名探偵コナン 沈黙の15分 |
今作で劇場版も15周年。ということで、劇場版が始まった当時小学1年生だった子供も既に二十歳を超えているはずだが、コナンたちは相変わらず、小学生のまま・・・。
12月のある日、東京都知事のもとに脅迫状が届いた。地下鉄の開通式に出席し、そのまま都知事が登場する地下鉄東都線のトンネルが爆破されるが、コナンの活躍により死者を出すことなく、大惨事は食い止められた。
都知事が国土交通大臣だった頃に建設したダムの関係者が怪しいとにらんだコナンは、いつものメンバーと共にダム建設の際に湖に沈められ、移設された新潟県北ノ沢村を訪れる。
北ノ沢村に到着したコナン達は8年ぶりに集まったという幼なじみの5人に出会い、8年前、同じ日に交通事故と崖からの転落事故が起こったことを知る。5人の同級生の内の1人の息子で、転落事故からずっと意識不明だった立原冬馬も8年ぶりに目を覚ますが、それを知った犯人によって彼は追われる身に・・・。さらに、幼なじみの内の1人が遺体となって、雪原で発見される―――。
15周年とは名ばかりで、15年でワースト2の作品です。しかもワースト2作品は群を抜いてのワーストです。ちなみにワースト1は「紺碧の棺」です。
このシリーズの売りはあくまでも推理・謎解きで、劇場版はそこにアクションが入り込んでくるというもののはず。例年、この推理・謎解き:アクションの比率が6:4(劇場版初期)~4:6または3:7(最近の作品)くらいなのだが、このワースト2作にいたってはこの比率が1:9くらいになっており、こちらが犯人は誰なのか?とか、この謎はどうしてこうなったんだ?と考える楽しみがまったくない。
謎解きらしい謎解きは、雪の平原に残った足跡くらいだろうか?犯人に関しても、明らかに怪しい人物がまんま犯人で、犯人を追い詰めるシーンもあまりにもサラッと流してしまい、どんでん返しも、ミスリードもない・・・。最初に出てきた都知事は良い題材になりそうだが、雪山で起きた事件に深く関わってくるのかと思いきや、何もない。
またここ最近の劇場版のおなじみとなりつつあるのが、犯人の動機のしょぼさ。犯人の動機と実際に起こした犯罪の差があまりにも大きすぎて、感情移入も何もない。他の実写映画で何度も書いてきたが、登場人物への感情移入というのが映画を面白くする大きな要素である。それが主人公であろうが、敵であろうが、犯人であろうが、作品中の誰かに感情移入できるかどうかが、見終わった後の感想を大きく変える。しかし、この作品に関しては、感情移入できる人物がゼロ。感情移入してるからこそ、「何でこの人が!?」といったサスペンスならではの感情も理解できるのだが、コナンはコナンでスーパーマン過ぎるし、犯人も人物描写が少なすぎる。
都知事を村に来させないために地下鉄を爆破したり、真の目的(10億円)のためにウン千億円はするであろうダムを爆破したり・・・、やや興ざめ。普通に考えれば、ダムを爆破するよりもダイバー・スーツ着て潜るほうが現実的だし、普通の人間があんなに大量の爆弾をどこから入手したのか?ダム職員でもない人間が、どうやってダムのあんな場所に大量の爆弾を仕掛けたのか?普通の一般人では到底できないレベルの犯罪ばかりで、お前はテロリスト集団の一員か?と考えれば考えるほど謎が深まる・・・。今回の謎解きはここなのか!?とさえ冗談ながらに思ってしまう。
さらに駄洒落クイズも歴代最低レベルの駄洒落・・・、というか駄洒落にすらなってない。
さらに子供たちだけで、スノーモービルを運転する描写もあるが、なぜ子供だけで運転できたのか?そもそも小学1年生だけでの運転を誰が許可したのか?個人的には久々にコナンが「いやー昔、親父がさ・・・」を使う絶好の機会だったのに・・・と残念でもあった。
ただしオープニングのつかみは歴代最高レベルかもしれない。地下鉄爆破によって高速道路に電車が飛び出し、ギリギリのところで落下を免れるという実写であれば、ハリウッド大作でしか見れない映像を満喫させてくれた。
が、天井をさかさまの状態で文字通り"逆"送したり、道路の脇を抜ければ良いのに、意味もなく蛇行して、追突事故を誘発しそうになったり、見せ場とは言え、劇場版シリーズでもトップを争う"あり得ねぇ"演出に笑ってしまった。
どうせならそうしなければならない"必然"を作った上で蛇行させて欲しいかった。例えば、車が事故って、玉突きが発生しそうになって、後続車が急ブレーキや急ハンドルなので・・・とか?
と思いきや、最後にダムが決壊した際に見せたスノボの激走シーンはさらにその上を行った!
そして最も"あり得ねぇ"演出は、8年間寝たきりだった人間がいきなり立って歩けるという演出。普通歩けないどころか、起き上がることさえ難しいだろうに・・・。
今回の作品は推理がない分、人間ドラマが普段より多く描かれていた。
例えば、光彦と元太のケンカとそれに対するコナンの台詞、「言葉は人を傷つける刃にもなる」。ただし、これはコナンじゃなくて、蘭が言ったほうが良かったのではないか?という思いもある。
また冬馬という、コナンや灰原とは真逆の設定の存在は面白かった。15歳の体に7歳の心を持つ青年と、逆に小学1年生の体に高校生や大人の心が宿っているコナンや灰原。設定的には面白かったのだが、せっかくの対比構造も上手く使われていない。
冬馬の苦悩は上手く描けているのに、それをコナンや灰原の苦悩につなげないのはもったいなかった。
15周年+初の冬が舞台ということで期待値が高かったためかもしれないが、最後にやっていた来年の作品予告はスタジアムを予感させる映像だったので、サッカーが絡むのか?とまた期待が高まってしまった。