サイドウェイズ
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2004年12月16日(映画館)
主演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ
監督:アレクサンダー・ペイン

先日発表されたゴールデン・グローブのミュージカル・コメディ部門の作品賞、主演男優賞、助演男優賞など7部門においてノミネートされ、脚本が非常に良いと聞き、周りの評価も上々だったので、見に行った作品。

離婚を引きずりながらも小説家を目指す教師マイルズと、結婚を一週間後に控えた俳優ジャックはワイン・テイストの旅に出かける。まず、マイルズの母親を訪ね、彼女の誕生日を祝うと同時にマイルズはお金をくすねる。そしてたどり着いたワイナリーの地でジャックはワイナリーのウェイトレスを口説き、結婚直前最後の「自由」を謳歌する。一方のマイルズはレストランのウェイトレスに恋心に似た感情を抱きながらも、その感情に素直になれないまま、4人は限られた時間を共有していく。
物語後半は結婚が目前に迫りながらも女に遊びほうけるジャック、小説の裁定結果を待つマイルズ、そしてそんな二人に恋する女性二人の心情が絡み合いながら、物語は展開されていく―――。

全体を通して、軽い感じが漂い、まさにコメディと呼ぶにふさわしい作品でありながら、引っ込み思案なマイルズ、プレイボーイのジャックの心情をところどころに折り込みながら、ストーリーが展開されていくため、軽いながらも物語りに引き込む要素というのはいたるところに散りばめられている。さらにワイナリー・テイスト・ツアーという名目の旅であるため、ワインのことを少しでもかじったことのある人なら更に楽しめるはず。(ちなみにマイルズはカリフォルニアワインの代表格ともいえるピノの最上級ピノを捜し求めている・・・)

また性格的には正反対ともいえる男二人(しかも中年・・・)が旅に出るという設定が面白いし、二人のキャラクター設定も非常にうまくできていると思う。まずはマイルズだが、親友のために結婚前最後の週に旅に連れ出すというとてもいい奴だが、離婚した妻のことを引きずりまくっていたり、少しは自信のあった小説が却下され、酒におぼれたり、非常に人間味あふれるキャラクターになっている。
一方のジャックは結婚直前であるにも関わらず、旅先で女を口説き、親友が止めるのを振り切ってまで、その女と遊び続ける。そしてその女に結婚が間近に迫っていることがばれ、病院に行くほどの怪我を負わされたにも関わらず、すぐに他の女に手を出し、また失敗してしまうというあきれるほどのプレイ・ボーイっぷりを見せてくれる(失敗しているので、プレイ・ボーイとは呼べないかもしれないが・・・)。
そんな二人を映像として見せる手法も面白い。普通ならありえないけど、あっても可笑しくないという描き方をしているのだ。例えば、マイルズがワイナリーで酒におぼれるシーンだが、ソムリエに「ボトルごとくれ!」と言い、「ここはバーじゃないですよ」と言われているにも関わらず、「お金は払うから・・・」と言い、それも否定されるとテーブルにおいてあった樽に入ったワインを浴びるように飲んでしまう・・・といった感じだ。

この作品を見て、ゴールデン・グローブで脚本賞にノミネートされたり、脚本が非常に素晴らしいという評価を受けたりしていた理由は、上述した二人のキャラクター設定が非常にうまくできているという点に尽きると思う。
ストーリー的には正直そこまでの面白み、あるいは起伏の激しさはなく、全体を通して一定のペースで進んでいくため、主役二人のキャラクター設定に共感できない人には退屈な作品かもしれない。

一口コメント:
キャラクター設定の上手さが際立った作品です。

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