ビューティフル・マインド |
第74回アカデミー賞作品賞受賞作品、主演は73回アカデミー賞主演男優賞のラッセル・クロウというそれでだけでも宣伝効果十分なこの作品。その宣伝内容に負けることのない素晴らしい内容でした。
数学者ジョン・ナッシュはプリンストン大学に奨学生として入学する。ナッシュはMITのウィラー研究所を目指しているのだが、行けるのは1人だけ。ライバル、ハンセンは次々と論文を書き上げているのに、「すべてを支配する真理、真に独創的なアイデアを見つけたい」というナッシュは授業に出ることもせず、自分の研究に没頭していたが、テーマすら見つけることができずにいた。彼は人付き合いが下手で、女も口説けずに、周りからは変人扱いされていく。しかしルームメイトのチャールズだけは彼にとって親友と呼べる存在であった。ここまでが前半戦といった感じで描かれる。
ある日、クラスメートと一緒にプール・バーに行き、3人組の女性たちに出会い、それがきっかけで新しい理論を発見する。そしてナッシュはウィラー研究所に行くことになった。
ナッシュはそこでパーチャーという諜報員に出会い、冷戦時代のソ連軍の暗号解読の仕事を引き受け、スパイとなる。その傍らで大学教授としても教鞭を振るっていた中でアリシアに出会う。今まで人付き合いがうまいとは言えなかったナッシュだが、やがて彼女と結婚することになる。結婚後も妻には秘密でスパイとしての活動を続けるが、アリシアが妊娠したころからナッシュは周囲のプレッシャーに身の危険を感じるようになり、ある時パーチャーの車でソ連のスパイに追われることになり、それがきっかけでナッシュは自分を見失ってしまう・・・。ここまでが中盤戦といったところだが、この後「シックス・センス」のラストのような衝撃を受けることになったが、それは秘密にしておいたほうが、この映画がより一層楽しめると思うので、伏せておく。
そして後半戦はナッシュの苦悩とそれを支える妻の苦悩を繊細なタッチで描いていき、最後はハッピー・エンドが待っている、とだけ書きたいと思う。
サスペンス的な要素もあり、大学時代のクラスメートとの友情もあり、夫を思う妻の苦しみもあり、いろいろな要素がわかりやすく簡潔に、しかし一場面一場面が重みを持つように描かれており、今年のアカデミー賞を獲得したのも納得の作品です。
長い間、自分の心に残る映画の条件として、印象的なシーンが含まれているか?というのがある。例えば「タイタニック」の船尾でローズが「I'm flying」というシーン。この作品にもいくつか印象的なシーンがあった。学者に対して敬意を示し、自分のペンをテーブルの上に置いていくシーン。アリシアがナッシュの婚約申し込みを受け入れるシーン。(宇宙の大きさは?・・・愛もそれと同じよ)そしてラストのノーベル賞受賞スピーチ。「愛の中にこそ真理はあった」という言葉をアリシアだけに向けていうシーン。大抵のアメリカ映画ならこのシーンをもっと際立たせるような演出にしたのだろうが、この作品は静かな雰囲気のまま、二人の苦悩の日々を知っている人にしかわからないような描き方がされており、心を打たれた。
さらにこの映画は現存する人物の物語、つまり実話であるということに新たな感動を覚えた。