ベオウルフ~呪われし勇者~ BEOWULF |
ロバート・ゼメキスの最新作で3Dで見れるということで見に行った作品。
巨大な体の怪物グレンデルに襲われる王国に戦士ベオウルフはやってくる。相手が素手なら、自分も生身で戦うという主義に従い、グレンデルを倒す。しかし、グレンデルの母親がベオウルフの前に現れ、2人はとある契約を交わす。その結果、ベオウルフは巨万の富、王の称号を得ることになったのだった・・・。
数十年後、王国を治めていたベオウルフの前に新たな敵が襲ってくる―――。
前作「ポーラー・エクスプレス」と同様に"パフォーマンス・キャプチャー"という技術を使った実写に限りなく近いCG映画=CGアニメを見せてくれる。
実際、登場人物の筋肉の動きや腕の産毛1本にいたるまでこれがCGか?と目を疑うような仕上がりになっている。しかし、顔が映るとやはりCGだというのが一目でわかってしまう。これはおそらく目だったり、顔の筋肉の動きが現実のそれとは少し違う(大きくは違わない・・・)ことが原因だと思われる。人間の顔というのは、普段実生活の中で他人と話をする時にいつも見慣れている部分であり、それだけに少し現実のそれと違うだけで、違和感を抱いてしまう。
ゼメキス監督が次回作もこの技術を使って撮影するのかどうか?それはまだわからないが、個人的にはアニメなら、一目でそれとわかるアニメ、実写なら実写で、CGを前面に押し出すのではなく、あくまでも俳優ありきで、CGはあくまでも映像を補助する形の使い方をして欲しいと思う。
そして今回は2時間ずっと3Dメガネをかけての鑑賞ということで、目疲れを少し心配していたのだが、それはまったくなかった。2次元のスクリーンに奥行きを出すというこの映像はかなり昔から普及はしていたのだが、目が疲れるという理由で遊園地や科学館などの短編映画のみで使われていた。しかし、今回長編映画にそれを持ち込んだのは個人的には正解だったと思う。実際、この作品を上映している全米の映画館の3割は3Dでの上映形態をとっている。
本編上映前の予告編も来年の夏の大作を3Dで上映していたこともあり、もしかすると数年後には、公開される作品の半分くらいが3D作品になっている時代が来るかもしれない。
といった感じで映像については、個人的には可もなく不可もなく、って感じだったが、今回の作品に関しては、"パフォーマンス・キャプチャー"ではなく、完全に実写版での映像を見てみたかった。
ストーリー的には、簡単に言ってしまえばヒーローが巨人とドラゴンを倒すというシンプルなストーリーであり、主人公の苦悩を描くシーンなどが内容が薄く、感情移入が非常にしにくいストーリー展開だった。しかも主人公以外のキャラクターに関しては、まったく持って内面を描くシーンがないだけでなく、登場人物の背景すら描かれていない。
その結果、映像面はさておき、ストーリー的には今まで見たことのある内容(英雄が敵を倒す)以外に、これといった見所がなかった。
また最後のドラゴンを倒すシーンにしても、ドラゴンの心臓が小さすぎるだろ?と思わずにはいられなかった。その小さな心臓で、なんであんな巨体を動かせるんだ!?しかも空飛ぶ龍!!
といった感じで、やや説得力に欠ける描写が多かった気もする。
ただし、主人公が裸でとある場所を歩き回るシーンは、人やものを絶妙なポジションに配置して、主人公のあそこが見えそうで見えないという、アメリカ人が大好きな笑いの構図で、館内も笑いが絶えなかった。こういうところはさすがに上手い!と思った。
全体的にはやはり、まだ発展途上である新しい映像技術を前面に押し出している感が強く、ストーリー展開の拙さや人物描写の薄さが目立っているのは否めない。
それでも3Dでの長編という新しい試みを実施したという点において、この作品の持つ意義は大きいと思う。