3 BEST PLACE =Movie/映画=
ハリー・ポッターと謎のプリンス
採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2009年7月24日(映画館)
主演:ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン、ルパート・グリント
監督:デヴィッド・イェーツ

日本では公開初日の、アメリカでは深夜興行の新記録を打ち立てたシリーズ6作目。タダ券をもらったので見てきました。

6年生となったハリー。新しく赴任したホラスの授業中に"混血のプリンス(原題直訳の方がしっくりくる)"と名乗る人物が書き込みをした教科書を手に入れたハリーは、魔法薬学だけではなく、闇の呪文も記されていることに気づく。
一方でダンブルドアはヴォルデモートとの最終決戦に向けた個人授業を施し、ヴォルデモードに関わった人間の過去の記憶をハリーに見せていく。ハリー自身も最終決戦に向けて内なる闘志をを燃やし始める。
そんな中、学校内は色恋沙汰が燃え始めていた。ハリーとロンの妹、ロンと、とある女性の関係に嫉妬するハーマイオニー。
さらにハリーと同級生でライバルのマルフォイの下にヴォルデモートの手が伸び、マルフォイにある使命を与える。それによってマルフォイは苦悩の日々を送ることになるのだが・・・。

前作から原作を読んでいないのだが、このシリーズは壮大なファンタジーであって、ラブコメ作品ではなかったはず?2時間半以上の上映時間のうち、半分近くがラブコメに焦点を当てている。見終わった後の消化不良感というか、失望感はシリーズ中最高。失望感=最高であって、要するにシリーズ中最低の作品だというのが率直な感想。

1つずつ考えて見ることにしよう。
まずは前作でついに復活したはずのヴォルデモートの恐怖が描かれたのはオープニングのロンドンの橋落下シーンのみ。人間界にも及ぶほどの力のはずが、生徒達の色恋沙汰を妨げるほどの力ではなかったらしい。(そして残念なことにこの橋の落下シーンがこの作品の中で最大の見せ場でもあり、後は起伏も盛り上がりもない展開が延々と続いていくだけ・・・)
人間界での描写も最初のロンドンだけで、その後はすべて魔法界のみでの出来事しか描かれない。恋愛シーンに1時間以上もかけるなら、10分でも良いから人間界での恐怖のシーンをもっと描いて欲しかった。そうすることでヴォルデモートの恐怖感をより引き立たせることができたはずだし、1つの作品としてのバランスもより良くなったはずだから。
何より恐怖の大魔王が復活し、世界の終わりが近いということをまったく感じることができない。まだ最終章が残っているからという考え方がなくもないが、逆に最終章で恐怖感を引き出しても遅いという考え方もある。
このシリーズを通してずっと思っていることだが、名前を口に出すのもはばかれるほどの伝説の大魔王の強さというか、恐ろしさというのがまったく伝わってこない。一体いつになったら本当の意味での大魔王は復活するのだろうか?
その証拠にホグワーツでは今まで通りに授業が行われ、クイディッチも普通に行われ、そこでヒーローになったロンはモテまくる。どうせならヴォルデモートの復活は前作ではなく、今作でも良かったのではないかとすら思える。(原作があるとはいえ、映画は映画で原作を大幅に省略しているのだから、順番を変えることをしても良いのでは?)

続いてヴォルデモートの過去をハリーが学んでいくシーン。
既に上述したがまったくもって起伏も何もないし、特に新鮮な驚きもない。しいてあげればダンブルドアが見せる炎の魔法のシーンに少し興奮したくらいか?おそらく原作ではより深い世界観が丁寧に描かれているのだろうと予測がつくのだが、監督の描き方+原作⇒脚本への書き換え作業での間違った省略の仕方によって、見るも無残な内容になってしまったのではないだろうか?

副題にもなっている"混血のプリンス"も、それが誰だか明かされても、何かいまいちピンと来ない。大きな原因はやはり"混血のプリンス"のその謎に関する描写があまりにも少なすぎたこと。これまた恋愛描写に時間を割きすぎた結果と言える。
この作品の謎解きに関してはシリーズが進むに連れてレベルが下がっているなと感じた。もしかするとこれまた原作ではうまく描かれているのかもしれないが・・・。

そしてクライマックス。これはシリーズ6作目までの中では、おそらく原作上では最大の見せ場のはずだと思われるのだが、あまりにもあっけない。
殺されてしまう人物もマルフォイごときにあっけなく、杖を弾き飛ばされてしまうような人物じゃないだろう?(確か手元にない杖を手元に引き寄せる描写がシリーズ中に描かれていたのに、なぜそれをしないのか?)
さらにハリーもいくら"信じろ"と言われたからといって、あの状態で何もしないのはおかしい。そんなに薄っぺらい関係だったのか、君達2人は?
さらに前作で結成されたはずのハリー率いる"不死鳥の騎士団"はどうなったんだ?このクライマックスシーンで登場してしかるべきはずじゃないのだろうか?

そしてマルフォイに関しては、第1作目を除くと印象が薄いため、突然6作目で準主役の座に返り咲かれて、回りが恋愛に励んでいる中、1人だけシリアスな演技をされても、逆に浮いて見える。監督は前作と同じなので、前作から伏線を張っておくなど、いくらでも方法があったのに・・・。マルフォイ役の俳優の演技そのものは良かっただけに、非常に残念。

そしてこの作品で監督が最も見せたかったと思われる恋愛シーン。
面白いっちゃ、面白いのだが、この作品はあくまでもファンタジーであって、ラブコメではないということを監督は忘れてしまったのだろうか?
一言で言えば、描写が長すぎる。上述のクライマックスシーンは原作ではもっと緊迫した描写があったであろうに、それを削ってまで、この恋愛シーンを入れなくてはならなかったのだろうか?これらの恋愛関係がシリーズ最終章となる2作で重要な伏線となるのだろうか?
この作品を見る限り、答えはNOです。

唯一の救いは前作から登場したルナというキャラクター。前作同様、変わり者のキャラを演じながら、年末のパーティーには並み居る女性キャラを押しのけ、ハリーの相棒として出席するほどの出世。
とぼけた演技をしているが、前作と比べて、将来が楽しみな女優に成長しています。

一口コメント:
シリーズ中"最高の盛り下がり"を見せるラブコメ大作です。

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