オズランド 笑顔の魔法おしえます。
採点:★★★★★☆☆☆☆☆
2018年10月27日(映画館)
主演:波瑠、西島 秀俊
監督:波多野 貴文

少し前までヤングジャンプで連載されていた漫画が原作と思いきや、小説が原作でそこからメディアミックスで広がった作品。知人から無料のムビチケを頂いたので、映画館を訪れた。

恋人と同じ職場である超一流のホテルチェーンに就職した波平は、グループ傘下の熊本にある遊園地・グリーンランドに配属されてしまう。そこで数々の企画を成功させ、"魔法使い"と呼ばれる小塚と出会う。
1年を通してMVPに選出された社員は東京に転勤できる制度があることを知り、彼の近くで生活するため東京に戻ることを目標に頑張る波平だったが、何かにつけて自分の力不足を痛感。自分のことを学歴採用だと思っていた波平だったが、実は同期の吉村が東大卒だったことを知り、さらにショックを受ける。
しかし小塚の指示を受けながら様々な失敗や成功を重ねていく中で、少しずつ仕事の楽しさややりがいに気付いていく。そしてある日、吉村と2人で小塚の退職願を見つけてしまう―――。

見終わった直後・・・というか見ている最中から感じていたのが、「ハッピーフライト」に似ているなぁ~という雰囲気。
仕事場の裏側が見えるという意味では航空業界の裏側が見える「ハッピーフライト」のテーマパーク版であるとも言えるこの作品。テーマパークで収集されたゴミの分別シーン、迷子を捜す時の無線連絡によるチームワーク、お客の前では走らない、緊急車両は園内に入れないなどの従業員が守るべき五か条、そして"虹の彼方"や"ゴールドナイン"といった隠語など業界あるあるを垣間見ることができるという意味では面白かった。
しかし「ハッピーフライト」と比べると1つ1つの笑いの質が低かった。

キャストとしてはトコトン明るい上司を演じた西島秀俊が凄かった。というのも今までTVや映画で見てきた西島秀俊の役柄はどちらかというと真面目かどこか陰のある役どころが多かったから。トコトン明るいだけでなく、その裏に緻密な計算が仕込まれている。例えば波平にゴミ拾いをさせる意味であったり、無茶苦茶なことをいうアイドルとそのマネージャーに対する対応を波平に任せたり、"魔法使い"と呼ばれる彼の凄さを見せるシーンがいくつかある。それをあの爽やかな笑顔で嫌味なく伝える西島秀俊の新境地を見た気がした。
個人的には小塚の過去をもっと掘り下げて欲しかったと思う。その方が作品としてももっと深みが増したはず。

一方で新卒の波平を演じた波瑠も、仕事ができないのに頭でっかちで、社会や仕事を甘く見ているイマドキの大学卒1年目っぽさを上手く演じている。「私の経歴を見て採用してくれたんじゃ・・・?」と言う台詞が彼女のエリート意識を表現する典型的な言葉となっている。ただしこちらも彼氏が熊本に訪ねてきた際の気持ちの変化についてはもう少し掘り下げて欲しかった。
そして元彼役の中村倫也もドラマではダメ男を演じることが多かったが、この作品では冒頭凄く良い男を演じていると思っていたら、熊本に来てからはいつも通りの安定の演技でした。
この2人のバランスは非常に良かった。前半は中村が大人な男性、波瑠がダメな女性だったのが、後半2人の立場が入れ替わるという設定は面白かった。

ストーリーとしては若者が社会に出て、人との関わりの中で成長していく物語となっていて、学生よりも社会人数年目が共感できる作りになっている。言い換えればこの作品ならではの「おぉ、なるほど!」的なポイントはあまりない。もちろん業界特有のあるあるネタは上述した通りあるのだが、それって他の業界でも同じであって、人間の成長物語としてとらえた時に他作品と比べた場合の「ここがこの作品は良かったよね!」というポイントがない。
小塚の過去がもっと掘り下げられていたら、もしかしたらそのポイントになり得たのではないだろうか?

そしてクライマックスの空中のCG合成感がひどかった。CGの技術は論外で、そのCGを使わざるを得ない設定を変えることができただけに残念。空中で波平と小塚が近づく場面があるのだが、その直後に地上で近づく場面も描かれており、空中で作品全体のクオリティを下げるほどの低レベルなCGを使ってまで、空中で2人の接近を描く必要があったのか?甚だ疑問の残るシーンだった。
もう1つ夢を与える遊園地を舞台とした職業映画でありながら、偽物とはいえ爆弾騒ぎを2回も描くというのもどうなんだろう?夢を与える職場で働く職員であれば、他の方法を考えるべきではないだろうか?ましてや企画を担当している人間なわけだし・・・。

全体的には映画にするほどの内容だったか?というのが正直な感想。
TVのスペシャルドラマでも良かったんじゃないか?何ならTVドラマで10話前後で1人1人の登場人物を丁寧に描いた方が作品としてはもっと面白い作品になったのではないか?と感じた珍しい作品です。

一口コメント:
映画よりもTVドラマに向いていると感じた珍しい作品です。

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