ドラゴンボールZ 神と神 |
ついにこの日がやってきた。ある種サッカーW杯と同じくらいの期待を持ちつつ、10数年ぶりのお祭りとして製作決定のニュースが流れた時以来楽しみにしていた作品。これほど期待値の高い作品は生まれて初めてと言っても過言ではない。おそらく自分と同じ世代の男性の半分位は同じ気持ちだったのでは?とすら思える、一時代を築いた作品がスクリーンに帰ってきた!
魔人ブウとの戦いから数年後、宇宙の果てのある場所で長い眠りから目覚めた破壊の神ビルスは、界王星にいた孫悟空の前に現われる。圧倒的な力の差の前に悟空は破れてしまう。
一方地球ではブルマの誕生パーティーが開催され、べジータ、サタン、ブウや亀仙人、クリリン、牛魔王や懐かしい仲間たちが集まっていた。パーティーにはお城や飛行機などが当たる抽選会が組み込まれていて、その目玉商品はドラゴンボールだった。
そこに超サイヤ人神なる存在を求め、悟空を倒したビルスが現れた―――。
面白かった~、そして懐かしさ満載!
悟空が強い敵にドキドキとワクワクを求めたように、自分もサッカーのW杯のようなドキドキとワクワクを求めて劇場に足を運んだ。オープニングであのロゴが出てきた瞬間からもう感動MAX!原作が終了してから10年以上の歳月が経ったのち、大手コンビニ・チェーンを2つも巻き込むほどの大規模な宣伝を伴ってスクリーンに新作として戻ってくるようなアニメがかつてあっただろうか?
これを感動せずに、何に感動するというのか?一気に心は童心に戻り、作品の世界観に入り込める。毎週のようにジャンプを読んだり、TVアニメを見たりして、親と一緒に映画館へ行っていた自分が親と同じ年代になり、子供を連れていてもおかしくない時代に映画館で見れると考えるだけでも感慨深いものがある。
劇場版は久しぶりといっても、以前は東映アニメ祭りの目玉作品=60分だったので、長編映画としては史上初とも言える。だからこそのドキドキ・ワクワクだったのかもしれない。そして今作は鳥山明が脚本やキャラクタ設定にも深く関わったことで、強敵が現れ悟空も含め味方がボコボコにされ、最後に悟空が元気玉やカメハメ波といった必殺技で大逆転!的な展開とは大きく異なる展開を見せる。
悟空は変わらず「おっす、オラ悟空!」だし(劇中では、界王に遮られれ、最後まで聞けなかったが、それも鳥山ワールド!)、悟飯は酔った勢いでグレートサイヤマンに変身する茶目っけは変わらない。亀仙人のエロさも、ブルマの向こう見ずな性格も、ブウの食い意地も、ミスターサタンのボケっぷりも変わらない。他にも懐かしのキャラが登場するが、唯一、劇場版恒例のクリリンの「何で俺だけ?」が聞けなかったのが残念だ。
このあたりのギャグのテンポは原作者・鳥山明の世界観が強烈に感じられる。
そして何よりべジータ。この日本アニメ史上に残る敵キャラの存在感たるや、ギャグにおいても、バトルにおいても、良い意味でも悪い意味でも、"べジータのべジータによるべジータのための作品"とも言うべきほどだ。原作で見せた家族愛(人造人間編ではトランクスの死に怒り、魔人ブウ編では妻子の為に命を捨て自爆)はこの作品でも描かれていて、圧倒的な力を持つビルスに対し、平身低頭の姿勢を貫くべジータ(いつもクールな神龍ですらビルスには脅える)は笑いをもたらしてくれる一方、勝気な性格のブルマがビルスをビンタしてしまった際の怯え方とは一転、ビルスがブルマを殴り返した際には悟空よりも強くなってしまう。誰かを守るために戦う際は戦闘力が格段にUPするという原作の設定をそのままに一瞬だがビルスに対し攻勢を保つ。
「べジータ、お前がNo.1だ!」と原作でべジータがカカロットに対して言った言葉を送りたい気分だぜ!
そして今までの劇場版とは大きく異なるのは敵キャラ・破壊神ビルス。見た目からして、猫という一見奇抜な外観だし、初めてフリーザが登場した時(戦闘力53万!!)に感じた圧倒的なまでの絶望感も久しぶり。その強さたるや本当に圧倒的で超サイヤ人3の悟空が2つの打撃で一瞬に倒され、ピッコロなどのキャラは箸であしらわれてしまう。
それでいて、目覚めのシーンで見せるかわいらしさだったり、べジータの接待に気をよくする穏やかさを見せたかと思いきや、地球の食べ物(特にプリン)にはまる嫉妬深さだったり、少なくとも"神"と名のつくものとは思えない行き当たりばったり感がとても魅力的だ。
そしてお供のウイスもとぼけた顔して最後にとんでもないキャラだとわかる。このあたりのやや強引とも言える展開力は(ナメック星の存在が明らかになるシーンやトランクスの初登場シーンで感じたそれと同様)、さすが鳥山明だ!
そしてもう1人の"神"である超サイヤ人神とビルスのバトルシーンはセル画とCGの組み合わせに違和感のない絶妙なバランスでのめりこんでしまう。今までのドラゴンボールは背景を描くのが面倒くさいからという理由で荒野の戦闘シーンが多かったが、今作は珍しく街中での戦闘シーンがわずかだが描かれている。久々の映画ということでサービスか?
そしてバトルの顛末は予想外の結末を迎える。こんな結末は初めてだ。
またハリウッド版実写映画の内容があまりにもひどかったために、本当のドラゴンボールを見せたいという心意気で、この新作に原作者・鳥山明が深く関わることになった・・・という意味ではハリウッド版も意味があったということか・・・?
ドラゴンボールの新作映画を見に行ったはずだし、実際、映画として作品を楽しんで見ることができたが、それ以上に"ドラゴンボール"という大きなイベントを楽しんだ・・・そんな感じ。そんな自分の気持ちを見透かしたかのようにエンドロールでは原作コミック42巻の名場面が流される。ここでまた感動。
ふと劇場を見渡すと客層は大学生以上の男子の集団と、興味もないのに無理やり連れてこられたっぽい彼女が少数。見終わった後の男女の興奮度の差が大きすぎて、それを見るのもまた楽しいかもしれない。
本当にドラゴンボールを好きで良かった、そう思える一大イベントでした。また何年後かにこういうお祭りが企画されますように!