ブレードランナー 2049
採点:★★★★★★★☆☆☆
2017年11月4日(映画館)
主演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

1982年に公開された前作がカルト的な人気を博していた作品の35年ぶりの続編。自分も10年以上前に前作を見て以来だったが、昨年の東京コミコンでもブースが出ていたこともあり、鑑賞した。

2049年、荒れ果てた地球。新型レプリカントの警察官Kは、旧型レプリカントを解体する任務を遂行していた。ある任務の際に木の根元に箱が埋まっているのを発見する。調査の結果、妊娠したレプリカントの遺骨が入っていた。
レプリカントが妊娠することは不可能なはずだったため、上層部はその事実を隠ぺいするため、子供を探し出し抹殺するようにKに指示をする―――。

これは前作を見ているかどうか?ではなく、いつ見たか?によって大きく感想が変わる作品だ!というのが個人的感想。
前作はそのダークさ故に万人受けはせず、公開当時は記録的ヒットとはならなかったが、日米共に公開終了後に一部でカルト的に広まった作品。1980年代前半にこの作品を見ていれば、当時の映画業界のSF技術やSF作品の作風においてはこの作品が技術的にも作風的にも画期的なレベルにあり、歴史に名を残すような内容であったと言える。
しかしその後、この作品の影響を受けたと思われる日本アニメ「AKIRA」がアメリカでもヒットし、日本語が入り乱れたダークな都市の描き方というのが一般化する。ハリウッドにおいても作品の描き方が一般化してしまった後に前作を見ているとそこに驚きや新鮮さはない。
言い換えれば「AKIRA」前後でこの作品の受け止め方は大きく分かれると言っても過言ではない。

というのを踏まえて考えると、35年振りの続編であるにも関わらず、そのストーリー展開、キャスティング、そしてダークさ(特にKの結末の悲劇たるや・・・)、すべてが見事な続編だと感じた。恐らく前作のファンであれば、制作決定の話を聞いたときに傑作をいじるな!と思った人が多数いたはずだが、この作品を見れば、大半の人は見事な続編をありがとう!となるような内容だ。
前半と後半で主人公がはっきりと分かれているのも良い。前半の主役であり、「ラ・ラ・ランド」の主演でもあるライアン・ゴズリングが良い。なんというんだろうか、その哀愁漂う表情が作品全体に漂う雰囲気と見事にマッチしている。そして迎える壮絶なラスト。前作の主役であり、今作でも後半の主役であるハリソン・フォードを見送った後、雪の降りしきる階段の描写はファンの間でかなり議論を呼びそうな演出になっており、これがまた前作の良さを引き継いだ見事な終わり方だと言える。

そしてそのKが愛するフォログラムAIのジョイ役のアナ・デ・アルマスがまた良い!自分はこの作品で初めて知った存在だが、今後の活躍が楽しみな女優。
そしてフォログラムであるがゆえに愛を確かめられないジョイが生身の人間を呼び、同化しながら展開するラブ・シーンは今までに見たことのない斬新な映像だった。このシーンも前作の正当な続編としてファンからの評価が高そうな描写だと感じた。Kの切なさをさらに増すためにジョイ自身の切なさをこういった見せ方で描くという手法はとても効果的。そういう意味ではキューブリック X スピルバーグの「A.I.」に似た寂しさを感じる。
前作ではレプリカントという設定自体が斬新だったわけだが、今作ではその役割をこのフォログラムAI・ジョイが担っているという意味でも続編として見事!!さらにそこに女レプリカントであるラブが加わることで、レプリカント、AI、別人の幼少時代の記憶を持ったKという"切なさトライアングル"が完成するのだ!!

そして後半に入り、主人公がハリソン・フォード演じるデッカードに代わり、前作からのテーマであり、今作の前半でも問題提起されていた人間とレプリカントの境界線を更に深くえぐっていく。
ここまでの主人公交代劇が正直長いと感じた自分もいる。だから前作未見の人はもっと長く退屈に感じたかもしれない。1本の映画で主人公が2人という変わった作品。だからこその2時間43分という上映時間。極論、前後編に分けても良いのでは?というくらいの作品なのだが、そこは前作ありきの続編なので愛嬌ってこと・・・(笑)。

でもって後半のデッカード編はデッカードが娘に会うためのストーリー。Kとデッカードが殴り合うシーンがあるかと思えば、エルビス・プレスリーやマリリン・モンローがフォログラムで登場するなど、やや前半とテイストが変わる。しかしこれもクライマックスに向けての演出。
最初から最後まで終始ダークではクライマックスのメリハリが効かないので、中盤でいったん盛り上げシーンを入れたわけだ。
それを踏まえての最後のKの悲劇。愛するジョイを失い(最後の「愛してる」も切ない)、最後の希望ともいうべき「もしかしたら自分が?」と思っていた上での悲劇。メリハリの結果、Kの絶望感がより際立つ見事なラストシーンに仕上がっている。個人的にはここで終わって欲しかった。その後のデッカードと娘の再会シーンは要らなかった。このシリーズについてはハッピーエンドではなく、バッドエンドが似合うのだから・・・。

冒頭の繰り返しになるが、前作を見ているかどうか?は関係なく(・・・というか、見てないとそもそも理解に苦しむと思われる)、いつ見たか?によって大きく評価が分かれる作品であり、またハッピーエンドではなく、バッドエンドが好きな人に好まれる作品だと思います。

一口コメント:
前作を見ているかどうかではなく、いつ見たか?によって大きく評価が変わる作品です。

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