アイ・アム・レジェンド
I AM LEGEND
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2007年12月30日(映画館)
主演:ウィル・スミス
監督:フランシス・ローレンス

"地球最後の男"というコピーだけで十分に魅力的な作品だったこともあり、見に行った作品。

人類の科学技術が進歩し、ついに癌を完治する薬が開発された。しかしその数年後、人類はごく一部の人間を残し、全滅してしまう!
2012年、ロバート・レビルとその愛犬サムは廃墟と化したNYの街を車で巡回している。その他に動いているのは鹿と動物園から逃げ出したと思われるライオンたち。そして日に当たることができない"感染者"たち・・・。
ネビルは他の生存者の存在を信じて無線で交信を続ける。そんなネビルの話相手はレンタル屋などにあるマネキンだけ。公園にあるトウモロコシ畑から食料を確保し、家には保存食料が備蓄されている。
ある日、サムが"感染者"によって、瀕死の状態になってしまう。そんなサムを見て、自暴自棄になったネビルは"感染者"たちがうごめく夜の街へと駆け出していく―――。

壮大なスケール感漂うストーリーである。がしかし、見終わった後は少し首を傾げたくなる気持ちにさせられた。

物語前半はとにかく面白い。廃墟と化したNYに唯一人生き残った人間がいて、どうやって彼が生き延びてきたのか?を描写しながら、ところどころに過去のシーンが細切れに挿入され、何故主人公が1人になったのか?を一度に見せずに、徐々に見せていくため、何故?というのが頭から離れずに物語りに引き込まれていくのだ。
その最たるものがオープニングだ。テレビ画面で画期的な新薬が開発されたことを伝えるニュースが流れる。しかし、次のシーンには既に人類が絶滅している!これは上手い。初めに、何故絶滅したのか?を説明しないことで、すべての観客に何故?と思わせるのだから・・・。

また世界に名だたる大都市に人の存在感がまったく見られず、普通なら車が走っているであろうアスファルトの隙間から雑草が伸びているという映像がまたすごい。いったいどうやって撮影したんだ!?と思わずにはいられない。
そして朝食をとりながら録画のニュースを見て、誰もいないレンタルショップで、マネキンにしゃべりかけながら、DVDを借りていく。またマンハッタンのど真ん中で狩りをしたり、戦闘機の翼の上でゴルフの打ちっぱなしをしたりといった映像的なユーモアも面白い。
前半のクライマックスはネビルが"感染者"の根城にもぐりこむシーンだろう。暗闇がこんなにも怖いものだってことを改めて思い知らされるシーンであり、ひょっとするとこの作品の一番の見せ場かもしれない・・・。

それが、サバイバル編が終わり、"感染者"との戦いになると、状況は一変する。ネビルが"感染者"に仕掛けた罠を、逆に仕掛け返されたり、夜中に外に出たり、あれだけ慎重だったネビルが悪い意味で適当になってしまう。サムの敵討ちという名目で、夜中に外に出てしまう状況はわからなくもないが、それにしても他のやり方はなかったのだろうか?と思わずにはいられない。
そして一番拍子抜けしたのが、"生存者"の登場。それまでの物語の緊迫感が台無しになってしまった。別に生存者を登場させなくても、最後の地にネビルを向かわせることはできたはずなのに(例えば音声通信で誘導するなり・・・)、その案内役として人間を登場させてしまったのは残念。

といった感じで前半と後半で物語のトーンが悪い方向に変わってしまったため、全体の印象が薄くなってしまった。

この映画、ワーナーの作品なので、劇中にスーパーマンとバットマンのマークを掛け合わせたマークが登場するのはわかるのだが、ドリームワークス作品の「シュッレク」が登場するのには驚いた。しかもこの作品、共同作品というわけでもなく、当然冒頭にドリームワークスのロゴは出てこない。
それにも関わらず、ワーナー作品に他社の映像が映りこんでいるのは一体どういうことだろう?この辺りのハリウッド裏事情をぜひ知りたいものだ。

途中でガソリンを入れているシーンが、何でガソリンがあるんだ!?という疑問を解消するかのように登場するのだが、DVDを見たりするための電気はどうなっているんだ?といった細かい疑問すべてを解決はしてくれない。
また"感染者"たちが何故日に当たれないのか?という描写がないのだが、その理由付けがあるとこの作品はもっと面白くなっていたと思う。ネビルが科学的にいろいろと分析をしている絵があるのだから、逆に感染者のことを科学的に描く絵があっても良かったのではないだろうか?

この作品、登場人物が極めて少ないのだが、その中でも一番光っていたのは犬のサム。彼にはオスカー像を獲得して欲しいと思ったのは自分だけではないはずだ。史上初の動物によるオスカー獲得!・・・なんてことには絶対にならないと思うが、本当素晴らしい演技でした。

一口コメント:
途中までは100点満点だっただけに、後半がもったいないです。

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