県庁の星
採点:★★★★★★☆☆☆☆
2006年4月10日(映画館)
主演:織田 裕二、柴咲 コウ
監督:西谷 弘

2006年度最初にお金を支払って見た作品は、アメリカに住んでいるにも関わらず、邦画となりました。織田裕二主演作品ということで、製作が決定した直後から見たいと思っていたが、DVDで見ることになるだろうと思っていた作品。

試験と呼ばれる類のものは常にトップで通過してきたエリート野村は、自分が進めてきた総予算200億円の県のビッグ・プロジェクトを控えて、官民交流の研修員の一員として、スーパーマーケット満天堂へ半年間の研修に出向くことになる。
エリート街道を歩み、マニュアルや組織で成り立っている県庁でも書類作りの速さと行動力でトップの道を歩んできた野村だったが、研修先の満天堂では接客マニュアルがなかったり、組織図がなかったり、と今までの自分が進んできた道とはまったく違う職場に戸惑う。
ひょんなことから、惣菜チームの一員となり、高級弁当と低価格弁当の競争をさせられることになり、高級弁当チームのリーダーとなった野村だったが、マーケティングなどを考慮したにも関わらず、高級弁当はまったく売れず、それとは逆に低価格弁当の売り上げはどんどん伸びていくという現実に直面し、自分の進んできた道が間違っていたのか?と思い始める。そんな矢先、県の200億円プロジェクトのメンバーから外されるという事実を知る。追い討ちをかけるように、婚約者からも婚約破棄され、人生初の挫折を味わうことになる。
そんな野村を支えたのが、満天堂のパート、二ノ宮だった・・・。

織田裕二2年半ぶりの主演映画ということで、期待大だったが、見終わってみると可もなく不可もなくといった感じの内容だった。今までにドラマで何度となく演じてきたエリート・キャラクターということで、冒頭の県庁でのエリート公務員の演技はさすが!といった感じで、スターの貫禄十分の演技を見せてくれる。
そして今回のキャラクターが今までの織田裕二と違う点は、挫折を味わうエリートであるという点。過去のキャラクターを振り返って見ると、過去に暗い影を持つエリートという役が多かったが、挫折を味わうエリートというのは初めてではないだろうか?
しかしながら、挫折を味わう前後でのキャラクターの変化(高慢なエリートvs挫折して"0"になった落ちこぼれ人間)が唐突すぎることもなく、その挫折に観客として、何の違和感もなく、共感できるのはやはり、彼の演技力の賜物というべきだろう。

競演の柴咲コウは個人的にはそれほど好きな女優ではなかったが、今回のキャラクターは好感を持てた。両親がおらず、定時制に通う弟のために、パートをしていて、最初はエリートに対する、反発とも言うべきひねくれた行動をとっていたが、「何かから逃げ出す人間は、すべてのことから逃げ出す」という野村の言葉(野村は婚約者の父から教わった・・・)と、挫折を味わい、心を入れ替え自分を変えていこうとする野村の行動をきっかけとして、二ノ宮も自分を、そして営業停止寸前のスーパーを変えていこうと決意し、野村と行動を共にしていく。この心境の変化が上手く演じ分けられていて、今までの彼女の作品と比べると、格段に共感しやすいキャラクターだと思った。

だが、ストーリー的には、ちょっと無理が多い気もした。官民癒着だとか、納得させられる設定が多いのは事実だが、織田裕二の最後の演説はちょっと無理があったかな?普通、あんな演説をしたら、他の県会議員から締め出されるだろうし、営業停止寸前のスーパーマーケットで、高級弁当なるものを新規開発するだけの予算がどこから捻出されたのか?そして営業停止をかけて消防法についての問答を客のいる前でやってしまうなどは、見ていて、ちょっと冷めかけてしまう。織田裕二以外の俳優が演じていたら、完全に冷え切ってしまっていただろう。
それでも最後の最後で、自分の改革案が通らないと認めた野村、そして県議会では、野村を擁護するような態度をとっていた県知事が、最後の最後で見せた本性などの演出は見事だった。

踊る大捜査線」シリーズのようなものを期待して見に行くと拍子抜けしてしまうかもしれませんが、そうでなく、ハートフルなドラマを見に行くつもりでいけば、期待通りの(期待以上のものはないと思います・・・)結果を得られる作品だと思います。

一口コメント:
織田裕二、初の挫折するエリート役の映画です。

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