ALWAYS 続・三丁目の夕日
採点:★★★★★★★★☆☆
2007年11月3日(試写会)
主演:吉岡 秀隆、堤 真一、薬師丸 ひろ子、小雪
監督:山崎 貴

2006年度の日本アカデミー賞を総ナメした作品の続編で、AFM(American Film Market)で日テレが試写を行っていて、友人がチケットを取ってくれたので、見に行った作品。

東京タワーが完成した直後の昭和34年の春。鈴木オートに、親戚の美加がやって来る。スキヤキは牛肉ではなく豚肉、家に風呂はなく銭湯通いという庶民的な暮らしに、お嬢様育ちの美加は戸惑い気味。
一方、駄菓子屋の店主、かつ作家の茶川竜之介は、淳之介と貧しいながらも仲良く暮らしていた。ところが、淳之介の父親・川渕が再び現れ、息子の将来のために・・・と連れ帰ろうとする。茶川は、淳之介に人並みの生活をさせるから、もう一度だけチャンスをくれと、芥川賞を目指し、再び執筆活動に取り掛かる。
そんな二人を置いて去っていたヒロミは、茶川を想いながらも、借金返済のため踊り子として働いていた・・・。

今回も前作に続き、背景などの描写に一切手抜きがない。個人の家などはセットを作れば時代など関係ないのだが、町の全景となるとそうはいかない。平屋が立ち並ぶ昭和の東京と高層ビルの立ち並ぶ現代の東京では、通常ごまかしようがないのだが、この映画はそれを見事にやってのけている。しかもハリウッドの高額予算の映画(ハリウッド映画なら全部セットで作ってしまうか?映画撮影用に高速道路を作ってしまうくらいだし・・・)ではなく、日本映画が・・・!!ということに驚いてしまう。
例えば、東京駅のシーンなどは駅の外観そのものは現代とそこまで大きな差はないが、その周りの風景は一変してしまっている。そしてホームや電車などはもはや存在しないはずのものが、スクリーンの中には存在する。
また一番驚いたのが、羽田空港のシーン。空港の全景から映し出し(予算のない映画なら普通空港の看板しか映さないはず・・・)、さらには空港の敷地内の風景も写し、さらには今となっては存在しない飛行機も背景に溶け込んでいる。
その"かつては存在していたが、今は存在しないはずのもの"を目にさせ、懐かしい古き良き時代という過去を通じて、物語に観客を引き込んでいるのがこの作品のすごいところだ。
CGといえば、見たことのない未来や、はるかなる過去を描くために使われるものだという一般常識を良い意味で大きくひっくり返してくれる。親近感のわく身近な過去をCGで描くというこのアイデアは本当に素晴らしい。

ストーリー的にも前作に引き続き、笑いと感動が交錯する素晴らしいストーリーです。
笑いと感動、この相反する2つの要素が次から次へとスクリーンの中で展開されていく。オープニング、東宝のロゴが出た直後に東宝スコープという別のロゴが出てくる。そしてとある物語が始まるのだが、このとある物語は東宝にしか絶対できない驚きのオープニングになっていて、まずはいきなり最初に笑いが待っている。
その後は前作同様にいくつかの感動のエピソードがいきあたりばったりのように展開されていく。(普通なら話がわかりにくくなるはずの、このいきあたりばったりの展開が、このシリーズに関しては、古き良き時代を表現するために非常に効果的に働いている)
その後もテンポ良く、笑いと感動が次から次へと押し寄せてくる。

そして今回は"会いたい人がいる"というコピーそのままに、鈴木オートの社長は生死の分からない戦友に、則文の妻は戦争で引き裂かれた恋人に・・・といった感じで、生き別れてしまった大切な人とのエピソードを展開することで、前作同様、戦後の日本をほんのりと感じさせる演出も冴えている。
また今回はそこに"恋"という要素も加わっている。茶川とヒロミ、六子と幼馴染の武雄、一平と美加と3つの恋が語られていて、これもまたこれでもか?という展開ではなく、ほんのりと、そしてじんわりとした演出によって、泣かされます。

通常、映画というのはジャンルが何であれ、先が読めてしまっては面白くないはずだ。基本的に次はどうなるのか?という展開によって、物語に引き込まれていくのだから・・・。
それが、この作品(前作もそうだったのだが)に限っては、簡単に展開が読める。それでも先を見たいと思うし、読んでいた通りの展開になった上で、それでも満足できる・・・という不思議な作品である。
また昭和34年といえば、自分はまだ生まれていない。それでも、この作品で描かれている時代が懐かしく、愛おしいと感じる。
それがなぜか?といえば、おそらく、人間が身近な過去に対しては良い思い出を探そうとする本質があり、その本質を見事なまでに利用しているからではないだろうか?
手で廻す洗濯機や洗濯板が出てきたり・・・、現代のボタン1つで洗濯が終わってしまう味気ない生活に慣れてしまった自分たちにとっては、洗濯板なんてものは哀愁感が漂って仕方がないはずだから。

全体的に見ても、今回も日本アカデミー賞を狙えるだけのレベルの作品に仕上がっていて、こうなると3作目を期待してしまうのだが、果たしてどうなることやら?

一口コメント:
先が読めるのに、物語に引き込まれていくという不思議な作品です。

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