深呼吸の必要
採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2004年6月7日(映画館)
主演:香里奈、谷原 章介、成宮 寛貴、長澤まさみ
監督:篠原 哲雄

世界の中心で、愛を叫ぶ」の長澤まさみが出ているということで、見に行った作品。

2月下旬の沖縄の離島。"きび刈り隊"のアルバイトに応募して来た若者5人が、その島にやってきた。
派遣の事務をやっている立花ひなみ、クールな感じで人付き合いの悪そうな西村大輔、典型的な現代っ子の川野悦子、メンバー最年長の池永修一、無口でおどおどした土居加奈子。畑の所有者である平良夫妻、それぞれおじい、おばあと呼ばれ、さらに"きび刈り隊"の常連:田所豊の3人が彼ら5人を迎えてくれた。
「言いたくない事は言わなくてもいい」これが、平良家唯一の決まり。メンバーは、それぞれ"言いたくないこと"を抱えて、きび刈りに来ていた。
平良家の広大な畑を埋め尽くす7万本のさとうきび。3月末までに全てを収穫できないと平良家の家計に影響が及ぶ。あと35日しか残されていないということで、早速田所の指導のもと、きび刈り作業に取り掛かるが、5人とも全くの初心者という事もあり、一向に能率が上がらない。そうこうしている内に、大輔と悦子がきび刈りを止めると言い、平良家を去る。最終的には二人とも戻ってくるが、大輔と田所の間にはわだかまりが残っていた。
ある日、かつて近くに住んでいた美鈴が表れる。馴れた手付きでテキパキときびを刈る美鈴の参加によって、作業に拍車が掛かるものの、あと2週間もないのに最終目標にはまだ程遠い状況だった。
ある日の晩、田所の発言に対し、大輔が食いかかり、大輔の"言いたくないこと"が発覚する。そして嵐の晩、運転を誤った田所が事故を起こし、足に大怪我を負ってしまう。大量出血しているが、医者は不在で手術ができない状況だったが、これがきっかけとなり、池永の"言いたくないこと"も発覚する。
そして畑に残るさとうきびも着実に減っていき、7人の"きび刈り隊"は解散の日を迎える―――。

正直、特にこれといった盛り上がりはないまま、淡々と物語りは展開されていく。しいてあげるとすれば、田所の事故が盛り上がるといえば、盛り上がる場面かもしれない。しかし、淡々とした展開の中でも、各自の"言いたくないこと"にスポットが当たった瞬間は日本映画らしい、重さがある。
例えば、大輔の"言いたくないこと"の場合、普通なら素晴らしいことなのだが、それがきっかけで冷めた人間になってしまうという設定はいかにも日本映画らしいし、池永の"言いたくないこと"も同じ種類の内容、つまり陽の当たる場所にいた人間が陽の当たらない場所に陥ったという、心理的に少し暗い設定(日本映画ってこの種の作品が多い気がする・・・)で、個人的にはもうそれはいらないよ!って感じでした。
しかもその心理的に暗い設定の中で、若干光が当たる部分が最後の方に盛り込まれていて、最後の終わり方が前向きな終わり方のため、全体に敷き詰められた暗い印象が最後で明るくなり、なんとなく良い映画だったなぁと思わされてしまう―――という、これまた日本映画のお得意パターンで、もういいってば!といった感じでした。
また役者の演技もいまいちでした。田所と土井の二人以外の演技はちょっと嘘っぽかった。中でもおばあの台詞は何度も同じ台詞を繰り返し使っていてちょっとくどかった。上手い役者が同じことをすれば、"くどい"ではなく、心に残る名台詞になるはずであり、そう考えると演技が上手いとは言いにくい。

けなしてばかりですが、この作品の良かったなと思えるところをあげるとすれば、きび刈り隊の存在を世の中に知らせたこと。自分が大学時代にこの作品を見ていたら、きび刈り隊に参加していた気がする。
そして長澤まさみ。「世界の中心で、愛を叫ぶ」以外にも「ロボコン」では主役を演じ、主役クラスの重要な役割で出演する作品はレベルが高い作品が多く、今回は主役ではなかったが、見ていて安心できる演技だった。今作を含む3作品で、それぞれまったくタイプの異なるバラバラの役柄を演じ、違和感を感じない当たりは、さすが東宝シンデレラ・グランプリ受賞者です。=長澤まさみ=日本の女優陣の中では今後が最も楽しみな存在です。

一口コメント:
全編心理的に暗い雰囲気の最後に光を持ってくるという日本映画の典型例です。

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