名探偵コナン 業火の向日葵
採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2016年4月17日(DVD)
原作:青山 剛昌
監督:静野 孔文

前作「名探偵コナン 異次元の狙撃手」に続き、劇場版コナン・シリーズの歴代興行収入を塗り替えた作品。

金持ちたちが一堂に会したニューヨークのオークションで、園子の叔父・鈴木次郎吉は以前日本で焼失したといわれているゴッホの名作「ひまわり」を落札する。そして世界中に散らばってしまったゴッホの7枚のひまわりを集め、日本で展覧会を開くと宣言する。
その直後、怪盗キッドが現れ、「ひまわり」を巡る数々の陰謀が動き出した!!

これって「劇場版 名探偵コナン」であって、「劇場版 怪盗キッド」じゃないよな?
見終わった直後の感想がこれ。ってボヤキが出るくらい、今作のコナンは何もしていない。最終的な犯人を告知するのはコナンの役割だったが、犯人を見抜いたのはキッド。キッドが説明したものをコナンが伝言しているだけで、決定的な証拠に関しても、キッドが見つけているし、そもそも蘭のピンチを救うという大役さえもキッドに譲っている。
どう見ても主人公はキッド!

今作のコナンはイマイチはっきりしないことが多かった。
例えば飛行機がターミナルに突っ込んでくるシーン。巨大なサッカーボールを蹴って、飛行機の勢いを減速させるのか?と思いきや、「止まれ!」と祈るだけで、何のアクションも頭脳戦も展開されない・・・。以前の作品では殺人的なサッカーボールの威力を見せていたにも関わらず。
またいつもならキッドに対して上から目線なのだが、今作では「教えてくれ!」なんて台詞まで吐き出してしまう。犯人に対しても、自白ができないのであれば、巧みな話術で自白させるところが、そうでもない。
一方の犯人の動機もネットの噂を信じたレベルなのにもかかわらず、「理由は後で犯人に聞くとして・・・」と言ってしまう。今までのコナンであれば、犯人すら気づかない真実をズバリ的中させるところだが、まさかの「犯人に聞く」という名探偵としてはあり得ない体たらく。一体全体、どうしてしまったんだ!?

世界的巨匠による世界的名画、史実に反して燃えてしまったはずの名画が今もこの世に存在するというストーリー展開、怪盗キッドの存在、戦時中のロマンス、1つ1つのテーマで1本の作品が作れそうなほど良い素材が揃っているにもかかわらず、結果としてここまでひどい結果になるとは思いもしなかった。
名画「ひまわり」にしても、最初にオークションでの落札シーンから始まるのだが、そもそもオークションのシーンはなくても良かったのではないだろうか?そこにかかった時間を戦時中のロマンスの方に回した方が物語に深みが出ていたはずだ。
そしてそのロマンスに登場する女性の姿に灰原が気持ちをシンクロさせるような素振りを見せるが、中途半端。コナンを心配する描写はあるのだが、蘭が「新一~!」と叫ぶように「江戸川君~!」と叫ぶシーンがあっても良かったのではないだろうか?
またこの作品で起きている唯一の殺人事件にしても、その描写は必要だったのだろうか?ゴッホ自身の死と重ねるという狙いがあったのかもしれないが、そこに時間をかけるならその時間も戦時中のロマンス、あるいはその人物描写の時間にあてて欲しかった。

何といえば良いのだろう?1人1人のキャラクター描写が薄いのだ。だから犯人の動機を聞いても、「えっ、そんな理由で飛行機のドアを爆破したり、美術館そのものを崩壊させるようなテロ行為を行うの!?」と犯人の執念を疑いたくなってしまう。他にいくらでも目的を達成する手段はあるだろうに・・・。
キャラと言えば犯人役の榮倉奈々はかなりミスマッチだった。女優として見ている分には問題ないのだが、声質の問題なのか、吹き替えと役者は別物なのか?どちらかはわからないが、すごく違和感を覚えるキャスティングだった。ミスマッチしているが、特徴的な声なのですぐに誰かはわかる=犯人がわかる。
キャスティングと言えば恒例の素人の子供たちの声も使われている。

というわけで、久々にコナン・シリーズ最低ランクの作品でした。

一口コメント:
「劇場版 名探偵コナン」ではなく、「劇場版 怪盗キッド」です。

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