、3つのソウル・メイトの関係がある。まずはウィルの才能を見抜いた教授と実は旧友だったショーン。この2人がウィルを通して仲直りしていく。2つ目はウィルとショーン。これは言うまでもないだろう。ショーンの言葉には納得させられる言葉が多い。ショーンはウィルの才能を認めた上で、「君の知識は本から得たもの」だと言う。だからいくら知識があっても説得力がないんだと。この言葉にはものすごく説得力があると思う。そんな才能をもてあましているウィルにたいして、こうも言う。「傷つくのが怖いんだ。だから自分を変えてまで先に進もうとはしない。」そしてあの名場面。「It's not your fault.(君のせいじゃない)。」と何度も言いながら、抱き合うシーン。このシーンでは号泣していた。
そして3つ目が親友チャッキー。さりげなく、かっこいい役柄。「お前は宝くじの当たりくじを持っていながら、それを尻に敷いたままか?」と言って、才能のあるウィルにゲキを飛ばしたり、毎朝車でウィルを迎えに行くことが習慣のチャッキーがある日、ウィルに言った。
「一番のスリルは車を降りてお前んちの玄関に行く10秒前。ノックしてもお前は出てこない。何の挨拶もなくお前は消えている。そうなればいい。」と。
そしてエンディングで実際にそうなった時、心の奥をつかまれた感じがした。なんてかっこいいんだ。そして男の友情っていいもんだ、と改めて認識させられた。
本当に良くできた作品だが、この脚本もともとはマット・デイモンがハーバード大学の授業で書いたものを親友であるベン・アフレックと共同で手直しを加え、映画化となった。プライベートでも親友だからこそ書けた脚本なのかもしれない。