名探偵コナン 純黒の悪夢 |
映画シリーズ公開20周年記念作品であり、かつ3年連続となる劇場版コナン・シリーズの歴代興行収入塗り替えを達成した作品。
ある夜、警察に侵入したスパイが世界中の闇組織の機密データを盗み出そうとするが、公安の安室とFBIの赤井の追跡によって、スパイの車は道路から転落してしまう!
翌日、東都水族館に遊びにきていたコナンは、ケガをした女スパイに遭遇する。しかし彼女は記憶を失っていた―――。
さらに公安の安室、FBIの赤井の壮絶な戦いも始まる!!
20周年記念の名に恥じない素晴らしい作品だった。
"名探偵"ということで推理物を期待している人にとってはイマイチどころか、推理ないじゃん!ってなるかもしれないが、2年前の「異次元の狙撃手」に通じる要素も多数あり、個人的にはかなり満足の作品だった。
劇場版ではおなじみとなった冒頭の事件発生シーン。このカーチェイスに関してはコナンシリーズ史上最高の内容だった。まずチェイスといっても2者ではなく、3者が絡んでいること。その3者が黒の組織、公安、そしてFBIという現在のコナンを支える3大組織であること。
またそこにコナンが絡んでいないのも良い。以前スケボーで犯人を追いつめるシーンの中で巻き添え事故を多発させたコナンを描く作品があったが、子供向けアニメの主人公がそれをやるのはご法度ということを反省したのか(・・・どうかはわからないが・・・)、今作はコナンを抜いた状態でのカーチェイスということ、そしてFBIを入れたことでそこを上手く回避している。
また途中から高速道路を逆走するシーンが出てくることもあり、ハリウッド映画と同じ興奮を味わうこともできる。
そしてこの作品の一番の見せ場はコナン、安室、赤井の3人の絡みだろう。
観覧車の爆破を止め、黒の組織の計画を阻止するラストシーンはもちろんだが、黒の組織が世界中で裏切り者を抹殺する一連の流れの中で、安室がキールと共に捉えられたシーンも実はコナンと赤井による3人の連携があったという種明かしを最後に持ってきたあたりの演出の順番構成も素晴らしかった。
コナンが知略、安室が爆弾解除、赤井が狙撃と役割分担したり、観覧車を射撃している黒の組織が乗るヘリを3人の連携で撃墜したり、最後の最後で再び3人が連携し観覧車を止めるシーンなど手に汗握る演出は見事だった。
そして今作では少年探偵団の活躍も見事だった。
特に光彦の機転の利かせ方は小学生とは思えないほど見事。女スパイが観覧車の中で突然苦しみだした際に彼女の言葉にならない言葉をメモるとか、すごかった。
またイルカのキーホルダーや毎回おなじみの博士のダジャレクイズが今作はストーリーの本筋にも絡んでいたり、推理らしい推理はないものの(複数の色のカードが唯一の推理?)、伏線の張り方が見事だった。安室や水無を救う手段、観覧車を襲う組織の行動の予測など、推理ではないものの、見るべきものはいくつもあった。
今作は20周年記念作品ということで、黒の組織のかなり深い部分まで踏み込んでいたこともこの作品に深みを与えた要因だろう。特に組織のNo.2であるラムの正体について、結果何の進展もないのだが、見せ方としては最後まで興味を引っ張る内容になっていた。
しかし黒の組織はここまで有望な人材を殺戮しまくって良いのだろうか?ジンとベルモット以外で優秀な人材は登場するたびに殺されているような気がするのだが、気のせいだろうか(ベルモットも今作では大女優のはずが、素顔のままファミレスに現れたりしている・・・)?生き残っているウォッカ、キャンティらはどう見ても優秀とは言い難い気がするのだが・・・。
今回のラストシーンで、観覧車をあんなに派手に攻撃するのも黒の組織が動くやり方ではなく、ただのテロリストのやり方だ(テロリストがあんなオスプレイ的なヘリを所持することが可能か?どうかはさておき・・・)。目立つだけで無意味なゴンドラごと奪うという奪還作戦は、違う意味で驚愕ではある・・・。
灰原が言うには「黒の組織は犯罪の痕跡を残すようなヘマはしない」らしいが今作では痕跡残しまくり・・・。そのあたりを含めて、黒の組織の描き方については残念だった。
残念と言えばラストで「誰かが狙われている・・・動くなら今だ!」というコナンの発言にも少し驚いた。上述した巻き込み事故の描写を回避したのが、この一言で台無しになってしまった。今までのコナンであれば、集中砲火されている誰かをいかにして助けるか?を考えたはずなのに・・・。
とはいえ、事件らしい事件は1つも起きないし、事件がないので犯人もいない、そんな状況であるにもかかわらず、最初から最後まで一瞬もだれることないサスペンス・アクション映画に仕上がっている。
ストーリー展開、サスペンス要素、登場人物のキャラ立ちなど、黒の組織絡みのネガティブ要素と上述のコナンの発言がなければ歴代でもトップレベルの仕上がりと言える作品。
そういえば、キュラソーの声優が天海だと後から知って驚いた・・・。
また声優という意味では、ガンダム世代にはたまらない共演があったのもファンにはたまらない演出だった。