踊る大捜査線 =THE MOVIE 2= レインボーブリッジを封鎖せよ! |
社会現象にまでなった前作から5年。あいつが返ってきた!!
あのお馴染みのコートを着て・・・。
前作から5年後という設定になっているわけだが、それを感じさせてくれる場面がいくつもある。それを紹介していこうと思う。
まず、青島。パーティー会場では、殺人事件を追う上司の命令を聞いて、目の前にいた婦女暴行事件の犯人を逃がしたり、「これは俺の事件じゃない」と言いながら、事件を選んでしまう。5年前は「事件に大きいも小さいもない」と言っていた彼と比べるとこれが最も大きな変化かもしれない。5年間の間に仕事に対して"慣れ"のようなものができてしまっている。しかも被害者の前で言ってしまうのだから、すごい変わりようだ。
続いて真下。彼はものすごく出世している。LAで交渉人としての教育を受けてきて、本庁には1人しかいないネゴシエーターとして湾岸署に戻ってくる。犯人からの電話に対しても的確に受け答えし、仕事の面で成長したところを見せてくれる。が、一方人間としてはあまり変わっていない。相変わらず雪乃に片思いしており、人当たりが良いというか、憎めない人柄というか、そこは本当にまったく変わっていない(そこが真下の魅力でもあるが・・・)。
その真下と青島の関係も変わっていない。青島、すみれが真下を発見し、ものすごく楽しそうに駆け寄ってくるシーン。なんだかんだとちょっかいを出してあっという間に去っていく二人。そんな二人を見ながら「変わってないな」という真下。思わず「本当だね」と心の中で言ってしまった。
続いて、青島と室井。前作、自販機の前で背中合わせで座っていた二人が今回は横に並んで語り合い、5年間という時間の流れ、そして2人の距離が縮まっていることを感じさせてくれた。
そして最後のエンド・ロール。帰らずに最後まで見てください。5年間の出来事が写真で紹介されます。1つだけ紹介します。和久さんの娘さんの結婚式の写真です。
事件は前作と同じく4つ。会社役員連続殺人、婦女暴行、家族による窃盗、そして不倫。これらのうち、会社役員連続殺人をメインにストーリーは展開していく。初の女性管理官沖田が特捜本部の本部長として湾岸署にやってくる。この沖田は所轄の人間は駒として扱い、室井にすらモニターを監視しろという命令をくだす。悪役として素晴らしい個性を放っており、この悪役としての強烈なイメージを前半で植え付けたことが、後半になって室井を素晴らしく魅力的な人間にしてくれる。
沖田といえば、前作のあの名台詞「事件は会議室で起きてんじゃない!現場で起きてんだ!!」をいきなり否定してしまう。「事件は会議室で起きてるの!」と・・・。あれを否定するのか!?と思わずうなってしまった。それが「踊る」らしいといえば"らしい"のだが・・・。
"らしい"といえば、オープニングで犯人役の青島がSATを退治してしまったり、前作同様、最後に神田署長が連行されるシーンでこれまた前作同様の台詞「行きなさい」を真下に言われてしまう緒方巡査部長、など皮肉な笑いもそう。
予告でも流れていたある捜査員が銃撃されたシーンは音声がなくなり、映画館中が静まりかえり、その無音声の時間の長さが絶妙で心に残る名場面となった。こういったドラマ・テイストも"らしさ"の1つである。しかしその上を行く名場面があるので、後ほど紹介したいと思います。
中西係長の「恩田君、恩田君、恩田君」、その恩田君の「こりゃ失敬!」、和久さんの「なんてな」といった台詞を聞いただけで「踊る」とわかる"らしい"台詞も、満載です。
もちろん今までにはなかった、新しい「踊る」もあります。青島のあのコートの由来が明らかになったり、今まで真下と雪乃の1つしかなかった(片思いだが・・・)恋愛関係が全部で3つも描かれているし、新しいマスコット湾岸君も登場(オープニングは必見!ここに出てくるURLは覚えておくと後で楽しめます)し、新しい接待菓子「レインボーせんべい」も登場する。
そして青島のミリタリー趣味が役に立つシーンも登場し、なかったというよりは前作までに描かれた細部をフィーチャーし、パワーアップさせており、それが青島の新しい一面を引き出している。
前作と同じ青島、室井、すみれ、和久、柏木、真下、スリー・アミーゴズ、新庄といったメインの人物だけでなく、TVシリーズからも湾岸署御用達の寿司屋の板前、窃盗犯に盗まれる赤い服の男性、窃盗犯役の女性、などなどファンなら思わずにやりとしてしまう登場人物たち。これらを監督やプロデューサーはリンクと言っており、作品中には200のリンクがあるらしい。
ブラック・カエル急便、ピンクサファイア、SATのカー・ナンバーが"310"だったり、カエル急便のカー・ナンバーが"269"(フロッグ)だったり、、前作で室井が言っていた自販機など「踊る」ならではのリンクだけでなく、オープニングで青島が言った「台場の月」は「ホワイトアウト」から、といった「踊る」以外のリンクもあり、1回見ただけでも数え切れないくらいのリンクを発見した。「踊る」ファンなら、リンクを発見するたびに踊らされてしまうのではないだろうか?
自販機といえば、前作での約束が今回果たされたわけだが、今作は"約束"というのが非常に大きな意味を持っている。前作で誘拐された吉田副総監と和久の約束、そしてその約束を同じ思いを持つ若者たちに託そうとする最後のシーン。
和久が青島と室井の二人に対して、名言を言う。これは劇場で確認してください。閉めはいつも通りの「~なんてな」で、これまた踊らされてしまいます。
そしてその重要な約束が一時的ではあるが、果たされることになる。その約束とは「踊る」の軸となっているもので、その約束が結実することで感動させられた。
「現場の人間が正しいと思えることを行えるようにする」そのために「室井さんは上で頑張る、俺は現場で頑張る」と言った青島と室井の約束。
その約束を果たすために地下室から上がってきた室井に対して、失敗した沖田を連れた新庄が「後は頼みます」と言ってすれ違うシーン。そして、特捜本部に戻り、「どんな情報でもいい、教えてくれ。・・・役職、階級に関係なくだ!」と言い放つ、室井。これら一連の流れに涙が止まらなかった。ここのあたりが今作の中で最も心をつかまれたシーンだった。前作やドラマを見ていれば、その約束の持つ重さが身に染みるシーンであり、感動の度合いが増すだろう。
唯一、それは・・・と思ったのが、ナイナイ岡村の役。正直、そんな結末なら登場しないほうが良かった。それ以外に関しては本当に素晴らしい作品でした。また劇場に足を運んでしまう気がします。
続編があるのかどうかわかりませんが、作品中でそれっぽい振りだと思われるのが潜水艦事件。青島と室井が出会った時に2年ぶりだなと言って、潜水艦事件以来だなとなったので、ひょっとするとこの話がパート3、あるいはTVスペシャルか何かで映像化される日がくるかもしれない。
もともと「踊る」の続編を作る話はあって、そのために書かれて没になった脚本が潜水艦ものだったという話もあり、ひょっとするとひょっとするかもしれない・・・。
続編があるにせよ、ないにせよ、まずはリンクをはじめとして、今作をもっと楽しんでみたいと思います。まだまだ書き足りないのですが、非常に長くなってしまったので、この辺で。