ドーン・オブ・ザ・デッド
採点:★★★★★★★☆☆☆
2004年5月17日(映画館)
主演:サラ・ポーリー
監督:ザック・スナイダー

劇場予告の怖さと、主演のサラ・ポーリーに魅かれて見に行った作品。

看護婦のアナは仕事を終え、夫の待つ家へと帰宅した。翌朝、寝室のドアが静かに開き、そこには隣家の娘ヴィヴィアンが立っていた。夫がその異常さに気づく間もなく、ヴィヴィアンは人間離れしたスピードで彼に襲いかかる。そのまま死んだ彼だったが、次の瞬間に息を吹き返す。そして今度は夫がアナに襲い掛かる。パニックに陥りながらも屋外に逃げるアナ。そこで彼女はさらに恐ろしい光景を目にする。隣人が銃を向けあい、救急車が躊躇なく人を轢き殺して走り去り、そして町のいたるところで火の手が上がっている。
アナは町で出会った4人の生存者、警察官のケネス、アンドレと妊娠中のルダのカップル、そして販売員だったマイケルとともに、無人となったショッピングモールへ逃げ込む。
ショッピング・モールには先に3人の人間がいて、またトラックで逃げてきた複数人の人間が後からやってくる。外には無数のゾンビが集まっており、モールの向かいの銃器店のオーナーはかろうじて、ゾンビの襲撃から生き延び、アナ達と双眼鏡と白板を使って、チェスをしたり、ゾンビ狩りをしていた。
しかし、彼もアナ達も食料が尽き始め、アナ達は仲間の一人が所有する船で湖に浮かぶ島へと移動することを決意し、モールの地下にある送迎用バスを重戦車のように武装し、いよいよモール脱出の日がやってくる―――。

まずは何はともあれ、冒頭10分の映像だろう。冒頭10分であっという間にこの映画の恐怖に引きずり込まれてしまった。前日ローラーブレードで遊んでいた隣人の娘が翌朝ゾンビになって襲ってくる。その設定だけでも怖いが、顔のメイク、そして今までの遅いゾンビとは程遠い俊敏さ、全てが怖い。また人を救うべきはずの救急車が人を轢き殺したり、隣人同士が、殺しあったりという、地獄絵図的な怖さもこの冒頭10分で描かれていて、しかも違和感を感じることなく、引き込まれていく。冒頭10分だけで映画を採点しろと、言われたら史上最高の映画かもしれない(冒頭30分なら「プライベート・ライアン」だが・・・)
また噛まれただけで感染し、感染者は一度死んでから、ゾンビとして復活するという古典的な設定や往年のハリウッド・ホラー的な恐怖(後ろを振り向いて誰もいないことに安心して目を閉じて、一息ついて目を開けた瞬間、目の前に・・・的な恐怖)もいたるところに散りばめられており、今までのハリウッド・ホラーの良さも忘れてはいない。そしてその恐怖の対象がこれでもかというくらいに数が多いのもこの作品の怖さを引き立てている。
ゾンビたちを標的にモールの屋上から射撃ゲームを楽しむ人間達の残酷さや、妊娠中の妻がゾンビに噛まれてしまったことを仲間には秘密にしながら、ゾンビとなった妻を殺すか、生まれてくる子供のために殺さずにおくか?葛藤する人間の持つ本能的な愛情、自分が噛まれてしまったことを告白し、愛する女性と別れて死を選ぶという究極の愛情とも呼ぶべき人間像など、様々な人間像が描かれていて、ただのホラー映画に終わっていない点も評価できる。

しかし日本のホラー映画のような後を引く怖さをいうものはなく、劇場を出るとすぐに恐怖感は消えてしまった。これはハリウッド作品どうこうというのではなく、その国の歴史なども影響する話で、日本には昔から怪談などでそういった後を引く怖さが積み重ねられていて、アメリカでは瞬間、瞬間の怖さが積み重ねられてきたという文化の違いが背景にあるのだろう。そういった意味で日本の恐怖映画というのはアニメと並んで世界に誇れるものだと思う。

そして最後に主演のサラ・ポーリー。「死ぬまでにしたい10のこと」で彼女のことを知ったのだが、顔的にはユマ・サーマンに丸みを与えた感じだが、個人的にはかなり好み(ユマはあまり好みではないが・・・)で、今までの出演作品を調べてみるとメジャー作品は今作が初ということで、着実にキャリアを積み重ねてきてのメジャー初主演ということで、演技力にも問題はなさそう。
初出演作がいきなりメジャー作品という俳優で二作目以降は消えていった俳優がたくさんいるが、この点においては大丈夫そう。
というわけで、今後彼女の出演作は期待していきたいと思います。

一口コメント:
ハリウッドのホラー映画としては史上最高の作品です。

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