BLACK SWAN
ブラック・スワン
採点:★★★★★★★☆☆☆
2011年1月9日(映画館)
主演:ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス
監督:ダーレン・アロノフスキー

本年度のアカデミー賞前哨戦において、先日見た「ソーシャル・ネットワーク」と激しい勝負を繰り広げている本作。主演のナタリー・ポートマンが各賞総なめということもあり、見た作品。

やがてニナは自らの心の闇にのみ込まれていく。 オディール役の表現に悩み、トップの重圧を感じるニナに変調が生じはじめる。 ニナはニューヨーク・シティ・バレエ団のバレリーナで、生活の全てを踊ることに捧げていた。元バレリーナである母親エリカはニナを過保護とも言える環境で育ててきた。
芸術監督のトーマスが、プリマのベスを新シーズンのオープニング作品"白鳥の湖"から降板させることを決め、ニナはプリマの第一候補となった。しかしそこにライバルが現れる。同じくリーロイを惹き付けた、新人ダンサーのリリーだ。
"白鳥の湖"は、純粋で気品のある白鳥と、狡猾さと官能性を併せ持つ黒鳥の両方を演じられなければならない。ニナは白鳥役にぴったりだが、リリーは黒鳥の化身のようだった。ニナはリリーの存在を脅威に感じ、やがてトップの重圧から幻覚を見るようになってしまう―――。

重い・・・。
バレリーナとしてのサクセス・ストーリーのようなものを想像していたのが、どちらかというとダーク・ストーリーである。成功の裏にある成功者にしかわからない重圧を心理的に描いた作品であり、その苦悩は幻覚から自分をいたぶるにまで至るのだから、かなり重い。

この作品を語るに当たっては、何はともあれまずナタリーの役作りである。
ただひたすらバレリーナとして成功するために生活してきた彼女。何よりもバレエを優先し、恋愛の経験も少ない。部屋は白とピンクの装飾に彩られ、ぬいぐるみがたくさん並べられている。そんな彼女が目指すのは"パーフェクト"。自分で自分の感情を完璧にコントロールするのだ。しかしトーマスから自分をコントロールするのは止めろ、自分を解放しろと言われたことがきっかけで、どんどん自分のコントロールをなくしていく。
過保護な母親に徐々に反抗的態度を取るようになり、ついには"少女の象徴"とも言うべき、ぬいぐるみを捨てるシーンがその最たるシーンだろうか?
そして最終的には公演初日の前夜、自宅に尋ねてきたライバルのリリーとともにクラブへ行き、泥酔した状態で帰宅し、母親と口論になる。このシーンを経た後のブラック・スワンを演じるナタリーの演技は"鬼気迫る"とはこのことだ!というすさまじいまでの演技を見せてくれる。彼女は1年前からバレリーナとしての練習をし、撮影中も1日何時間もの練習をこなしていたらしい。

上述のぬいぐるみもそうだが、この作品は小道具の使い方が非常に上手い。
例えば鏡。鏡とは本来自分を写すものだが、この作品では自分の中に潜むもう1人の自分を写すものとして使われている。それこそ作品の主題ともなっている白鳥と黒鳥を映し出しているのだ。
またVFXの使い方も上手い。鏡の中に映るもう1人のニナもそうだし、目の色が変わるのもそうだし、クライマックスでブラック・スワンに羽が生えていくのもそう。VFXを全面に押し出すのではなく、あくまでもストーリーの進行を助けるために効果的に使用するのみ。

そしてキャスティングも良い。
ニナの母親役がよくぞここまで!というくらいナタリーに似ているだけでなく、ミス過保護を上手く演じているし、またカッセルをバレエ団の監督役に持ってきたセンスも素晴らしい。そしてライバル役を演じたミラも幻想の中とはいえ、酒場に連れ出し、その後のベッド・シーン、それを何もなかった(幻想か現実か不明だが・・・)のように演じる彼女の憎らしさときたら、作品を盛り上げる上で欠かせない。
そしてナタリーの前任のプリマのウィノナ・ライダーの転落の仕方が、彼女本人のハリウッドでの転落とかぶっていて(一時はトップ女優になったが、窃盗でつかまるなどした・・・)、彼女自身の出演がブラック・ユーモアとなっている点も面白い。

アカデミー賞主演女優賞はかなりの高確率で行けると思うが、作品賞としてはそこまでの確率はないがノミネートはかたいと言える作品です。

一口コメント:
ナタリーの鬼気迫る演技ありきの作品です。

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