J.エドガー/J. Edgar
採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2011年12月18日(映画館)
主演:レオナルド・ディカプリオ、アーミー・ハマー、ナオミ・ワッツ
監督:クリント・イーストウッド

イーストウッドXディカプリオ=50年近くFBI長官を務め、影の大統領とも言われた男、ってことで製作が決まった時から非常に楽しみにしていた作品。

1924年、ジョン・エドガー・フーバーは29歳にして、FBIを組織し、その長官になる。その後、彼が死ぬまでの50年近くをFBI長官として、アメリカという国を時に法を犯してまでも守り続けた。
フーヴァーは8人の大統領交代劇、3つの戦争、共産主義、黒人公民権運動といった時代の流れの中で、様々な脅威に直面しながら、情報は武器になる!を信念にFBIを指揮し続けた。相手が誰であろうとFBIを通じて得た秘密を巧みに使いこなし、大統領からマフィアまで脅しをかけ、多くの難事件を解決し、影の大統領と呼ばれるまでの地位に上り詰めた。
多くの情報を操作する一方で、エドガーの私生活はほとんど知られていなかった。親しい関係にあったのは母親と秘書、そしてアシスタントの3人のみ。そしてエドガーとアシスタントの間には誰にも言えない秘密があった・・・。

どうしたんだ、イーストウッド?
なんというか、今までの彼の作品は静かなトーンの中にも大きなテーマがあった。それが今回の作品には感じられない。"小さな"テーマみたいなものはいくつか見受けられたが、"大きな"ものはなかった。

主人公であるエドガー自身は、世界に名だたるFBIを創設し、その後50年近くもその頂点を極め続け、時にはアメリカ大統領でさえも、その権謀術数をもって操り続けた男。これだけでも映画のネタとしては十分すぎるほどだが、さらにこの作品の"小さな"テーマの1つでもある秘密を抱えており、近代において彼以上に映画の主題に添えるに相応しい人物はいないのだろうか?
そんな人物を主題にしているにも関わらず、作品に引き込む力が弱い。エドガーを演じたディカプリオの演技力は申し分ないし、1900年代前半~中盤にかけての衣装や街並みなどの時代考証もしっかりしている。が、あまりにも陰影が付きすぎた照明や"?"が頭に浮かぶメイクアップ、そして何より起伏のない物語の進行。主人公へ感情移入することができないまま淡々と進み、最後まで盛り上がりのないまま終わってしまった。
イーストウッドの監督作品とは思えない仕上がりである。

自分の知識の中ではエドガー・フーバーと言えば、情報化時代が到来する以前から、情報の使い方を熟知して、情報を武器に時に違法行為ですら行ってきた"悪賢い"というイメージである(そんな言葉はないが・・・)。
わかりやすく言えば、「Death Note」の夜月ライトと言えば、わかってもらえるだろうか?
なので、彼がいかにして情報を駆使してきたのか?という部分がどう描かれるのか?を期待していた。実際に違法行為をする場面は描かれているのだが、頭脳を駆使して悪いことしている感じがないため、盛り上がらない。
また彼が持っていたと言われるトップ・シークレット以上のシークレット・ファイルについてもそんなに高尚な秘密でもなかったりして、やや拍子抜け。

おそらく一番の問題は脚本だが、監督・イーストウッド、主演・ディカプリオ、そして影の大統領・エドガーと、これ以上ないくらいの高級食材がそろっているのに、それらを半焼けの状態で提供された感、そして喉の奥に小骨が刺さった感、といったら残念で仕方がない。

一口コメント:
高級レストランで、高級食材をふんだんに使った中途半端な料理を出された感じの作品です。

戻る