The Yellow Handkerchief |
日本アカデミー賞第1回の最優秀作品賞を含む、主要8部門を制覇した作品のハリウッド版リメイク作品のLAプレミアに招待されて見てきました。
ルイジアナのとある刑務所から6年の刑期を終えて出所したばかりのブレットはひょんなことから若い二人の男女、ゴーディとマーティンと旅をすることになる。最初は自分が刑務所にいたことを隠していたブレットだったが、無免許運転で捕まってしまい、自分が刑務所にいたことがばれてしまう。しかし旅の過程でブレットに好意を抱いていた2人はブレットを見捨てることなく、ブレットが隠していたもう1つの秘密、愛する人との約束を果たすため、最後までブレットと共に行動することになる。
日本版は一度見たことがあるけど、最後のシーン以外ほとんど覚えていないため、今回がほとんど初見の状態だったが、思った以上に素敵な作品だった。
前半ややスローではあったが、後半は物語にのめりこんでしまっていた。何というか、後半の物語への入り込み方は尋常じゃない。これはもうキャスティングの功と言って良いだろう。
ストーリー的にはブレットが愛しの女性に会いに行くというのが一番の核となっている話なのだが、実はそれ以上に若い二人とブレットとの心の通い合い、そして若い二人、特にゴーディの成長物語となっており、この3人のキャスティングが非常に素晴らしいのだ。
まずはオスカー俳優、ウィリアム・ハート。人に語ることのできない過去を持った男でありながら、若い2人から慕われるような、どこか包容力のある優しさも兼ね備えた男をうまく演じきっていた。
そして先週末記録的な数字で全米1位となった「Twilight」の主演女優として一躍脚光を浴びることになったクリスティン・スチュワート。おそらく「Twilight」より先にこの作品の撮影をしたと思われるが、とびきりの美人ではないのに、どこか引き込まれる魅力を持っている。ルイジアナという田舎の町に居そうな美人であり、かつ、冴えない男に好かれる女性という容姿もぴったりで、しかも最後の方でゴーディと結ばれた後の表情はそれまでのクールな"女性"から、恋する"女の子"のそれに変わっていて、今後がすごく楽しみな女優である。
そして自分が一番気に入ったのが、ゴーディを演じたエディ・レッドメイン。パッと見は情けなさ満点で、話す内容もどこかずれている。日本的に言えば、クラスに一人はいる"浮いてる"男なのだが、よく見るとすごく格好良い。上映中に一番成長したのは彼で、オープニング直後の彼とエンディング直前の彼は、良い意味ですごく違って見える。冴えない男がマドンナ的な女の子を射止めるという意味で、もっとも感情移入しやすいキャラクターかもしれない。
そして忘れてはならないキャスティングがルイジアナ。正確にはキャスティングではなく、ロケーションなのだが、全篇ルイジアナで撮影したというその風景が、まさに"古き良きアメリカ"そのもので、スクリーンに映し出される1つ1つの"古き良きアメリカ"によって、また物語へと引き込まれていった。
湿林をボートで漕ぎ進む描写も、雨で冠水してしまった道路を進む車、どこか昔を思い出させる鋼鉄の橋など、本当に1つ1つの風景に心奪われてしまった。
1つだけ気になったのが、途中である女性が彼女の方からキスをしておいて、突然狂ったように拒絶をし、その後もしばらくの間、すさまじい勢いで彼を拒否する描写があるのだが、このシーンだけはなぜここまで彼を突然嫌ったのか?という理由付けがいまいち伝わらない。しかも最後までその理由がわからなかったのは自分の英語の聞き取り能力のせいだろうか?
それと最初に、前半ややスローだったと書いたが、最初の刑務所からの出所シーンはない方が、良かった。というのも物語が進むに連れて、若い二人に話す形で彼の過去が明らかになっていく形式になっているので、刑務所に服役していたという過去を観客に対しても伏せておき、なぜこの3人組みなのか?という疑問を抱かせておくほうが、最初から物語りに入り込めるし、間延びした感のある冒頭を短くできるという一石二鳥になるからだ。それができていれば、9点をつけていただけにもったいない。
しかし、この作品、2007年に完成しているが、1年経った2008年末の段階でもまだ配給会社が見つからず、昨今の世界恐慌の波がこんなところまで押し寄せているのか?と感じてしまう。
オスカーをも狙えるほど内容は良いだけに早く配給会社を決定して、一般公開されて欲しいものだ。しかし「Twilight」が爆発的に売れたこともあり、すぐにでも配給会社が付くのではないだろうか?と希望的観測を持ってしまいます。