THE LAST MESSAGE 海猿 |
前作が最後ということで作られていたと思っていたのだが、4年の月日を経て、再びスクリーンに戻ってきた。しかも日本初の3D大作映画として・・・。
大型台風が接近する中、日韓露の3カ国が巨額を投じた国家プロジェクトの天然ガスプラント・レガリアで事故が発生する。海上保安庁の潜水士・仙崎は、設計主任の桜木らとともに施設へ向かう。しかし救出作業中に爆発が起こり、施設内に取り残されてしまう。大輔は知り合ったばかりの第七管区の服部とバディを組み、要救助者2人と共に無事帰還する道を探るのだが―――。
一方、海上保安庁本庁では、救助の道を探ろうとする海上保安庁と、国益を最優先とする内閣参事官らが対立し、1500億をかけた国家プロジェクトと人命のどちらを優先すべきかの議論が展開されていた―――。
そして、一人息子・大洋とともに大輔の無事を祈る仙崎の妻・環菜は…。
海洋事故発生⇒海保の救出舞台突入⇒更なる事故発生⇒主人公が取り残される⇒仲間を思う気持ちと、恋人を思う気持ちの描写⇒主人公の生還。
う~ん、どっかで見たことのある展開だな・・・。あっ、「LIMIT OF LOVE」だ!つまりこのシリーズのパート2、前作である。どこからどう見てもパート2と同じ展開である。舞台が豪華客船から海上プラントに変わっただけで、やっていること、起こっていることは同じなのだ。
が前作が稀に見る傑作だったこともあり、今作もある程度見ごたえがあるし、この作品がシリーズ初見の人であれば、大いに楽しめるだろう。しかし前作を見ている人にとっては、主人公が結婚し、子供がいること、さらには新人を引っ張っていく立場になっていること以外は新しい見所はないと言って良いだろう。
しいてこれら以外の見所をあげるとすれば、レガリアの映像だろう。このシリーズお約束の海保の全面協力により、ヘリや巡視船などは本物が使われ、そこにCG製作の巨大な海洋プラント、そしておそらくは巨大なプラントの内部セットが組まれ、迫力ある映像が作られている。ハリウッド映画と比べても遜色はない。
邦画もここまでのクオリティーの作品が作れるようになったと思うと、素直に嬉しい。
しかし"邦画大作史上初"という宣伝をしていた3Dは、ひどかった。
海洋の上という臨場感を出すためか手持ち撮影で画面が揺れていることもあり、そこまで3Dの飛び出し感も感じられない。
さらに3Dメガネをかけた時の画面の暗さはひどい。メガネを外すと炎の赤みがかった色(実際は橙色に近い・・・)が、3Dメガネをかけたとたん灰色になってしまうほど、画面が暗く見える。これは人の肌においても同様で、画面全体が明るい時もかなり暗くなるが、海難救助を舞台にし、必然的に画面が暗くなるシーンが多くなることがわかっているこの作品でこの暗くなりすぎる3Dメガネはない。
結論を言えば、この作品を3Dで見る意味はほぼない。おそらく画面全体を3Dにしているので、どこが飛び出しているかがわかりにくいのだ。飛び出させたい部分は2Dにして、背景のみを3Dにしたほうが、より飛び出し感があるので、今後の3Dは画面全体を3Dにするのではなく、必要に応じて、背景のみを3Dにしてもらいたい。
さて突っ込みどころ満載の脚本についてだが、まずなぜいつも海保の乗員は2人だけが取り残されるのか?という点について。
2人組で船内を捜索するからというのが回答ということになるのだろうが、2組、計4人が取り残されても良いと思うのはエゴだろうか?というのは吉岡が完全に蚊帳の外の状態なのに、無線で連絡を取り合っているという設定にあまり意味がないから。どうせなら吉岡も別の隊員とレガリアに取り残されて、仙崎チームと吉岡チームの2組の救出劇にしたほうが盛り上がったのではないか?と思う。
しかし前作では、ひたすら頑張っていた仙崎が、今回は、新人潜水士の服部を成長させるという役割を帯びていて、中でも自分も怖いんだ!ということを伝えるシーンは上手い。これならシリーズが完結しても、スピンオフ「潜水士・服部」も作れる(笑)。
そしてドリルシップも忘れてはいけない。
まずレガリアを自沈させるために要救助者をドリルシップに移すシーンで、仙崎と服部は要救助者を放置してバルブを開放しに向かう。このシーンに限ってはどう考えても、要救助者を先にドリルシップに移すのが先だろう!?
というか、レガリオを沈める以外に助かる方法がないという設定がすごい!あれだけ大きな海洋プラントに緊急脱出用の船が一隻も無いというアイデアはよほどの切れ者じゃないと書けないな・・・。
そして主人公・仙崎。彼は、人には諦めるな!と言っておきながら、自身が骨折した際にいとも簡単に諦めてしまう。妻子の元に必ず帰るという強い信念はどこへ行った?シリーズ前2作とは大きくキャラ設定が変わっている。まるで「踊る大捜査線3」の恩田刑事のリプレイを見ているかのようだ。
そして何より、竹島問題で揺れている日本と韓国が共同で日本海側にロシアをも巻き込んでの海洋プラントなど作るわけがない。脚本家やプロデューサー陣は竹島問題を知らないのだろうか?エンターテインメントだからと言えば、それまでだが、どうせなら太平洋岸に日本だけで作ったという設定でも良かったのではないだろうか?
逆に良かった点は、主人公・仙崎の妻・環菜。前作のただ泣き喚くだけの女性から、母親となり守るものができた強さと、一人の女性として守られることを必要とする弱さを同居させ、彼女の涙に自分も涙を流した。
しいて言えば、2人の過去のフラッシュバックを多用するのではなく、子供と3人で遊んでいるシーンを入れた方が、より家族の絆が描けていたのではないだろうか?
結論としては、やはり前作の焼き直し感が否めないものの、普通に楽しめる作品です。