ALWAYS 三丁目の夕日 |
2006年度の日本アカデミー賞を総ナメした作品で、友人が猛烈に見たがっていた作品でもある。
昭和33年春、下町の小さな自動車修理工場"鈴木オート"に、六子と言う娘が集団就職で上京して来る。
一方、駄菓子屋を営む三流小説家・茶川竜之介も、思いを寄せる居酒屋のヒロミに頼まれ、淳之介という少年を預かることになるが、淳之介が竜之介の執筆する「少年冒険団」の大ファンだと知り、嫌々だった態度も少しずつ変わっていく。
ある日、鈴木家にTVが届き、近所の人々も集まってTVを見るのだが、突然画面が消え、それを故障と勘違いした東大卒の竜之介が修理に挑むが、逆に状態を悪化させてしまう。また竜之介は、淳之介のアイデアを盗作し、雑誌に投稿してしまう―――。
淳之介の母親が住んでいる場所が分かり、鈴木オートの息子と2人で家まで行くが最後のところで、引き返してしまう。その頃、いつになっても戻らない2人を心配して、鈴木家と竜之介は大騒ぎ。2人は無事に帰宅するものの、竜之介はまるで父親のように、淳之介の頬を打つ。
そして冬が訪れる―――。
街の看板や上野駅の発車案内板、路面電車や三輪自動車などの小道具だけでなく、コンクリートではない、土の地面をはじめとしたそれにふさわしい背景を用意し、そこに現代技術のVFXを組み込み、昭和33年を象徴する建設中の東京タワーを描いた映像はとても素晴らしい。
実際に目にしたことはないが、なぜかとても懐かしい感覚に包まれた。
映像が屋外から家の中に移っても、当時3種の神器と呼ばれた冷蔵庫、洗濯機、TVなどのアイテムから、電球にいたるまで細部にわたって、昭和33年が再現されていたのではないだろうか?
個人的に一番目を引かれたのはオープニングの飛行機を飛ばすシーン。1カットで飛行機を飛ばすところから始まり、飛んでいく飛行機を追いかけながら、当時の東京の街並みを見せてくれるのだが、飛行機は途中からCGに変わっているはずなのだが、現物からCGへの繋ぎ目がまるでわからないのだ!ひょっとしたら、一切現物を使わずにやっていたのかもしれないが、そうだとすると、子供がプロペラを回すシーンはどうやって撮ったのだろうか?
ストーリー的にはいくつかのストーリーが同時並行で進んでいくオムニバス形式になっているが、メインのストーリーは鈴木オートと茶川の2つ。率直に言えば、昔を美化し過ぎてしまっている気がしないでもないが、そういうことがどうでも良くなるくらいに、ストーリー的にはのめりこんで見れる。
鈴木オートの堤真一の演技はこんな頑固オヤジが本当にいたんだろうな~と、当時を知らない自分に思わせてくれるだけの迫真の演技だった。
もう一方の茶川を演じた吉岡秀隆も良かった。自分が知っている吉岡といえば、「北の国から」のジュンと「Dr.コトー診療所」のコトー先生くらいで、どちらも似たような役どころだったのだが、今回の茶川の演技を見て、こんな役もできるんだ!と驚かされた。
それと小雪。「ラストサムライ」やその後のTVドラマで見た小雪は正直、全然良いと思ったことはなかったが、この映画の小雪は、なぜかよくわからないが、とても魅力的に映った。
映画の中で、「今は戦後じゃない!」と言いながらも、空襲で家族を失くしたという話があったり、昭和33年=戦後13年という時代においても、戦争って言葉が当たり前のように使われていたという事実に、なんとも言えぬ感情に包まれたりもした。
おそらく日本人である以上、こういった感情はいつまで経っても消えないものなのかもしれない。