未来予想図 ~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~ |
去年公開された「涙そうそう」に続き、歌から映画へと発展した作品。漫画原作の映画やTVドラマが増える中、次の流れは歌の映画化になるのかもしれない。しかも今作はドリカムの名曲中の名曲「未来予想図」の映画化ということで、期待せずにはいられなかったが、公開予定日がアメリカに戻った後だったので、諦めていたところ、試写会のチケットを入手し、見ることができた作品。
ひょんなことから大学の自主映画で共演することになった、さやかと建築学部の学生、慶太。これがきっかけで付き合うようになった2人は大学の卒業旅行で、慶太の憧れであるスペインの建築家、ガウディのサグラダ・ファミリアを訪れる。
3年後、学生時代の夢を諦められないさやかはOLを辞め、夢を追いかけ、雑誌編集者へと転職する。一方の慶太も勤務する建設会社からスペイン赴任の話が持ち上がる・・・。
慶太の夢を応援したいさやかと、自分の夢よりも恋人を優先させたい慶太。そんな二人の気持ちのすれ違いによって、二人は別々の道を歩き始めることになる―――。
なぜか東京や大阪よりも早く、おそらく日本一早い試写会場が名古屋だった。しかも主演2人と監督の舞台挨拶つきというラッキーな状態でこの作品を見ることができた。舞台挨拶で、監督が言っていたように、ストーリーはいたってシンプル。原曲の歌詞がシンプルであり、その世界観を継承させるためにそうしたのだそう。
ストーリーだけを見れば、おそらくTVドラマの2時間スペシャルで十分であり、あえて映画化する必要があったのだろうか?というのが率直な感想である。しいて言えば、スペイン・ロケだったり、それなりにCGを使用しているため、TVドラマとしては高額な予算を回収するために映画化したと考えられなくもない。
なんて書くと、この作品を非難しているように思われるかもしれないが、そこは原曲が名曲と言われる強みというか、歌を原作にした映画ということで、ドリカムの歌のおかげで映画として見ることができる。「未来予想図」(リメイク版)をバックにヘルメットのサインをする描写などはその典型だ。また「卒業してからもう3度目の春~」といった原曲の歌詞そのままの台詞もあったりするし、また「未来予想図Ⅱ」のリメイク版がクライマックス近くでかかるのだが、これはある意味反則かもしれない。
というのも、おそらく、この映画を見る人の大半はドリカムの曲を知っている。そして曲を聴いただけで泣けてくるという人も多いような曲だから、映画で泣いたのか、曲で泣いたのか、よくわからないといった状況になりうるから。
いくつも小さなストーリーがちらばめられているので、共感できるシーンというのが、誰にでも、少なくとも1つはあると思う。例えばそれが学生時代の話であったり、家族愛であったり、男同士の友情であったり・・・。
個人的には夢と恋人のどちらを選ぶのか?という選択が最も共感を覚えたシーンだった。
また1つ1つの台詞にも原曲の歌詞が反映されているシーンが多く、改めて原曲の良さというものを痛感させられる。例えば、「未来予想図Ⅱ」の最後の歌詞 ♪ホラ、思った通りに叶えられてく~♪が少し形を変えて使われていたりする。
映画化されて、改めてこの曲の質の高さを教えられる。
が、一つ大きな問題がある。というのは、この作品も、原曲も基本的に主人公は女性であり、物語は女性視点で進んでいくのに、監督が男性であるという点。これがラブ・ストーリーではなく、アクション映画やSF映画であれば、また状況は違ってくるのだが、女性視点のラブ・ストーリーに男性監督、しかも映画初監督の人間を指名したのはどうなんだろうか?ぜひ、女性の意見を聞いてみたい。
続いて役者。慶太を演じた竹財の声が、(個人的なものかもしれないが・・・)ちょっと軽い。外見はいいのだが、声のせいで損をしている印象。
一方、さやかを演じた松下奈緒は良かった。上映前に本人を直接見たせいもあるのかもしれない。以前はTVで見る松下奈緒は綺麗とは思うのだが、タイプではないというか、綺麗なだけで、それ以上の何かは何もなかったのだが、以前、映画館で劇場予告を見たときに、綺麗なだけじゃない何かを感じ、実際に本編を見て(実物も見て・・・)、今後も期待したい女優の1人になった。
全体を通して見ると、まぁ、オーソドックスなラブ・ストーリーに仕上がっているのではないだろうか?願わくば、女性監督の作った「未来予想図」を見てみたいものだ。