名探偵コナン 11人目のストライカー
採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2012年11月25日(DVD)
原作:青山 剛昌
監督:静野 孔文

創設20年を迎えたJリーグを協賛にした劇場版第16弾。

毛利探偵事務所に電話が掛かってきた。電話を受けた小五郎に爆破予告をする犯人。その直後に事務所前の前に停められていた車が爆発し、犯人は「これから言う暗号を解いて爆弾を見つけないと、次は大勢の死傷者が出る」と脅す。
その頃、コナンは東都スタジアムでJリーグの試合を観戦していた。ハーフタイム中に蘭からの電話で、爆破予告のことを知り、暗号解読に乗り出す。コナンは暗号の解読に成功し、東都スタジアムに爆弾が仕掛けられていることが判明する。がしかし、爆弾の解除が間に合わず、爆弾が爆発してしまう。しかし暗号を解いたコナンが警察に連絡し、事前に観客を避難させていたため、死者が出ることはなかった。
後日、犯人から小五郎宛てに「次はさらに多くの人が集まる場所に爆弾を仕掛ける」という脅迫状が届く―――。

この監督は駄目なんだろうか?前作がコナン映画史上ワースト2だったのだが、今作もそれに劣るとも勝らない出来。テーマ事態はそんなに悪くないのに演出が駄目なのだろうか?
ま、脚本が悪いってのは間違いなくある。ワースト2の2作品が謎解きとアクションの比率が1:9だったのに対し、この作品は比率的には3:7くらいで謎解きが多い。しかしその他の要素も含めると謎解きの密度が低い。
それは真犯人も含めた容疑者全員の動機がいまいちで、爆弾の爆破という事件に対する動機としての理由付けが薄い。
さらに謎が解けた際の満足感も、予想通りというか、予想以下というか、TVシリーズの中に入れてもかなり低レベルな謎解き。
他にもミスリードと言っている8万人以上の会場もミスリードらしいミスリードでもなく、逆になぜコナンがこれに気づかないんだ!?ってレベルのひっかけで、逆に興醒め・・・。

設定と言えば、全国10箇所の爆弾を解除するために、10人のストライカーに与えられた課題もどうでだろう?謎解きと関わっているので、詳細は避けるが、これを試合中に動いているボールで実施できるストライカーが10人も日本にいるのであれば、日本代表はW杯優勝できるだろう。

まぁこの設定についてはあくまでもアニメということで許せる範囲内だが、事件の鍵となる爆弾についてはさすがにあり得ない。
たった一人でスタジアムを爆破するほどの量の爆弾を作るだけでなく、それを全国10箇所のスタジアムに一人だけで仕掛けるという超人技。それだけでも大変なのに、東都スタジアムに仕掛けた爆弾の場所や数ときたら、とても一人では仕掛けられない。仮に超人小学生コナンが犯人であっても無理である(いやコナンならあのスケボーを使って・・・なんて考えなくもないか?)。
それでも今回の犯行は単独犯という設定。この辺りの設定が脚本段階でもう少し改善できなかったのだろうか?ここ数年のコナン映画に共通することだが、犯罪のスケールは大きいのに、動機が小さい。しかも単独犯。これはお約束になりつつある。良いお約束なら問題ないが、これはできることならなくして欲しいお約束である。

お約束といえばもう一つ、声優以外のキャスティング。
エキストラの子役は見事なまでにいつも通りの棒読み台詞だった(ここまで見事に棒読みを揃えられるスタッフもある意味すごい・・・)が、それ以上に本人役で登場したJリーガーがひどかった。
中でもストーリーの中で最も重要なガンバの遠藤選手が一番下手だったのは痛かった。というのは、ラストシーンに回想シーンがあり、そこで遠藤選手のある台詞が使われているから。せっかくの良いシーンなのに、棒読みの台詞が全てを台無しにしてしまっている。
漆黒の追跡者」の時のDAIGOもひどかったが、今回の遠藤はそれ以上かもしれない。ゲスト俳優を使うのは宣伝の1つかもしれないが、今後はできるだけ重要なシーンに絡まない形で使うか、どうしても使うのであれば、それなりに訓練するか何度でもテイクを重ねるかして、聞くに堪えるレベルまで持ってくるなりして欲しい。
Jリーガーの中ではカズがさすがにキングらしさを見せ、一番上手かった。
また、桐谷美玲はさすがに女優だけあって、違和感なく溶け込んでいた(Jリーガーがひどかったので、その分上手く聞えただけかもしれないが・・・)。

Jリーグとしてはコナン映画を通して未来のJリーガーとなるかもしれない子供達にサッカーを浸透させるという戦略は成功だろうが、この作品を見てJリーグの試合を見に行こう!という人より、危険な場所だから避けよう!という人の方が多いんじゃないだろうか?なんて危惧を覚えたりしないでもない・・・。
しかし、立体感のあるカメラワークとCGの組み合わせによって、アニメでありながら、サッカーの試合描写としては見ごたえのある内容になっていたので、その意味では本物のサッカーを会場に見に行こうという人はいるかもしれない。

またカズがコナンに「坊や、サッカー好きか?」と聞くシーンがあるが、週刊少年マガジンで連載していた漫画『シュート』を思い出した。伝説の10番・久保嘉晴が次世代の10番・田仲俊彦に同じ台詞を言っていた・・・「トシ、サッカー好きか?」と。神谷にも同じ台詞をかけ、それに応えた神谷の台詞「あぁ、それだけなら誰にも負けねぇ」が頭の中を駆け巡った。
昔金田一少年とコナンのマガジン&サンデーのコラボ企画があったが、まさかこんなところでもマガジン&サンデーのコラボが・・・なんて妄想も頭を駆け巡った。

しかしアニメとはいえ、カズと一緒にサッカーできるなんて、羨まし過ぎるぞ、コナン!というか、それ以外にこれといった特徴のない本作。
ここ数年はアクション重視の傾向が強かったのだが、この作品に関しては競技場の屋根までスケボーで駆け上がるという相変わらず超人小学生なコナン(「見た目は子ども、頭脳は大人、やれるアクションは大人以上!」てか・・・?)以外は特に派手なアクションもないし、謎解きもTVシリーズの中に入れてもかなり低レベルな謎解き。
まとめるならアクションも1シーン以外はなく、謎解きも低レベルというシリーズ史上稀に見る凡作。
そんな中でJリーグの象徴とも言うべきカズの出演。そしてコナンと犯人をつなぐ重要な役割をも担っている。さらに某有名サッカー漫画の名台詞も引用(引用ではなく、まんま)・・・。良くも悪くもカズの映画だったな・・・。

一口コメント:
良い意味でも悪い意味でも、カズと一緒にサッカーできるコナンが羨ましい!の一言に尽きます。

戻る