クローズド・ノート
採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2007年10月1日(映画館)
主演:沢尻 エリカ、伊勢谷 友介、竹内 結子
監督:行定 勲

世界の中心で、愛をさけぶ」の行定監督の最新作。引越し先の住人が忘れていった日記の最後の1ページが破られていた・・・。この設定と出演者に魅かれて見に行った作品。

教育大に通う香恵は、引越し先で、前の住人が忘れていった一冊のノートを見つける。その中には小学校の先生をしていた伊吹が担任を受け持った4年2組での出来事と、思いを寄せるタカシとの出来事が綴られていた。
ある日、バイト先の万年筆屋にやってきたイラストレーターの石飛に香恵は恋をする。そして伊吹先生の日記を読み進めるうちに、香恵はそこに綴られている伊吹の恋に自分を重ねながら、石飛への想いを募らせていく―――。

何とも思わせぶりな映画でした。伊吹先生の日記の最後の1ページに一体何が書かれているのか?ものすごく期待させておいたわりには、普通の内容。
しかも最後の1ページが破られているということも、予告を見ていない人にしてみれば、破られていたことすら、どうでもいいような演出。
主人公が最後の1ページが破られていることに対して、推測したり、悩んだり・・・ある種の苦悩の場面描写を入れるだけで、随分と受ける印象が違っていたであろうから、少しもったいない。

また伊吹先生の憧れのタカシの秘密もあまりにもわかりやすく演出されすぎてしまっていて、「いやそれはもう秘密でもなんでもなく、公然の事実だから!」と突っ込みたくなるような感じで、前半30分くらいで話がわかってしまい、残り時間がある意味、苦痛だった。
このようなちょっとした謎解き要素が入った映画の場合は、もっと伏線を丁寧に隠して衝撃の結末に導くなり、散りばめられた伏線から別のストーリーを予想させておいて欺くなり、謎解きはすっぱり切り捨てて、人物描写に力を入れる・・・といった作風にしておかないと、何の驚きもないまま、あるいは登場人物に共感できないまま終わってしまう。この作品はまさにそんな感じだった。

謎解きに関しては、既に述べた内容以外にも、修了式の日に学校で書いていた日記が、何故、彼女のアパートの奥まった場所にしまわれていたのか?という大きな謎は残ったままだし、人物描写に関しても、香恵が石飛を好きになる過程、心理描写が薄く、どうして好きになったのか?という部分でいまいち共感できなかった。

また時代設定としては、現代を描いているはずなのに、どうみても現代には見えない。元号で言えば平成ではなく、昭和後期のような描写である。一昔前の時代設定であれば、ありかな?と思える内容だったが、現代の設定としては、ちょっと変・・・というか、異常。
携帯を持っているような小学生が一杯いるような現代で、紙で作られたメダルをもらって喜んだりする、あんな素直な小学4年生がいるだろうか?
これが昭和後期なら、安心して見ていられるのだが、平成も20年を迎えようかというこの時代の小学生として見るにはちょっとつらい。

また紙飛行機を飛ばすシーンも、あまりにも綺麗に飛びすぎていて、逆に興醒めでした。映画の冒頭と、最後を紙飛行機でつなげるという演出は素晴らしいのだが、最後はCGを使わないで、あるいはCGを使ってもいいが、誰もがCGだとわかるような飛び方ではなく、本物っぽいなぁ・・・くらいの思考をできるCGの使い方をしてほしかったです。

いろいろと難点ばかりをつっこんできたが、この映画は竹内結子に救われた、といっても過言ではない。彼女だけが唯一、共感を覚え、自分が小学生の時に、こんな先生がいてくれたらな・・・と思えたし、また名目上の主役は沢尻エリカとなっているが、実際にはこの作品の主役は竹内であり、その役どころに竹内結子をキャスティングした点は素晴らしい。おそらく彼女が出演していなければ、評価はもっと下がっていただろう。

テーマとしては、面白く、人物設定も興味深いものがあっただけに、もう少し煮詰めて欲しかったというのが、正直な感想です。

一口コメント:
"思わせぶり"な内容を"思わせる"ではなく、"見せてしまった"映画です。

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