アミスタッド
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2006年1月28日(DVD)
主演:ジャイモン・フンスー、マシュー・マコノヒー、アンソニー・ホプキンス
監督:スティーブン・スピルバーグ

学校の授業の宿題でアメリカの歴史に関する映画の感想文を書けということで、久々に見直した作品。

1839年、コネチカット州で、メンデ族のシンケと仲間の黒人たちを被告とし、奴隷船アミスタッド号の事件に対する裁判が開かれた。州裁判所でシンケたちの無罪判決が出たものの、大統領の判断により、裁判は最高裁に持ち込まれることになる。シンケたちの弁護士であるボールドウィンは、元大統領ジョン・クインシー・アダムズに応援を依頼する。クインシーが最高裁判所の父親ジョン・アダムスの胸像の前で「シンケたちに習って我々も合衆国建国の父たちの知恵を借りよう。アメリカ合衆国の建国宣言にすべての人間は平等に造られているとあるではないか。」と演説を行なう。

監督スティーブン・スピルバーグの才能は、その映画がどんなジャンルであれ、遺憾なく発揮されると思う。そして今回の作品に関しては、眼を背けたくなるほどの残酷描写がそれである。
シンドラーのリスト」では、ホロコーストでの大量虐殺を、「プライベート・ライアン」では、ノルマンディー上陸作戦を通して戦争の本当の怖さ、リアリティーを描写してきた彼は、今作においては、奴隷として拉致された黒人たちが白人に徹底的な迫害を受けているシーンを、細部まで鮮明に描いている。
例えば、鎖につながれた奴隷を超過密状態で船倉に閉じ込めるシーン、閉じ込められた奴隷たちがもがき苦しむ姿。食器もなしに直接手に配給される食事をむさぼるように食べる奴隷たち。そして錘をつけられた奴隷を鎖でつなぎ、海中へ投棄するシーン。
どの描写も鬼のような鮮明な描写で、自分が知らないはずの歴史の一部を目の前で再現して、まるで自分が歴史の証人になったかのような錯覚すら覚えてしまう。

この物語の時代、アメリカには奴隷制度が歴然と残っていた。そこに発生したアミスタッド号の事件は、アメリカの社会に大きな影響を与え、裁判は政治色を帯び始めるのだが、この映画は、そんな政治的圧力に屈することなく、法の正義を貫きとおした人たちの誠意と勇気を描いている。
その中でも主役とも呼ぶべき奴隷シンケ、弁護士ボールドウィン、そしてジョン ・クインシー・アダムズの交流には胸を打たれる。そしてもう一人忘れてはならないのが、州裁判所判事。プロテスタントの力の強いアメリカで祖父がカソリックであったことを負い目に思いながら、苦労してようやく裁判官として歩み始めたばかりであったにも関わらず、大統領など周りからの要求に屈することなく、無罪判決を言い渡す。こういった人間が歴史を作ってきたんだなぁと実感するキャラクターです。

歴史の授業で習った名前のキャラクターが登場し、前回(何年も前)とはまた違った見方ができたのと、より深い背景を知った上で見たことで、割と奥深い部分まで見れたのではないかと思う。

一口コメント:
残酷な描写をさせたら、この人"スピルバーグ"の上に出る人はいません。

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