名探偵コナン 瞳の中の暗殺者
採点:★★★★★★★★☆☆
2010年8月1日(DVD)
原作:青山 剛昌
監督:こだま 兼嗣

劇場版「名探偵コナン」第4弾。

2人の現職警察官が相次いで射殺される事件が発生した。事件に遭遇したコナンは、小五郎と共に目暮警部や白鳥警部から事件の詳しい情報を聞き出そうとするが、警察は頑なに情報提供を拒否し続ける。
そんな矢先、白鳥警部の妹の結婚披露パーティに出席していた佐藤刑事が撃たれ、現場に居合わせた蘭もショックから記憶喪失になってしまう。蘭が事件に巻き込まれたことで、目暮警部も遂に事件の真相を話し始める。
それは医師・仁野が自宅マンションで遺体となって発見された1年前の事件で、警視長の息子・敏也が容疑者で、今回撃たれた3人が捜査に当たっていた。
話を聞いたコナンは、早速敏也の身辺を洗うが、そんな彼らの前に仁野の妹・環をはじめ、新たな容疑者が続々と現れる―――。

謎解きに関してはシリーズ屈指の難易度を誇る作品である。"劇場版コナン=謎解き"を求める人にとってはこの作品こそがシリーズ最高傑作になり得る作品であり、警察上層部の機密情報が絡み、そして蘭が記憶喪失になることもあり、作品全体を通しての重さという意味でもシリーズ再"重"作品かもしれない。

前作「世紀末の魔術師」が怪盗キッドに始まり、キッドに終わる作品だったが、今作は毛利蘭に始まり、蘭に終わる作品であった。
蘭が記憶喪失になるという設定はもちろんだが、犯人を自ら退治してしまう点と言い、文字通り蘭祭り。そして友人園子が記憶喪失になってしまった蘭に「たとえ記憶がなくなっても私は一生友達だからね」と涙しながら言ったのに対し、記憶が戻った後の蘭が、園子の「私のこと、わかる?」に対して、「一生の友達の園子」の返答をするあたりは上手い。
そして台詞の掛け合わせという意味では遊園地でコナンと逃げる蘭が「どうしてキミはこんなに私のことを守ってくれるの?」との問いに対し、コナン=新一が「おメエのことが好きだからだよ。この世界中の誰よりも・・・」と返す台詞が、小五郎が妃にプロポーズした言葉と同じというのも絶妙。そしてそれをエンドロール後のオチに持ってくるあたりも上手い。
台詞という意味では、「ハワイでおやじに!」の決まり文句が久々に聞けたのも嬉しかったりもする。映画ではこの作品が初登場だった。

台詞ではないが、新一と蘭のデート・シーンにおいて、カウントダウンに合わせて噴水が噴出すシーンも、クライマックスの犯人との対峙シーンでも用いられており、この作品は台詞も行動も含めて、いろいろなことが"前振り"とそれと遂になる"受け"の繰り返しを用いていて、それが非常に効果的に働いている。

そして別の容疑者を犯人と見せかける視聴者へのミスリードも見事。
真犯人は1人だけなのだが、その周囲にいる容疑者の数が非常に多く、それが謎解きレベルをシリーズ最高レベルに押し上げているのはもちろん、シーンが変わるたびに、次から次へと容疑者も変わっていくことで作品全体を通して緊張感が持続していることにも一役買っている。
そこに犯人が警察内部にいるかも知れないという重さ、そして犯人の顔を見たものの記憶喪失になってしまい、どこで蘭が狙われるかも知れない緊迫感が重なり合い、シリーズ屈指のサスペンス色の強い作品になっている。
爆弾とかテロのような派手な演出はないので、地味といえば地味な作品だが、この重さはコナンの原点、黒の組織に通じるものがあり、これはこれでありと言える。

このシリーズのもう1つの売り(?)である、それはないだろう!?の描写も今回ももれなくついてきます。
それはコナンのスケボー。アトラクションの下り坂から、かなり離れたところにあるジェット・コースターへ飛び移るシーン。さすが、アニメ!と思わず口に出してしまうほど吹っ切れた描写でした。

一口コメント:
シリーズ屈指のサスペンス色・シリーズ最高難度の謎解き作品です。

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