ブラックホーク・ダウン |
最近戦争映画が多い気がするのは気のせいだろうか?「プライベート・ライアン」以降、「シン・レッド・ライン」、「スターリングラード」、「エネミー・ライン」、「地獄の黙示録特別完全版」などがその例であり、今後も有名俳優が出演、もしくは有名監督が撮影した戦争映画がいくつも控えている。そういう状況の中でこの作品は公開され、全米では「ロード・オブ・ザ・リング」の5週連続1位を阻止して、3週連続1位を獲得した作品です。
舞台は南アフリカのソマリアのある街。特殊部隊が市街地に乗り込み、現地の独裁者である将軍の側近を捕らえるという1時間で終わる作戦のはずだった。しかし予想以上に民兵が強かったことから、負傷者はどんどんと増えていく。さらに2機のヘリが撃墜され、基地に帰還することさえも困難な状況に陥ってしまう。そんな中死人も出はじめ、墜落したヘリの乗員を助けようとした兵士も殺される。夜になり、味方の援軍が到着し彼らを救出し終わったのは作戦開始から15時間後だった。
戦争映画といえば、男の友情だとか、愛国心だとか、何かしら深いテーマを持っているものだが、この映画には特にこれといったテーマは見当たらないかった。しいてあげるとすれば、リアリティということになるだろうか。監督のリドリー・スコットも「この映画は観客に問い掛ける作品であって、答えを提供する作品ではない」と言っている。今までの戦争映画で市街地戦をここまで細かく描いた映画はなかったと思う。それはこの作品が最初の15分くらいを除いて、残り2時間15分はずっと戦闘シーンであることからもわかる。最初から最後までずっと戦闘シーンという映画が今までにあっただろうか?
また戦場も市街地の真ん中であり、戦勝国アメリカにしては珍しく、実質負けた戦争を描いている点も興味深くはあるが、リアリティということに関していえば、「プライベート・ライアン」の冒頭30分には及ばない。とはいえ、下半身が吹き飛んだり弾丸の薬莢の落下シーンを妙に丁寧に描いているあたりはリアリティの追求が表現されていると思った。
しかし登場人物が多すぎて、一人一人にスポットがあたる時間が短く、正直誰が誰だかわからないまま終わってしまった感も強く、戦争の悲惨さ以外共感できる部分はないままに終わってしまった。まぁ「この映画は観客に問い掛ける作品であって、答えを提供する作品ではない」と監督が言っているのだから仕方がないのかもしれないが・・・。
戦争映画を見るたびに思うことではあるが、「プライベート・ライアン」を見て以来、戦争映画に関してはリアリティの追求だけでは物足りないので、そこに何らかのテーマ性を持たせてほしいと再び思ってしまった作品でした。